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スイカに狂った夏

私は子どもの頃から、スイカが好きです。


実家を出てからは毎年、夏になるとスーパーにスイカが並んでいるかどうかを確認し、

(そのまま買うと高いので)値引きシールが貼られたやつがあったら、買って食べるようにしていました。



今年も7月の初めに、そうやってスイカをゲット。

あらかじめ食べやすいサイズにカットされて、パックに入ったやつです。


一歳の息子も果物が大好きなので、一緒に食べました。

息子はニコニコしながら食べてくれました。


去年はまだ離乳食の真っ最中だったから、スイカもつぶしてほとんど液体にし、大人がスプーンで口に運んであげないと食べられませんでした。


それが、今年は自分の手かフォークでしっかりスイカをつかみ、自分の歯でシャリシャリと噛んで食べています。


私は息子の成長に感動し、自分の好物をこうして一緒に食べられる喜びを感じました。


味をしめた私は、その後も何回かスーパーの売り場をチェックし、値引きされたスイカを見つけては買って息子と食べていました。


(※夫はあまりフルーツに興味がないので、ほとんど私と息子だけで食べていました)



そうやって数週間過ぎた、7月下旬のある日のことです。




「うーか!うーか!」と、息子が急に台所の方向を指差して言いました。


私は何のことかわかりませんでした。


しかし、数時間おきに繰り返される「うーか」。


夜になって、私はようやくピンときました。


スイカのことだったのです。


あいにく、この日はスイカがありませんでした。


それを言うと、息子は「んあーー!」と怒り出しました。


彼はこの頃、一歳八ヶ月。

イヤイヤ期が始まったばかりでした。


私は「明日スイカ買いに行こう!」と、寝るまで何度も言って聞かせ、その日は何とかなりました。


そして翌日。


もう今の私たちには、おつとめ品でパック入りの食べきりサイズでは物足りません。

なので、8分の1カットとかいうサイズのスイカを買いました。

こういう状態のやつ


以前のパック入りのスイカだと、当日中か遅くても買った翌朝には食べ切らないといけませんでしたが、このタイプだと数日食べ続けられました。


それから私は、数日おきにスイカを買い、常に自宅にスイカがある状態を作りました。


息子は毎日スイカが供給されるようになると、どんどんスイカにのめり込んでいきました。



気がつくと、食事のときは半分くらい食べ進めると「すーかぁ(スイカ)」と要求し始めるのがデフォになっていました。


ベビーチェアに座りながらふんぞり返って冷蔵庫を指差し、「すーかぁ」と言う息子は、「おい、お茶」と言う昭和の亭主関白な男性そのものでした。

しかも彼は、人差し指ではなく親指で「くいっ」と冷蔵庫を指差し、アゴを上げて私を見つめるのです。

その様子は、後輩に「パン買ってこいよ」と言うヤンキーの学生にも見えました。


そうして息子は、朝昼夜と食事のたびにスイカを食べるようになっていきました。

それどころか、次第におかわりを要求するようになったのです。

一度おかわりをあげてみると、息子は一瞬で食べて「もっとくれ」と、更におかわりを要求してきました。


(というか「まだ食べてないんですけど」と言わんばかりの態度でした)


あ、これはキリがないやつだと思った私は、「もうおしまいだよ」と言いました。

すると息子は「んあー!!」と怒り、スイカが入っていた食器を投げたのです。

かわいそうなので、次の食事から1回分のスイカを2回に分けて出すなどしてみました。


しかし「もう終わりだよ」と言うと、やはり怒って食器を投げられました。


気がつくと、スイカのおかわりがないことに腹を立てた息子が食器を投げるのも毎食の恒例行事になっていました。

この頃、期間にするとたった10日くらいだったのですが、息子はイヤイヤがものすごく激しかったのです。

ちょっと私が注意すると、すぐ床に突っ伏して「えーん」となるし、少しでも気に入らないことがあると「あーん!」と叫ばれることが1日に何度もありました。


ひどいときは、私につかみかかってくることもありました。


そこに加わってしまったスイカブーム。


息子は食事でもおやつでもない時間にも「すーかぁ」と、スイカを要求するようになりました。

「今は食べないよ」と言うと、当然怒る息子。


後から振り返れば、本当にたった10日程度のことでしたが、とてもつらい日々でした。


(一歳十ヶ月になった現在もイヤイヤは続いていますが、この時ほどではありません)



そのつらい日々が落ち着くと、お盆がやってきました。

今年のお盆は諸事情があり、私の実家にも夫の実家にも行けませんでした。



しかしお盆が終わると、私の実家から盆棚にお供えしたスイカがやってきたのです。


よくある大きさのスイカと、「近所の人からもらった」という、めちゃくちゃでかいスイカが一玉ずつ。


息子はスイカ食べ放題の生活を手に入れました。


しかし、一歳児の食べられる量などたかが知れています。


私と夫が一緒に食べても、なかなか無くなりません。


なのでミキサーにかけてスイカジュースを作ったり、醤油や油と混ぜて大人用の手作りドレッシングにしたり、色々やって何とか消費しました。


9月に入ると、息子は少しずつスイカの要求が減っていき、9月半ばの今はほとんどスイカを欲しがらなくなりました。


彼にとって、夏が終わったのかもしれません。



思えば夏が始まった頃、スイカを「うーか」としか言えなかった息子は、この夏の間に「すいか」と正しく発音できるようになりました。

最後のほうには、「すいかー、びるー(スイカ食べる)」とまで言えるようになりました。


スイカは、息子に言葉の成長と感情の揺さぶりをたくさんもたらしてくれました。



そして私はというと、長年大好きだったスイカにあまりときめかなくなってしまいました…


嫌いにまではなってないけど、スイカを見ても「あー…うん。」と、テンションが上がらないのです。


私は昔から「好きなものを食べ過ぎて嫌いになる」ということがよくあり、スイカもその予備軍になってしまいました。


このまま来年の夏まで食べずに過ごし、今の気持ちをすっかり忘れてまたスイカにときめくことができるのかなぁ、と心配しています。


さて、今は少しずつ秋の食べ物が出回っています。


私は秋の果物の中で、柿が大好きです。


果物全般大好きな息子も、きっと喜んで食べると思います。


でも、スイカの件を教訓にして、息子への柿の供給はほどほどにし、私が嫌いにならない程度に柿を楽しみたいと思っています。

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