見出し画像

第14話:パン屋さんのカレーパンが心おきなく食べられる社会へ。エシカルへの長い道のり。

パン屋さんのパンが好きだ。もれなく子ども達も。

わたしが小学生の頃はまだ、土曜日の午前中は学校に行っていた。
お昼まで授業を受け、そこから最高にお腹がすいた状態で家まで歩いて帰る。15分の道のりが苦しかった。胃がキリキリ痛み、一緒に帰る友達と何も話せないくらいだった。
そんな時、母がだいたいお昼ごはんに近所のパン屋さんでパンを買っておいてくれる。エネルギー源としてのそのパンは、幼いわたしの細胞のすみずみまで行きわたったのだと思う。とりたてて特徴のあるパンではなかったけれど、本当においしいと思った。
そんな体験もあるからパンが心底好きだし、お休みの日のお昼ごはんにはパンを買うことが多い。

カレーパンが食べたい vs プラごみどうにかしたい

コロナ前はむき出しで売られていたパン屋さんのパンは、コロナを経て全てプラスチック製のビニール袋に入れて売られるようになった。
その方がみんなにとって安心だから、そうあるべきだとわたしも思う。
でもお昼ごはんにパンを買うと、そのおびただしいプラごみ量に罪悪感がわく。
これまではレジの人にお願いして、なるべくひとつのビニール袋にまとめて入れてもらっていた。でも今は、売り場に並ぶ時点で個別包装だから選択肢が無い。

昨日、子どもにお昼ごはんに何が食べたいか聞いたら、お決まりのように「パン屋さんでパンを買ってきたい!カレーパンが食べたい!」と言った。
わたしもカレーパンが食べたい。
でもプラごみの件もいいかげんどうにかしたいと思った。(でも家でカレーパンは作りたくない。)

子どもと脱プラのオープンサンド作り

子どもと二人でうんうんうなってアイディアを出し合った結果、スーパーで食パンと具材を買ってきて、オープンサンドを作ろうという話になった。
突き詰めると、カレーパンでなくてもいいのかも、とりあえずパンが食べたい、ということだったからだ。
食パンももちろんビニール袋に入っている。でも1斤まとめてひとつのビニール袋だから、いくらかいいのではないかという結論に至った。
「ピーマンとソーセージをのっけたピザトーストをつくろうよ。
生クリームを泡立てて、ブルーベリーをのせたらおいしいよね。
家にあるバナナとチョコソースもいいんじゃない?」
そんな楽しい計画を立てて、買い物に行き、そして作ってみた。

だいぶおいしくできた。平日のランチとしては最高ランクのできばえだ。

子どもに感想を聞いてみた。
「カレーパンじゃなかったけど、おいしくできたからよかった。自分で作ったのは楽しかった。」と言っていた。わたしも楽しかった。

余裕がないと実践できないエシカルライフ

でももし、わたしか子どもがめちゃくちゃにお腹がすいていたら(小学生の時の土曜の昼のように)、こんなめんどくさいことはできない。さっさとカレーパンを買う。
あと忙しくても、できない。子どもとまともに向き合って相談するにはそれなりのエネルギーを要する。
昨日はたまたま、朝ごはんの時間が遅くてあまりお腹がすいていなかったし、仕事を入れていなかったから時間に余裕があった。

余裕がないとできない、こうしたエシカルライフ。そういうことをやっている人が、「意識高い系」とか「SDGsウォッシュ」とか揶揄されるのだと思う。
「そんな余裕がありゃわたしだってやりますよ」という声なき声が、勝手に聞こえてくる気がする。

でも誰も悪くない。余裕のない人も、スーパーやパン屋さんも、みんなそれぞれができる範囲で一生懸命やっていると思う。最善を尽くして今わたしたちの社会はこうなのだから、そこはいったん受け入れたい。

エシカル社会、スウェーデンの場合

少し前に、スウェーデンの方に話を聞く機会があった。スウェーデンのスーパーでは、オーガニックやフェアトレードではない商品を見つけることの方が難しいのだそうだ。
人も企業も政治も、そもそもが環境志向の社会だから、パンが食べたいと思ってパン屋さんに行けば、そこには環境志向の商品しか並んでいないので、何を選んでもまちがいがない。
今わたしが近所のスーパーに行く時は、なるべくプラごみを出したくない、なるべく環境に配慮された商品が買いたいと思って、軽く心を武装している。
でもスウェーデンではそんな武装は必要ない。楽しく買い物ができる。うらやましいと思った。

カレーパンがエシカルに食べたい

子どもとの、なるべくプラごみを出さないオープンサンドづくりは楽しかった。プラごみも減らせたのでよかった。
でもやっぱり実のところは、パン屋さんのカレーパンが食べたかった。
だから昨日の晩ごはんは、カレーになった。

パン屋さんのカレーパンが、食べたいと思った時に心おきなく罪悪感ゼロで食べられること。長い道のりだけど、そんな社会がいいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?