反海賊政策

◆海賊ゲームの海賊版

 海と接するこの国では、政府と海賊の戦いが古くから様々な形で行われてきた。技術の発達でゲーム文化が登場した後の現代でも、戦いは続いていた。

 大海賊の血を継ぐ一人の少年は、自身も海賊になることを夢見ていた。彼は海賊になるための練習の一環として、あるゲームをプレイすることにした。そのゲームは、海賊を題材としており、海賊についての知識や技術、歴史などが正確な考証の上で説明されている。そのため海賊好きや海賊を夢見る者に人気である。

 少年は終盤までゲームを進めたが、ラストボスを倒してエンディングのところで突如ゲームが動かなくなる。今までの努力が水の泡になったかと思いきや、恐ろしい赤い目をした骸骨が画面から出てきて少年を睨み、こう尋ねる。なぜお前は海賊版を買った、と。少年が知らないと答えると今度は、お前を通報した、もう遅いからな、と骸骨は言った。

 それを知らされた少年は、警察に捕まるわけにはいかまいと、ゲームを持って自宅から逃げる。追ってくる警察を自作の武器で次々追い払い、少年は数日間にわたり逃亡生活を送った。しかし赤い目の骸骨が出現して以来、ゲームは警告画面のままで遊べなくなっていた。

 盗んだボートで国外の海までたどり着いた少年。しかしその日は悪天候で、少年は津波に飲まれてしまう。もう死ぬのか、と少年は死を覚悟した。

 ところが目を覚ますと、ここは冷たい牢屋だった。逮捕され刑務所に入れられた少年は、あの骸骨の命令で"アンチパイラシースクリーン"を一生作らされることになった。

 アンチパイラシースクリーンとは、ゲームの海賊版をプレイした時に流れる映像である。この国では、ゲーム開発の際にアンチパイラシースクリーンを実装することが義務づけられている。その内容は恐ろしくホラーで、時に囚人たちはグロテスクで残虐な描写のある映像を作らされた。

 例えば、全年齢向けの可愛いキャラクターのゲームの海賊版を買った者は、キャラクターがおぞましく豹変して襲いかかってくる内容のものを作らされる。

 別の例として、成人向けゲームの海賊版を買った者は、ヒロインが海賊に強姦される内容のものを作らされる。

◆実装義務化の理由

 かつての時代の別の国では、世界的大人気ゲームに実はアンチパイラシースクリーンがあるらしい、という都市伝説が流行していた。それを聞きつけたこの国の役人が政府に助言したことで、政府は海賊への対抗策として、ゲームにアンチパイラシースクリーンを実装することを義務づける法律を作った。

 政府はアンチパイラシースクリーンの力を借りることで、すべての海賊を撲滅しようと目論んでいたのだ。

おわり

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