ミニトマトがアレに見える1歳児
1か月ほど前の出来事です。
1歳の息子と近所を散歩していると、庭先でミニトマトを植えているお宅がありました。
詳しい状況は伏せますが、通行人によく見えるどころか、通行人が簡単に手を伸ばせる位置に堂々と植えていました。
最初に気づいたときは葉っぱしか生えていなかったのですが、散歩で通るたびに見ていると、青い実がたくさんできてきました。
すると息子が、それを指差して「ぶどう」と言うようになったのです。
たしかに青いミニトマトがモリモリと連なっている様子はマスカットに似ていて、「なるほどなぁ」と感心しました。
それから2〜3回は、「ぶどう!ぶどう!」と言って通り過ぎるだけだったのでよかったのですが、
だんだん「ぶどう」を欲しがり、手を伸ばそうとするようになってしまいました。
私は毎回「よそのおうちのものだから、触らないよ」と伝え、さらに「家でジュース飲まない?」などと、息子が今すぐ帰りたくなるようなワードを出して、なんとかその場から離れさせました。
しかしある日、そこを通るとそのお宅の方が庭に出て何か作業をしていました。
これは、できれば何事もなく通り過ぎたい…
そう思ったのですが、やはりいつもの通り「ぶどう(が欲しい)!」とぐずる息子。
「おうちにもあるよ、おうち行って食べよう」と、いつもより小声で私が言うと、なんと息子は「イヤー!!」と叫んでしゃがみこんでしまったのです。
やばいやばいやばい。
ここの家主がどんな人か知らないし、迷惑をかけたくない。
早くこの場を離れさせなければ!!!
そう思い、私は小声とジェスチャーで一生懸命息子を説得したのですが、息子は「イヤー!!」としゃがんだまま動きません。
これは、無理やり抱えて走り去るしかないか…と思いました。
10kgの爆弾(息子)を持ち上げる覚悟をしたその瞬間、
「よかったら赤いやつどうぞ」
と、庭にいた家主さんが近づいてきて、声をかけてくれたのです。
「えっ…」と私が戸惑っていると、「いいから取ってって!」と言うので、「じゃあすみません…」と、私は赤くなったミニトマトを1個取らせてもらいました。
すると、その方はさらに赤い実を2個もいで渡してくれました。
息子の手に1個ずつ持たせると、息子は当然ながら大喜びし、再び歩き始めてくれました。
私は必死でお礼を言い、その場を後にしました。
息子はミニトマトを大事そうに、でも潰れないようにやさしく持ちながら歩いていました。
ふと、私は息子の手を指差し、「それなあに?」と聞いてみました。
すると息子は目を輝かせて
「みかん」
と言ったのです。
みかん…
私はあまりに想定外の答えだったので、
「そう…(笑)」
と言うのが精一杯でした。
言葉を覚えたての1歳児がめちゃくちゃなことを言うのは、普通のことです。
それに、息子は青いトマトを見たことがなかったので、青いミニトマトをぶどうだと思うのは、ある意味当然のことと言えます。
でも息子は果物全般が大好きで、みかんももちろん大好きです。
だから私は、息子がトマトとみかんを間違えるはずがない、と勝手に思い込んでいました。
しかし、「みかんとトマトは全く似てない、同じに見えるわけがない」というのは完全な大人の思い込みです。
子どもはまだまだ知らないことがたくさんあるとはいえ、やっぱり発想が自由なんだなぁ、と実感させられました。
私は息子の発言を受けて、
もし一つの木からぶどうとみかんができたら良いよなぁ…
そんなことがあったら楽しいな。
と一人で思いました。
大人になってからの妄想というと、「宝くじで一億円当たらないかなぁ」とか、可能性は限りなく低いけど、一応現実としてあり得ることがほとんどです。
現実的に絶対あり得ないことを考えるのは、大人が生きていく上では無駄にしかならないときもあります。
でも子どもの感性が育つためには必要なことだから、今後も息子の自由な発想を大事にしたいと思いました。
ちなみにその後、息子はそのお宅の前を通ってもミニトマトを欲しがることはなくなりました。
でも、青い実を見て「ぶどう」、赤い実を見て「みかん」と言うのは変わりませんでした。
もう少ししたら、本物の(?)みかんの季節がやってきます。
今年はついに、箱買いが必要でしょうか。
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