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【らき☆すた】のギャルゲーで百合の片割れにキレられながらも割り込んだ話ー小早川ゆたかルートー

【らき☆すた〜陵桜学園 桜藤祭〜】これはらき☆すたの恋愛シミュレーションゲームである。このゲームがどんなものなのか、そもそもらきすたとはなんぞやというのは以下の記事にて話をしているのでそちらを見て頂きたい。また、そちらでは別ルートのお話もしている。

小早川ゆたかと岩崎みなみは親友

上がゆたかで下がみなみ

表題の通り、この2人は親友である。アニメや原作においてもよく2人でいる姿が見られるし、2次創作等調べた雰囲気でこの2人のカップリングが作品内においてビッグコンテンツであることが分かった。
この2人はこなた達の1つ下の同級生であり、受験の時に出会い友達になった。クールで口数少ないから怖いと思われがちであるみなみに対して別け隔てなく接し、その不器用だけど友達想いの優しい性格を理解している。
みなみはそんな不器用な自分を理解してくれるゆたかに感謝し、同時に体が弱く隙の多いゆたかを支える。互いが互いにない長所を持っており、それを尊重しあっている。ただ仲が良いだけでなく、お互いにリスペクトの心を持ち合いその精神の素晴らしさを理解している。公式でも言われている通り、この2人は親友だ。

そして今回攻略してきたのがその病弱な方、小早川ゆたかルートである。唆るぜ、これは。

俺の嫁よりも推しと推しが仲良くて尊いがスタンダードと化した現代のオタク世界でかようなものが出ようものなら確実に多量のお気持ち表明を生み出しなんなら炎上すらするかもしれない。
このゲームが出た際の世界の空気を知らないが確実に賛否両論、あるいは界隈内での地獄を生み出していたであろう想像は容易である。
別のらきすたギャルゲー記事で何度でも言ってきたがこのゲームはらきすたキャラクターとゲームオリジナル主人公俺くんとの恋愛が描かれる。その攻略対象に当然のようにこの2人も入っている。

私、限界ガチ恋オタクの視点としては非常に満足のいくストーリーであった。2人の仲を引き裂くことも俺くんが原因で2人が喧嘩したりだといった恋愛を盛り上げる為にキャラを落とすような展開がなかった。それはつまり俺くんとゆたか(みなみ)はもう1人から祝福されるような関係の2人になる。ということだ。これが非常に素晴らしい。
まあこのストーリーがまたちゃんとキャラを落とさないようにしているのが逆に壮絶で凄みを増している。双方のルートでちゃんと攻略しない方にお前にあの子を任せられるのかという問答が発生する。特にみなみ側のものすごいくそでか感情が凄まじい。それは下記にてじっくり特筆する。

これより本格的に下記にてゆたか攻略ルートの話を始めていくこととなる。ついてこれるか。

キレるみなみ、泣くゆたか。この世の地獄

これはみなみルートにおけるみなみにも言えることだが、ゆたかは不自然に俺くんと2人にならない。必然的に3人で会話したりすることが増える。ことゆたかルートにおいて、病弱なゆたかを守るべくみなみはよく一緒に行動している。
これが何を意味するか分かるか、ゆたかが俺くんと仲良くなっていく過程、その心境の移り変わりをみなみは一番近くで見ているということだ。
ゆたかだって1人で行動することはある、そういった際に起こる体調不良を俺くんが助ける。すると合流して、あるいは後日みなみはゆたかが俺くんに助けられたことを知る。そのことに対して感謝はするがそれはそれとして俺くんとゆたかをあまり仲良くさせたくないという想いも見せてくる。

このみなみがゆたかと俺くんを仲良くさせたがらないという感情は単純な独占欲だとか異性だからなどいう理由ではない。何かがあってゆたかに悲しい想いをしてほしくないから、不幸になってほしくないから。彼女の幸福を祈っての警戒心を見せてくる。こういったところでみなみの格を落とさないよう繊細に扱っているのは非常に好感の持てるところである。ちゃんと丁寧さが伺えるところは素晴らしいが逆にその気遣いが辛いと言いたくなる気持ちも分かる憎い演出となっている。

ゆたかと関係ないところでゆたかが泣いてみなみにキレられる

文化祭の準備にて俺くんとこなたがいざこざを起こし喧嘩のようなものをしてしまうシーンがある。ゆたかはこなたの従姉妹であり「お姉ちゃん」と呼び慕うほどに懐いている。
そして俺くんのことも優しくよく気にかけてくれる先輩ということで慕っている。そんな2人が喧嘩してしまったのでゆたかは悲しくて泣いてしまう。かわいいね。

俺くんがこなたとケンカしたせいで泣いちゃったシーン。これがみなみの逆鱗に触れた。

それに対してみなみは俺くんがゆたかを悲しませて不幸にしたということでもう鬼の首を取ってようにこちらを攻めてくる。好機を逃すなと言わんばかりに俺くんに今後ゆたかとの接触をやめるよう促す。

