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スマホを捨て、旅に出よう。

居宅介護先であるおばあちゃまの家に、デイサービスの送り出しに行っている。
僕が旅行業をしていると知ってある時ふと朝ごはんを食べながら話しかけてきた。

「昨夜テレビでボリビアをやってたんだけど、すごく懐かしかった!」

半身麻痺の車椅子のおばあちゃまからのふと出た「ボリビアが懐かしい」という言葉に僕は正直驚いた。南米ボリビアは僕も行ったことがなく、日本からの直行便もなく、乗り継ぎで24時間以上かかる長い道のり。目の前にいる車椅子で半身麻痺のおばあちゃまからは想像のつかない場所だったからだ。
ボリビアは映える所で有名なウユニ塩湖や氷河のあるダイナミックな自然を体感出来る国だ。
僕も南米は行きたい国が多く時間とお金を調整しながら何回かに分けて行きたいと思っていた。
聞けばおばあちゃまの渡航歴、65歳を超えてからキューバやアラスカにオーロラを見に行っているという。
半身麻痺になられたのは5年ほど前。

わずか5年の間に何が起きたのか、僕は詳しく知らないけれど、おばあちゃまを取り巻く環境の変わりようは大変なものだ。そのお気持ちたるや計り知れない。

けれどおばあちゃまはいう。
「元気な時にいっぱい行ったから、今テレビの番組で観ると色々思い出して楽しい」。
今物音ひとつしない和室に置かれたベッドの横で静かに僕と話しをしてくれる。

50歳を過ぎてしみじみ思うことは、「人生は結構あっという間」だということだ。
僕も30代の頃、飲み屋で隣りの席にいた知らないおじさんに言われて、ふーん、と聞きながしていたっけ。
50歳。既に長距離バスの乗り継ぎ旅行など、到底無理だ。

歳をとって、もし身体が動かなくなっても、テレビや映画で海外の風景を観た時の想いは、たぶん行って実感した人としていない人では雲泥の差があるはずだ。

若者たちよ。
スマホを捨て旅に出よう。

改めておばあちゃまの人生に拍手を送りたくなった。

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