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『舞台どろろ』

『舞台どろろ』
原作 手塚治虫
脚本・演出 西田大輔
@サンシャイン劇場
2019/3/7〜3/17

3/9(土)18:30〜の回を見た!

怒涛の3時間。とんでもない熱量と情報量。やべえ物を見ちまった。

アニメはもちろん見ていた。でも、その時は『どろろ』は冒険譚的な雰囲気の作品だと思ってた。百鬼丸が妖を倒して自分の体を取り戻していくのだって、ドラゴンボールを集めてるみたいな気分で見てて。でも、舞台を見て印象が変わった。

百鬼丸とどろろの出会いから始まり、妖刀・ばんもん・鵺などの妖たちとの戦い、百鬼丸の出自や寿海との日々、その裏で葛藤する醍醐家、どろろとの絆.........膨大な厚いストーリーがぎゅっと詰め込まれてて、それでも、一つ一つの物語は丁寧に描かれているし、その一つ一つをつなげていくと大きなテーマも見えてきて。

妖刀・ばんもん・鵺、それぞれの話は一見バラバラに見えるけれども 、妖刀に狂った浪人には帰りを待ち続ける妹の存在があり、ばんもんに通い続ける助六は離れ離れになった母親を探していて、賽の目の三太郎は母親を食われた経験から鵺と一体化してしまった。どろろは両親を亡くして一人で生きていて、百鬼丸も両親から体を奪われ捨てられて生きている。縫の方は百鬼丸を捨てたことへの後悔を抱き祈り続けているし、多宝丸はそれを感じ取って母の自分への愛情を疑い始めている。

そうか、どろろって家族を描いた作品だったのかと思って。

整理するとわざとらしいほどだけど、絡み合って、点々をつなぐみたいな構成になってるから見事。削れるとこないし、こうやって3時間にぎっしりと隙間なく詰めた事で、テーマ性も浮かび上がって。かつ舞台の生々しさも相まってリアルに感じることができて。

本当に、舞台にした意味がある作品だなぁ.........最近舞台化が流行ってるけど、演劇作品としても面白いと思えるものって一握りで。『舞台どろろ』はその意味で傑作。間違いない。

それにしても西田大輔って、こうやって一つのテーマを柱にして演出つけんの最高にうまいよね。『ミュージカル薄桜鬼志譚 土方歳三篇』もそうだった。土方歳三は、新撰組の初めから終わりまでの膨大な物語を抱えている人間で、3時間でまとめるなんてとんでもない事だけど。そんな中でも新撰組の志士の信念、“誠”にフォーカスした象徴的な演出を入れて。しっかり整理されて筋の通った作品になってたもん。大好き。

マチソワ間のおやつシリーズ。念願の梟茶書房。プレーンパンケーキとアイスカフェラテ。美味しいカフェラテがるとQOLが爆上がる。

さて。

てかてか〜!!兄弟シンメ最高すぎませんでしたか〜〜!????

親の元で何不自由なく生きてきたはずが、親の愛情に疑念を抱きコンプレックスを持つ多宝丸と、親に体を奪われ捨てられ、それでも一人で強く生きそばに唯一無二の相棒がいる百鬼丸。この対比やばいんすよね。一幕ラストとかまじやばいんすよね。兄弟が初めて顔を合わせて「お前は..」でエンドとかニヤニヤ止まんないし、二幕初っ端の共闘とかヤバヤバだね。すごく末満健一。多宝丸が星に手を伸ばしちゃうもんね(幻覚)。ラスト、多宝丸が自分の目を潰して百鬼丸にあげるのなんか見ちゃうと、なんで「君は僕であり僕は君だ」ってセリフがなかったのか解せないくらい末満健一だったもんね。キャスパレ見たいね?二幕が死ぬほど末満臭がしすぎて。トランプ版どろろの大喜利してる人どこかにいないのかな

あとねあとね、どろろと百鬼丸の関係性も最高に好きだったんだよね。

戦いと父母との再会でボロボロになって眠る百鬼丸にどろろが、

アニキ大変だったな、オイラももな一人で生きてきたんだ、何度も死んじまいそうになったこともある、でも一度も弱音を吐かなかった、だからアニキを見ていると...

と、語りかけるとこがあってね。この、似た者同士で唯一無二の2人の関係性が特別だってことがすごく印象的に伝わってくるシーン。好き。どろろって題名につくらいの関係だもんね。

しかもこの後の、「今は秋だ、もうじき山中が真っ赤になるんだ。そういうのをキレイっていうんだぜ。目が見えるようになったらいっぱいキレイなもん見ような」って言っていたのが、百鬼丸が目を取り戻した時にどろろをキレイだっていうのにつながることを考えたらやばいね。やばい。唯一無二の関係性どどど性癖

役者さんもめちゃくちゃ良くてね。

健人くんのお芝居すごく好きだった。すごくスマート。いつも安心して見られるし、毎度しっかり完成させてくるもんな......すずひろとの一騎打ちも気迫で、こんなデキる人だったんだなと思った。パンフの座談会とインタビュー読んでも謙虚で好感。好感度がぐっと上がった。

せしるさんはいつ何時も美しくて眼福。声もダンスも、縫の方の生き方も全部美しい。

田村くんのお芝居の仕方が好きだなと思った。爆発的なパワーを乗っけられるし、孤児らしい泥臭さがあっていい。うまい。かわいい。

すずひろはまさに百鬼丸だった。双眼鏡で覗いても常に百鬼丸。お前は鬼の子だったのか?焦点の合わない目で殺陣やるって何事?なんであんな違和感なく覚えたての言葉と喋り方で語りかけるっていう演技の仕方できるの?やば

ちょっとスタッフワークに物申したいところは無くもないけど、総じて良かったし良かったよとだけ書いておきたいのでこれにて終い!

この舞台が、今回の公演で評判になってもっと厚く長く続けられるようになればいいなと思った。

再演を熱望する。

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