帰路
少し前のこと、
まだ灼熱の名残りが湿った布のように、
べったり身体に張り付いている
少し目線を上に向けると、
ビルのすぐ側の空間が歪んでなびいているようにみえる
向こうの空で鳥は自由に線を描き、
そのまた向こうを工学の鳥が、
ぎこちなく通りすぎていく
後からやってくる大きなうねりの音の中で、
変哲を忘れてしまった灰色の群れが、
辛うじて有機性を手放すことなく、
剥き出しの渇望を傍らに、
それぞれ同じようなリズムで浮遊している
街が暖色に塗り替えられようとしている
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