L’Arc-en-Cielの音楽の魅力を7つのジャンルでご紹介 〜第ニ弾 愛情編〜
L’Arc-en-Cielの魅力を7つのジャンル(恋愛、愛情、哀愁、愛執、運命、未来、抵抗)でご紹介する本シリーズ、第二弾は愛情編です。
前回の恋愛編では、明るい雰囲気の恋の歌を7曲ピックアップしました。曲調は明るくても、歌詞の内容は片想いでちょっと切ない感情を含んでいるものが多かったと思います。
今回は愛情編ということで、「相手のことを心から想い、見守る」というあたたかさと力強さを感じられる曲をご紹介します。
愛情編
あなた
(作詞:hyde 作曲:tetsuya)
壮大なバイオリンのメロディから始まるこの曲は、自分を照らしてくれる「あなた」の愛を胸に、前に進んでいけるという情景を描いています。
歌詞の中に、「うれしい時や悲しい時に あなたがそばにいる」というフレーズがあります。これは、何気ない日常風景に見えますが、自分がどんな状態でもそばにいて話を聞いてくれる「あなた」がいるということは、なんて心強いことだろうと思います。
確かなものなどない世界で、深い愛情で包んでくれる「あなた」こそ自分にとってかけがえのない存在。そんな「あなた」がいてくれることへの喜びと、心からの感謝の気持ちを、「胸にいつの日にも輝くあなた」「涙枯れ果てても大切なあなた」と表現し、伝えています。メロディの雰囲気も優しさとあたたかさが感じられ、全体を通して愛に満ちた名曲になっています。
Pices
(作詞:hyde 作曲:tetsuya)
ちょっと可愛らしい雰囲気のイントロから始まるこの曲も、相手のことを思いやる優しさや愛情が伝わってきます。
例えば、泣いている「あなた」に「悲しさにつまずいても真実を見ていてね」という言葉をかけていますが、それは「あなた」のことを大切に想っていて、信頼しているからこそ。「そのままのあなたでいて」という言葉もあたたかいです。
「いつまでも見守ってあげたいけどもう大丈夫」「優しいその手を待ってる人がいるから顔を上げて」「私のかけらよ力強くはばたいてゆけ」というフレーズを見ると、この「あなた」は、恋人というよりも、自分の子供を見送るシーンのようにも思えます。
前出の「あなた」も「Pieces」も、青春時代に聞いた時にはちょっと歌の質量が重く感じられ、どちらかというと切ない感じがする恋愛の曲や、疾走感のある曲を好んで聴いていました。でも、親世代になるとこの愛情系の曲が胸に響いて、しみじみといい曲だな〜と感じます。
Anemone
(作詞:hyde 作曲:hyde)
この曲は好みが別れると思います。なぜなら、曲全体がしっとりとしていて、まるで物憂げなフランス映画のような雰囲気を醸し出しているからです。けれども、その雰囲気が逆にやみつきになるような、しみじみと味わい深い曲です。
描かれているのは、「あなた」への強い思いを抱いた「私」が、まだ春が訪れない冬の時期に、港から出る小船に乗って「あなた」の元へ旅立つという情景です。遠く離れ離れになっていた恋人に、海を越えて会いにいくというドラマチックな物語ようです。
一方で、冒頭の「大切な人々その優しさに包まれて歩み出す あなたへと」というフレーズや、終わりに出てくる「あなたへと旅立って」というフレーズは、結婚のイメージに近いものがあります。
叙情詩
(作詞:hyde 作曲:ken)
少し哀愁を帯びた曲調ですが、その哀愁は「恋の切なさ」などではなく、「愛する決意や覚悟」に通じるもののように思えます。なにせ、この曲の歌詞は全体を通して愛に満ち溢れているので…
冒頭の「季節は色を変えて幾度巡ろうとも この気持ちは枯れない花のように揺らめいて 君を想う」という一文が、この曲の核心です。キーセンテンスです。ビジネスでは結論から先に述べよなどと言われますが、その結論の部分です。
「奏で合う言葉は心地良い旋律 君が傍に居るだけでいい」…「君」と話す時間が楽しい様子を、「奏で合う言葉は心地良い旋律」と表現しています。なんて詩的で美しい表現なんでしょう。会話を音楽に例えているんですね。「詩」のレベルが高すぎる。こんな表現、頭をどうひねったところで出てきません。
サビでは、前半の「降り注ぐ木漏れ日のように君を包む」という部分で優しい愛情を、後半の「それは僕の強く変わらぬ誓い」という部分でその愛情の強さを表現しています。こんなに真っ直ぐで誠実な愛情表現の曲は、なかなかないと思います。しかも、この抽象度の高さで。歌詞の中で、具体的な相手とのやり取りはほとんど描かれていませんし、好きだとか、愛しているだとか、そんな言葉は使われていません。それにもかかわらず、「君」への愛情の強さが真っ直ぐに伝わってくる。これはすごいことだと思います。
