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【シンフォニック=レイン】ファルルート感想。傷だらけの幸せに何を想うか

【シンフォニック=レイン】については上記参照。当記事はこのゲームの紹介記事等ではあらず。ファルルートにおいて生まれた感想の羅列に等しい。
ちゃんした記事は全部クリアしてからということで自分もまだプレイしている途中である為、とりあえずファルのお話だけをここへ書き殴る。一応最初はトルタルートのようなものをやったのだが明らかに消化不良だったのであまり触れない。読んだばかりの感想の羅列なのでまとまりはない。

いつだかに軽くこのゲームについて情報収集を行ったがこの作品においては殊更ネタバレを見ない方が良いとのこと。なので未プレイは可能であればプレイしてからここへ来てほしい。

利用するものとされるもの

序盤から伏線が貼られていたが、全体として利用する者とされる者という点が最も強調されていたように感じる。もっと言うのであれば打算的と純粋さという点でファルとクリスの対比の構図がファルの真意を知ってから気付くことができる。
ファルが講師から写譜や雑用を頼まれるシーンがしばしば挿入される。序盤こそファルが講師に都合良く利用されていると取ることができる。事実それは間違っていないであろう。
だがファルの内面としてはそれにより後々の為に講師を利用できる土台を整えていただけに過ぎない。クリスによく自分が好きでやっていると言っていたがこれがその自分の為にやっていたという理由に当たるのだろう。

互いに利用することと助け合うことの違い

ファルが自分の生き方をクリスに告白した後の問答がこれに当たる。ここは非常に印象に残った。
私はあなたを利用する、だからあなたも私を利用すればいい。ファルのそのスタンスは誰に対しても等しかったことが分かる。
自分にないものを得るためにそれを持っている他人を利用する。そのスタンスからは私達はお互いにないものを補い合っていると言うクリスとアルの姿が浮かぶ。
だからクリスは利用し利用される関係を、本質的には変わらない生き方を助け合いと言い変えたのだろう。ここにクリスの青さともっと言うならば理想主義的な若さが見て取れた。

トルタとの話においてはどちらも思考のベクトルが夢を見ていた。クリスと一緒にありたいと願うトルタと「今」以外、もっと先のものを注視したくないクリスの現実逃避思考がよく見て取れた。
ファルは明らかにトルタとは対照的な存在である。トルタは卒業してから歌で生きていきたい、そしてその傍らにクリスがいてほしいと願う。ファルは歌で生きていくと決めて卒業までの道筋を決めていた、その野望を叶える為に隣にクリスがいてほしいと考えた。
理想と現実、裕福と貧困、そしてなによりも純粋と打算。トルタとファルは非常に対照的で見ていて面白かった。罪悪感と葛藤はあったがそれでも気持ちを抑えることができずトルタを抱きしめた夜と、怒りと悲しみを激昂のままにぶつけてファルを抱いた夜もとても対象的だ。
だがそこに違いはない。どちらもクリスは自分の気持ちを、感情をコントロールできない未熟さが際立って見て取れる。それがファルとの夜を経てクリスは大人になる。だからクリスは「彼女になら、利用されるのもいいかもしれない」そういう考えへ至る。
ファルのことが好きだから、ファルと一緒にいたいという欲望の為に自分を利用する。ファルがクリスを利用し続けているのだろうか。私はクリスがファルに利用されているように感じた。ファルにとって利用価値のある自分であり続ける。そんな風な心情をラストからは見て取れた。
その関係性はファルとの列車での会話で察することができた。元々あまり我を出さないクリスだからある意味で順当と言えば順当な落とし所であると感じた。
そんなクリスに対して追い打ちで完全に今までのクリスを殺す為に必要だったものが、一緒にアルのところへ行くという行為だったのであろう。
そこで決別をさせクリスにとって帰る場所をなくすことで、クリスはファルと同じ音楽で前に進むしかなくなる。その禊が済んだということが最後の同棲シーンから見て取れる。

女としての自分を利用してクリスに近づき、自分の体をも駆使してクリスを自分の物にした。その時にはもうクリスはファルに利用されることを良しという人物になっていた。それを大人に成長したと言うのであろう。
ファルとの夜を経て大人になってからイマジナリーフレンドであるフォー二との会話がないのもそれを思わせる。フォー二に関してはイマジナリーフレンド以上の何かがありそうなものだがそれは今後の楽しみとしておく。

感情のコントロール

フォルテールを使用する魔力と呼ばれるものが本当に感情だとすればファルは演奏の為にずっとあえてクリスの感情を揺さぶるように立ち回っていたように捉えることができる。
そうなるとクリスのファルの告白前と後による演奏の違いも特筆せざるを得ない。本番直前、ファルから真実を聞く夜までの精神的に満たされていた演奏よりも本番の愛憎入り混じった、でもどこか達観して別の意味で満たされている感情での演奏の方が周りからの評価が良かった。
特に先生からこれまでにないほど感情を揺さぶられたという言葉をもらうのが非常に面白い。クリスが精神的に満たされている時には高評価止まりだった出来事があるから感情と音色の関係については考えさせられる。マイナスの感情の方が深みが出るのか、あるいはその答えをファルは知っていてそんな感情になるよう誘導したのか。
そうなると気になるのは一緒になってからもクリスが完全に満ち足りない程度にコントロールしているのだろうかという点だ。それともそんなことしなくてもクリスはもう永遠にあの時のような甘く美しい精神的な満たされ方はしないのだろうか。考察は尽きない。

更なるやりきれない陰鬱な読後感を求めて

アーシノとの関係はまだ不明瞭なところがある為にこれが明かされることはあるのであろうか。そしてあのアーシノの貴族主義的な思想はどこから来ているのか。疑問は尽きない。
そしてあの貴族との関係、エンドロールに書いてあった名前で旧校舎にいた子の恐らく父親であろうことが推測できるけどそれがファルにどう関わっていたのか。そして貴族同士ということでアーシノとも関係があったのか。

そういったところでまだまだ気になるところがある為次は旧校舎の子のルートへ行く。そしてちゃんと全部の話を知った際にはきちんと書き綴りたいところである。
今のところ圧倒的に陰鬱で良い意味で最高に読後感が最悪だ。こういったやりきれない気持ち悪さが大好きなので本当にこのゲームの続きが楽しみである。

取り急ぎ、ファルとの話は非常に面白かった。伏線と展開の転がり方、なによりもファルがとても好みの女であった。自分を悪と思わない、目的成就の為であれば手段も倫理も問わない。でも弱い。自分を利用されなければ他者を利用することもできない弱者であった。遥か遠くにある幸せを掴む為目先の不幸を浴び続ける。"幸せ"になりたいというその言葉の軽さ通りの軽薄な人間関係と人間性。そういった弱者なりの足掻き、弱き者ならではの儚さ、そして自分と他人を傷付け続けた上でこそ成り立つ彼女だけの幸せの形はあまりに庇護欲を掻き立てる性癖の塊であった。
色々と不明瞭なところもあればまだ情報の整理や理解が追いついていない部分はあるが私は見た瞬間、衝動的に得た感情を重視するタイプなので今の感想はこれで良い。清書だとか統括は全ての話を見てからすることとする。
そのため、ここはとりとめのない感想の羅列された荒れ地で良い。この瞬間瞬間の感想だけが今は重要なのだから。

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