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高校時代の数学の恩師が教えてくれた、考え方の3原則

この夏、振り出しに戻って今自分が何をすべきか、何をやりたいかを考えている所で、高校時代の数学の恩師が教えてくれた考え方をよく思い出します。

高校3年生の秋、東大実戦と呼ばれる模試の数学で絶望的な点数を取り、合格はもう無理かと思いかけた所で、ある素晴らしい先生が僕にマンツーマンでついてくださることになりました。二人で「よし、やろう」と話してその場で決まったのを覚えています。

その先生は、毎授業、必ず最初に黒板に「数学の考え方の3原則」を書くのでした。どんな難しい問題に出会ったとしても、このプロセスを踏めば必ず解ける、というものです。それは

1. Think simply
2. Do experiments
3. Find regularity

というものでした。これは、手探りで進むしかないような高度な数学の問題において威力を発揮しました。思考のコンパスのような役割を果たしてくれます。"原則を知ったからすぐに全部の問題が解けるようになる" というわけではなく、このコンパスを持ちつつ数学の旅を続けることで、確実にこのコンパスの上手い使い方が直感的に分かってくる、そんなイメージです。


その秋の模試のあと、先生から「青チャートを受験までに5周してほしい」と指示がありました。青チャートとは、高校数学のあらゆる問題が網羅された3巻の巨大参考書です。1周するだけでも普通なら1年以上かかるでしょう。それを受験までの3か月足らずで5周もやれというのだから、最初はこの人は何を言っているのだろう、としか思いませんでした。

次の日から、A4の白紙ノートを大量に買って、解き始めました。教えてくれた3原則を意識していると、不思議と自分の思考をアウトプットしたくなりました。数学の問題にも関わらず、自分の思考を日本語の文章で書くのです。難しい問題に出会ったときは、「何がこの問題を難しくしているのか」という観点で浮かんだ思考をアウトプットします。そこから、どんな高度な問題に出会っても、「手が止まる」ということがなくなりました。


一問一問が楽しく見えてきたので、そこから一問一問に非常に丁寧に向き合いました。その問題の背後にある数学の原理、本質は何か?それを突き詰めることの楽しみを学びました。周りが過去問を解き始める中で、自分だけはギリギリまでずっと青チャートを解いていました。結局、入試の休み時間まで問題を解き続けて、ようやく1周が終わりました。5周は流石にできませんでした。

秋の模試で9点/120点だった私の数学は、東大入試本番で86点になりました。結果論に過ぎないかもしれませんが、この方法が自分に合っていると確信した僕は、高校数学の問題を解くときに培った思考のプロセスを、数学に限らず人生のいろんな問題において使っています。ノイズをできる限り排除したニュートラルな状況をまず作り、シンプルに考え、実験を行い、自分の経験から導き出せる原則を探す。何が問題を難しくしているのかを考え、その思考を徹底的にアウトプットすることで冷静に問題に向き合う数学が、人生全体への向き合い方をも教えてくれたといっても過言ではありません。

こうして自分のコンパスを持てるように数学を通じて手助けをしてくれた数学の先生に感謝をしています。アインシュタインはかつて、「真の教育とは、学んだことを全て忘れてもなお残っているもののことだ」と言ったそうですが、それはこうしたコンパスのことかもしれません。



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