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#368 授業に、ひとさじの工夫を

2023.6.18.
とある変わった管理職の話を。


とある変わった管理職A先生

これまで出会った管理職を、変わった変わっていないなどと分けるのはおこがましいし、そもそもそんなに会った方の人数もいるわけでもなしい、一人一人を思い出すともれなく皆さん個性的だったように思う。

けれど、あえてこの方については「変わった管理職A先生」と言いたい。



長くなりそうなので、とりあえず思い出せる限りの変わったエピソードを羅列してみる。

◆職員室の黒板に今日明日の予定を書かない。のに、ソフトボールの打順表とバレーボールのポジション表は貼ってある。
◆職員室の教頭席にギターとプロテインが置いてある。
◆趣味、筋トレ。
◆朝からカップラーメンを食べている時がある。
◆休憩時間に音楽室で歌やギターやピアノを練習している。
◆補教に積極的に入る。むしろ、テスト監督なんてつまらないから授業をさせろという。
◆勤務時間を過ぎた電話を取って繋ごうとすると怒られる。
◆やり方によっては「電話対応30点」とか言われる。
◆好きな選手の試合を見に行くために午後半休。
◆テニス経験がある初任者が入って来たことを機にテニス部を発足させる。そして近くのテニスコートを17時から借りる。練習したら必ず飲みに行く。
◆口癖①「そういう世界だから」
◆口癖②「ばーーーか」
◆口癖③「クラス乗っ取ってやる」

多分、もっといろいろあったと思うけれど…。

なぜ管理職になったのか聞いたときは、「ちょっと来てと言われてついて行ったら管理職ロードに乗っていた」というようなことをおっしゃっていたように思う。そんなことあるのか…。

時間がある時は、よくいろんな教室の様子を見て回っていた。(来るたびに私はヤバい!と背筋が伸びていたけれど)

勉強やりたくなーい!という子供がいると「やりなさい」ではなく「なんでやりたくないの?」と聞いていた。あいつらにも理由があるんだよとよくおっしゃっていた。


とにかく、私から見る限り、A先生は教頭史上最も楽しそうに仕事をする方だった。特に、自分が授業をするとなったらそれはもう少年のようにわくわく準備をするし、子供たちの反応を見るのも楽しそうだった。

そうして、管理職マリアージュによってこういう状況が生まれる↓



「ひとさじの工夫」

という人物紹介が長くなってしまったが、これまた印象的なA先生の口癖に「ひとさじの工夫」というものがあった。

当時、勤務校にはなんと4人も初任者がいた。大規模校だったわけではない。学級数13の中に4人!教頭は初任の先生たちの授業を見に行っては、その授業のレポートをA4用紙1枚にまとめて渡していた。

あの授業、子供からこういう意見が出ていたのに、なんであれを拾わなかったかなあ!
もっとこういう動きをさせたかったんだろ?じゃあ場の設定をこうすればいいんじゃない?
本当に、ひとさじの工夫なんだよなあ!なんでやらないかなあ。

テニス後の飲み会ではそんな話をよくされていた。(その後お酒が進むと、言っていた方も言われた方もほとんどのことを忘れた。)



昨日の記事↓のように

最近は若手の人たちの授業を見たり悩みを聞いたりして、どうアドバイスしたものかと考えることが多い。

ただし私は、

初任といえど大人なんだし仕事なんだから…と、「なぜできていないんだ」目線でダメ出しをしてしまう傾向にある。

勤務校でも、外から授業を見ている立場なので、次々と指摘したいことが湧いてきてしまう。その説明じゃ伝わらなくない?口頭指示だけじゃなくて簡単に板書してあげた方が…。その順番で指示出したら混乱するぞ。なぜ残り7分のところでメインの活動に入る?そのプリント、用意してなかったならもっと早めに言ってくれれば!

毎日出している活動報告に、初任の先生に対して「できればこうした方が…」と改善ポイントを書いてみたりもした。が、伝わっている感じがしない。。。




久しぶりにA先生に連絡を取る機会があり、思い切って聞いてみた。ちなみに、A先生は今では校長である。

「今でも初任の先生にあのA4の授業レポート渡していますか?」

「やってるよー。講師の先生も含めて3人分毎日書いてる。ひとつ伝えたいことを伝えるために、3つ褒めてるよー。


!!!

ひとつ指摘するために、

3つ褒めている!!!

それだ。私に足りないもの。



運動会後、雰囲気がかなり悪くなっていた初任ガンダ先生のクラス。学習内容の理解が今ひとつなガンダ先生。子供にあまり考えさせず、先生の説明で進んでいく授業。楽しくなくて手遊びやおしゃべりを始める子供たち。厳しく怒る先生。やる気なくす子供たち。負のスパイラル…。

そんな中でA先生からヒントをもらい、迎えた翌週。ガンダ先生のクラスに入ったら、とにかくどんなに小さいことでもいいので、褒めるポイントを探すことにした。先生は子供たちを叱ってばかりの状態だったので、褒めていることを価値づけることと、褒めると良さそうな子供の行動を見つけること。で、活動報告にはそれを中心に書いた。
「3時間目、始まるときに準備ができている〇〇さんを先生が褒めていました。〇〇さんもうれしそうでした。」
「□□さんは、いつも先生の話をよく聞いています。」
「大きさがどのくらいか、子供たちに手で表させていたところが良かったと思います。」
実際褒めることがほぼないからなかなか書けないけど…1回は発見!


そんなことを意識してみたその週の金曜日。突然にそれは起こった。

「△△さん、いい姿勢。××さんもいいね。◇◇さんもちゃんと支度ができている。」

!!!

その時、私は教室の端で宿題チェックをしていたのだが、先生の声に思わず手を止めて振り向いた。

ガンダ先生が…褒めている…!しかも3人も褒めている…!これまで見たことがなかった光景だ…!活動報告で何か伝わったのだろうか?他に誰かアドバイスをしてくださったのだろうか?どっちでもいいか。これは偉大な一歩だ!

すみません、そこらへんの付箋に描きました

ということで、とりあえず今後は…
どうしても伝えたいひとさじの工夫と、それを伝えるための褒めポイント3つを意識していこう!
と方針を決めたのである。


褒めるも指摘するも、どちらにせよだいぶしゃしゃった講師だと思われているだろうなあ…。でも、この人のアドバイスは聞きたいなと思われるような信頼を貯めていくしかないよねー。私もファイトー!



あ、褒めるガンダ先生、翌日にはまた元に戻ってましたとさ。そんなもんだ!




#教員エッセイ
#授業にひとさじの工夫を
#ひとつの指摘とみっつの褒め

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