極論ではあるがみなみの言っていることは正しく、言いがかりではない。
これも正論。正論すぎて特に言い返すこともない。感情論ではなく結果で語るロジカルな女。
確かに俺が悪いよ的なニュアンスの言葉に対する返しの刃。罪を償うことではなく今後近づかないでと要求しているのが本気で嫌われてるんだな感が伝わり胸がぽかぽかと熱くなる。

ゆたかはそんなみなみの厳しい態度が自分を心配してくれている優しさから来ているものだと理解している。でもそれはそれとしてやっぱり俺くんのことは気になるのでどちらも譲ることができない。

ゆたかの幸せを願っているからこそ語気が強くなる光のギス。百合の間に割り込みギスらせる悪鬼羅刹の所業。

その結果ゆたかは自分が悪いのだと言ってその場を収めようとする。それがみなみと俺くんにとって一番やり場のない感情を生むと理解することなく。俺くんのこともみなみのことも大事だからどちらにも傾けず、俺くんにこなただけでなくみなみとまで喧嘩してほしくないという想いからきた苦肉の策なのである。
この健気さ、俺が悪かったと言わざる得なくさせる弱々しさ、これは間違いなくゆたかの持つ圧倒的な力だ。そしてその場は収まるが、この後みなみと2人きりでこの因果に決着をつける時がくる。
世が世ならみなみには勝てない、だがこれは平成のギャルゲー。勝ち方というものをお見せしよう。

ゆたかが俺くんのことを好きだと分かっているから

そんなわけでゆたかのいないところで俺くんと2人で話したいというみなみとの一騎打ちが始まる。

こういう面と向かって嫌いだと言ってくるような女の攻略ルートがちゃんと用意されているのがいっちゃん脳にくる。こういうのが必要なわけ。

この時点でみなみはゆたかが俺くんのことが好きだと分かった上で話を仕掛けてくる
ゆたかの想いを尊重したいから俺くんが大丈夫な人間かどうか見定めるべく対話はする。だがもしそれでゆたかを不幸にする可能性があるのであれば自分が悪になろうと2人の間は引き裂く。それがゆたかの幸せになる、あるいは不幸にしない手段だと信じ、そういう黄金の覚悟を持ってやってくる。

親友だからこそ嫌われてもいいという覚悟で立ち向かってくる美しいシーン。ギャルゲーでなければこんなみなみをお目にはかかれないだろう。神に感謝。

内容としてはゆたかのことをどう思っているのかと。それに対して好きだと答えるとじゃあその想いは永遠かと続ける。それは分からないが好きで居続けるよう努力するだのなんだのといった問答を行う。しどろもどろではあるが真摯に、本気でゆたかのことを想う俺くんの心意気をみなみは感じとる。
みなみは俺くんならゆたかを不幸にはしないだろうと、そしてなによりもゆたかの想いを尊重して俺くんにゆたかをよろしくと伝える。

親友公認の称号を手に入れるシーン。この重みが分かるか。

そして泣く。この涙がどのような感情からくるものなのか。それは己の信じるものによって解釈が別れるだろう。

勝ちの喜びに酔いしれ右手を高く突き上げたがあまりにもその拳は"重"すぎた

ゆたかを取られたのが悲しいと解釈する者もいればあるいはゆたかの想いが成就することを喜んだ涙であると。様々な解釈が可能となる。
私の解釈は自分の力不足が悔やんでいるのだからだと考える。なぜ自分ではゆたかにとっての俺くんになれなかったのかと。そんな己の無力を噛みしめる気持ちとゆたかの幸せを願う心がぶつかりあいこうして感極まってしまったのであろう。

ちなみにみなみルートにおいてもみなみはなぜか涙が止まらなくなる展開がある。これを見てからのそこはあまりにも力のなんたるかだけが凝縮されている。
これはゆたかルートにとって必要なシーンであるだけでなく、みなみルートにおいても必要な展開である。覚えておくと後々あなたの心を救済することとなる。

衝撃のラスト、愛と解釈違いの告白シーン

みなみとのやり取りを終え、いよいよ俺くんはゆたかと2人で正式に話すことになる。あとはいよいよ告白を残すのみ。
小見出しにもした通り、この告白シーンは個人的に圧倒的な困惑と衝撃を与えるラストが待っている。それは順を追って説明するがそれは私にこれはどうなんだという大きな悩みを残した。この展開をどういう心境で受け入れられるかがゆたかルート最大の解釈ポイントになる。

