豪華な寝室

 私はこの世の支配者。私以外のすべての畜生どもを、この巨大な牢屋に閉じ込めている。牢屋には頑丈な檻があるので、畜生どもは檻を破って、この私の豪華な寝室に立ち入ることもできぬ。こうして私は日々、牢屋の中の愚かな畜生どもを監視しては、奴らが馬鹿をするのを見て、ただ一人で楽しんでいる。

 私は豪華な寝室を持っているが、何百万もの畜生どものうろつく牢屋は、私の寝室の方が小さなアリに見えるぐらいにとても大きい。そして牢屋には、緑の草原や青い湖もある。時に光が差したり雨が降ることもある。流石、私の豪華な牢屋だ。

 畜生どもの監視が楽しくて忘れていたが、この牢屋を建ててからというもの、寝室から一歩も外に出ていない。

 おかしい。寝室の鍵がどこにもない。まさか、畜生どもが私の寝室に勝手に入ったのか。それとも、私が牢屋を建てる時、誰一人牢屋から出られぬよう鍵を壊したか隠したかしたのか。

「閉じ込められているのは、お前だ」

 声のした方を向くと、檻越しに畜生どもが立っていた。早くここから出せ、と助けを求めたが、その畜生どもは聞かない。なぜ出さない、と叫ぶと、その畜生どもは言った。

「お前じゃなくて、俺たちが建てたものだ。お前が寝室と呼ぶ、その牢屋は!」

おわり

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