My Dear
(作詞:hyde 作曲:hyde)
少し寂しげな音色から始まるこの曲は、なかなか見つからない愛を探し求めた結果、たどり着いた「君」への愛を歌っています。
日本語の歌詞と、コーラスの英語の歌詞を合わせて読み解いてみると、
「さぁ愛を探して見てごらん〜僕は見つけられなかったけど…」の部分のコーラスは「real love, my dear, is not for sale.」「real love, my dear, is hard to find.」となっていて、愛に関して述べていることがわかります。本当の愛はどこにも売っていないし、それを見つけることが難しいことを歌っています。
一方、「やっと手を伸ばして掴んだ〜すぐに枯れて腐ったよ」の部分のコーラスは「real faith, my dear, is far too fake.」「real faith, my dear, is just a dream.」となっていて、信仰・信念・自信に関して述べていることがわかります。これは、やっと掴んで手に入れたと思った信仰・信念・自信(頭で考えるようなこと)は儚く消えてしまったことを歌っています。
loveとfaithの観点で考えると、愛はなかなか見つからなかったし、いろいろ経験してこれだ思って掴んだ信念みたいなものも儚く消えてしまった。そういった、闇の中を手探りで進ような人生だった。けれども、そんな中でようやく出会えた「君」に対して、「君へつないだ手はいつまでも離さないから」「君への輝きはいつまでも降り注いでる」「それだけは信じていいよ」というメッセージを伝えている。何というか、「君」を想い見守る自分の気持ちの誠実さを切実に訴えているかのようです。
SHINE
(作詞:hyde 作曲:tetsuya)
冒頭の英語の歌詞は「あのまぶしい太陽のように、君をいつも照らしたい。すべての闇から君を守る。これが私の心の真実。」という、何とも真っ直ぐで力強い愛のメッセージです。
この曲の歌詞のシチュエーションは、これまでの曲とは少し趣が異なります。何らかの理由で分かり合えていない2人がいて、その当事者である「僕」から「君」に対するメッセージソングになっています。
「僕」の心の中には、生きていく中で経験する様々な「闇」から「君」を守りたいという気持ちがある。けれど、それは「君」には伝わっていないし、「君」を想ってこその「僕」の言動が、「君」にとって嫌に感じるかもしれない。今はまだわかってくれなくてもいいけど、「君」が本当のことに気づき目覚めるその日まで付き合うよという内容で、「いつの日にもいつもそんな君を 太陽のようにずっと見守れたらいいな」という終盤のメッセージが印象的です。
相手との間柄が恋愛関係でも、友人関係でも、親子関係でも通じる内容なので、解釈の幅の広い「愛」を歌った曲だと思います。
BLESS
(作詞:hyde 作曲:hyde)
「君」が思い描いてきた「夢」が、長い道のりを経てまさに今、叶えられようとしている…そんな舞台に立つ「君」を祝福する曲です。
歌詞の内容を見ると、結婚式の情景を描いているようにも思えますし、また、例えばアスリートなど、何らかの大きな舞台に立つ人のことを描いているようにも思えます。いろいろなことがありながらも、ここまで頑張ってきた「君」を祝福しています。
祝福は、そこに至るまでの相手の状況を知っているからこそ、できるものです。大なり小なり、「見守る」という行為が含まれていて、それがこの曲の愛情の深さにつながっていると思います。優しくてあたたかい曲ですね。
以上7曲が、愛情を感じるL’Arc-en-Cielの歌でした。
前回の恋愛編と同様、hydeとtetsuyaがタッグを組んだ曲が多いですね。
hydeが作詞・作曲した曲も多い印象です。
ここまでご紹介した恋の歌も、愛情を感じる歌も、基本的にはどちらも明るく優しい雰囲気の曲でしたが、次回はL’Arc-en-Cielの「哀愁」を描く曲をご紹介していきます。恋や愛に限らず、胸に迫るような切ない感じの曲を7曲ピックアップする予定です。お楽しみに!
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