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カナダで香港の未来を考える

トロント滞在中です。
今日はトロントで出会った香港人から学んだことを紹介します。


日本語勉強中の香港人とお話ししたときのこと。

彼女はつい最近カナダに来たばかり。
永住権獲得を目指すとのことですが
香港人は1年働けば永住権が取得できるといいます。


私の知り合いにも永住権獲得を目指している人がいますが
学歴、英語力、専門スキル、職歴、お金など条件は厳しいです。

(1年働くだけで永住権が取れるってどういうこと?)

そのときはゆっくり話す時間がなく
詳しい理由はわかりませんでした。


ある日、職場に新人さんが入ってきました。
香港出身でカナダに来たばかりのその子もやはり
1年働いて永住権を取りたいと言います。

休憩中にその子にその制度について尋ねました。

「Politic situation(政治的な問題)」
「Do you know the protest in 2019?
(2019年に香港であったデモを知っていますか?)」

2019年の香港のデモ…恥ずかしながら正直ピンとこなくて、
Maybe…とあいまいな返答しかできませんでした。


彼女はつたない英語で一生懸命説明してくれました。

香港の初等教育は香港の言語であるCantoneseではなく
Mandarinで行われるようになり、
Cantoneseがわからない世代が増えてきているんだそう。

日本語がなくなるなんて想像できない。
それってすごく悲しいことだね
というと、彼女は

「この話をすると本当に悲しくなるの」と言って泣きだしました。

えぇーー泣かせちゃった、ごめんなさい。

私の想像をはるかに超えた大きな問題があるんだと感じました。


それから私は香港の政治問題について調べました。
日本でももちろん報道されていましたが、
当時私の関心は向いていませんでした。


香港人の永住権取得が優遇されている背景には
歴史が関わっています。


香港は現在中国の一部の特別地区という位置づけです。
「一国二制度」といい、
一つの国の中に二つの制度があるという意味です。

中国は社会主義共産党一党支配の国です。
たいして香港は資本主義で世界的な経済拠点です。

なぜこの制度があるかというと、
香港がイギリスの植民地だったからです。

1842年のアヘン戦争後、150年以上イギリスが統治しました。

1997年に中国に返還する際に、
「50年間一国二制度を続ける」と決めました。


資本主義と社会主義では社会の制度や考え方が大きく異なるため、
社会の混乱を緩和するために50年間という猶予を設けたのです。
この50年の間にだんだん香港を中国社会に慣らそうという企みです。


現在ちょうど半分の25年が経ちましたが、
政治が不安定になっているのはなぜか。


実は2019年より前から大規模なデモはありました。
2003年のデモは国家安全条例に反対するデモ、
2012年には愛国教育必修化反対デモ。

2016年には中国共産党に批判的な本を扱っていた書店関係者が次々失踪し、
あとから中国当局に拘束されていたことが判明した事件もありました。


いずれにしても、
中国が香港を社会主義共産党の社会に取り込もうとし、
香港の人々は自由を守ろうとするという状況です。


近年中国の香港に対する圧力は強まっています。
さらに中国は香港同様に台湾統一も視野に入れています。


彼女によると、

大学卒業から5年以内ならカナダで1年働けば永住権が取れる。
さらにその後一定期間滞在すると、
香港の家族を呼び寄せることができるとのこと。


私と同じくらいの歳の彼女は、
家族の未来も背負って言葉が通じない国で
新たな人生をスタートさせたのです。


私は専門家ではないので
社会主義と資本主義のどちらがいいとは言えません。


私が感じたことは、日本はとても恵まれている、
それゆえ政治や国際社会に関心が薄いということです。

日本でも貧しい人はいます。日本人がみんなハッピーではありません。
しかし25年後に自分の祖国がなくなる危機感をもつ状況ではないです。

私は日本の外に飛び出して、実際に外国で生活したり外国人と接する中で、
国際問題に自然に関心が向きました。


勉強の根本はそうであるべきではないでしょうか?

歴史の授業で、
1842年にアヘン戦争があって香港はイギリスの植民地でした、
1997年に中国に返還されましたと習っても、

それでは意味がありません。


身近なことから興味がわき、
なんでそれが起こっているのかを調べ考えるほうが
学びが大きいと思います。


スマホやインターネットが普及し、
自分が興味がありそうな話題だけが自動的におすすめされる時代では、
興味の幅を広げるのが難しくなっているように感じます。


トロントに来て10か月が経ちました。

まだまだ思うように英語が話せなくて落ち込むことも多いですが、
英語だけでなく、人と出会いそこから学ぶことや気づくことに
大きな価値を感じています。


「英語だけなら日本でも勉強できる」
という言葉の意味を実感しています。

つまり海外留学は語学の勉強以上の価値があるのです。

留学中や留学予定の人はそれを心に留めておくといいと思います。


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