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もしも

このウィルスとの闘いが始まったと認識できたかどうか、とりあえず中学3年生の3学期が突然休日になり、卒業式があるかどうか となった頃、息子の動きは速かった。

全てはもしこのまま なかなか学校が始まらなかったらという危険を察知した野球少年のカンのようなものから始まった。

男子はだいたい一途である。こと好きな物ごとに対しては。息子の場合は野球。高校受験が終了したばかりの時期、もちろんこれからの生活に期待する気持ちでいっぱいの時期。ところがだ。卒業式が無理かもしれない。

卒業式が無理なら、入学式も無理かもしれない。

入学式が無理なら、学校生活はすぐには始まらないのかもしれない。

そうしたら野球部だって始まらないかもしれない。

プロ野球も練習できていない現実に、春大会も無理かもしれない。

3年間しかない高校野球なのに どーすればいいの?となり、3月13日にはホームセンターで砂利と土と人工芝を買い込のでいた。狭い庭を掘り返し 土をならしてマウンドを作り、一人練習開始。体感トレーニング、ジャイロピッチ、Tバッティング。雨が降ればブルーシートで覆い、花が咲けば蜂に追いかけられながら。

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あれからもうひと月半が過ぎた。

卒業したのでそれぞれの道へ。入学したけど一日しか登校していないのでお互いを知らないクラスメート。授業の代わりに宿題が日課。そんな宙ぶらりんな高校生活。しかしやはりオンラインでは部活は始まらないね。世の中は更に感染拡大し、唯一友達と一緒にいられたバッセンも、閉じた。

STAY HOME というけれど、公園では多くの家族がスポーツを楽しむ姿が見られる休日もある。朝早くから夕暮れ時まで川沿いの道にはランニングする人がいる。外に出て行きたい気持ちは皆同じ。ならばかつてのチームメイトに声をかけてキャッチボールくらいはとこちらは気を許してしまいそうだけれど、慎重である。自粛しているかもしれない友達を誘うのは申し訳ないし、どんなことで感染するかわからないから。  そうだね、確かに。

だけどだけど、実はもしもの世界を大事に持っている。

もしも高校に通い始めたら、もしも部活が始まったら、もしも野球の試合ができたなら。心の中にあるその未来の明るい世界は、ぐんぐん膨らんでいる様子で決して萎んではいない。

だからこその今できること。規則正しく食べて背が伸び、ストレッチして身体が柔らかくなり、家族バドミントンで動体視力が増し、動画も本も助けになり彼なりに進化している日々がある。

この 内側に向き合う長い時間が終わったら、きっと本当にやりたかった未来につながって、素晴らしい現実の野球人生になるに違いない。そう、信じている。

#応援したいスポーツ #野球 #高校1年生 #スポーツ #エッセイ



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