告白の流れなのだが、ゆたかがリードを取って俺くんに告白させようと誘導する。もう会話の流れとしては両思いだという確信を持った上で自分は好きだよと伝えてくる。

開幕から聞いてくださいとお願い式に言い換えてくる甘えパワーをフルスロットルしてくるロケットスタート

普段はあんなにも愛くるしい小動物のようなのにいざって時に圧倒的恋愛強者ムーヴをかましてギャップを生み出す衝撃は計り知れない。
これに対して俺くんはそれが自分のことだと察して俺もゆたかのことがもにょもにょとこちらも察してくれと言わんばかりの返答をする。

その返しがこれ。あくまでも向こうに言わせたいし自分から深くは切り込まないスタイル。あまりに切れ味の紫ゲージが長すぎる。
あざとさを駆る"力"。強き力は強き者に宿る。
だめだってさ。

迸る妹属性を駆使してなんとワガママさすら武器にする。別にそもそも好きだけどこんな仕草をかまされては恋しさとあざとさと心苦しさとで絶対にこの生物を幸せにしなくてはならないという義務感すら湧いてくる。

さてここからが前述した最大の問題シーンだ。覚悟はいいか。

「お兄ちゃんって……呼んでもいいですか?」

お兄ちゃん、お兄ちゃんとな。大好きという恋愛感情とお兄ちゃんと呼びたい気持ちというのは矛盾していないか? 兄だぞ、兄。
確かに妹キャラなのは分かる、それにお兄ちゃんと呼ばせないは嘘。それも分かる。それを愛の告白の直後に持ってくるのかと。
それがあるいは先輩→お兄ちゃん→大好きな人、という変換を辿るのであれば分かる。この感情はいつも見守って助けてくれる兄のような人だと思っていたが自身の本心としてはもっと深い部分の好きを持っていたと。それであれば感情推移としても右肩上がりかつお兄ちゃんと呼ばせるのにも違和感がない。

何を熱くなっているのだと思うかも知れない。酒や食い物を頭からぶっかけられようがつばを吐きかけられようが大抵のことは笑って見過ごしてやる。だが恋愛感情を蔑ろにするのは許せない。
お兄ちゃん呼びがゆたかにとって最大の愛情表現なのかも知れない。だがそうしたらこなたのことをお姉ちゃんと呼んで慕っているのは何なのだ。そこにも恋愛感情があるのか? 否。あるはずもない。それはゆたかルートを攻略してきた俺には分かる、いや俺にしか理解らない。
そうなってくるとじゃあゆたかにとって俺ってなんだという思考で脳が支配される。大好きという言葉の重みが揺らぐのだ。本来この言葉の持つ力というものは計り知れず、脳がシェイクされるいわばジョーカーだ。その言葉に対してどういう意味合いだと考えさせることは威力を削ぎ落とす行為に他ならない。
そもそもがゆたかにとっての「お姉ちゃん」像というものはこなたから読み取ることができる。だがそれと「お兄ちゃん」像というものは全くの別物だし、彼女のお兄ちゃん像がなにかを知る術は作中において存在しない。
甘えたいのか守ってもらいたいのかそれとも別の感情があるのか。その答えは付き合ってからのゆたかとの対話で見つけるしかないのだがこのルートはここでエンディングを迎える。

これが良くも悪くも圧倒的に後を引く。確実にその言葉の使い方、言動からそこにあるのは恋愛感情だということは分かる。それはそれとしてゆたかのお兄ちゃん呼びは果てしなく脳に染み渡り肉体を溶かすに至ったので結果としてはプラスである。
なにより俺はゆたかとその想いを伝え合い、共有したのだ。その領域に一分の揺らぎも迷いもない。俺のことを喜ばせてくれる為にお兄ちゃんって呼んでくれたのもあるんだよね。俺は、俺だけは理解ってる。

みなみルート含めると2度美味しく楽しめるという強み

ものすごく良いストーリーだったのだがあまりにも最後が衝撃的すぎてそれまでが揺らぐ。これはだいぶ攻めに出たなと。だがだからこそ一人一人の世界線での俺くんの解釈が別れてこれはこれで考察が捗って面白い演出だなとは感じた。

ゆたかにはもう1つの魅力がある、それはみなみルートにてまだ出番があるということだ。そちらにおいてもこちらと同様にみなみと俺くんの関係をゆたかが問い詰める展開があったり、みなみがゆたかの幸福を願ったのと同様にゆたかもまた自分なりのやり方でみなみの幸福を願っている。
また、こちらのルートではナイフのような切れ味をもったみなみだが自分が当事者となったらどのような恋愛をするのかという点でも楽しむことができる。
この1粒で2度美味しいという点がこの2人の話の強みだ。個人的にはやはりこちらでキレるみなみを見たあとにみなみルートでのギャップに脳を溶かす流れには非常に強い麻薬を感じた。
詳しくはそちらの記事にて語っているのでぜひ読んでみてどちらのルートが好きか、お兄ちゃん呼びの真意がなんだという考察を聞かせてもらえると幸いである。

ここまで読んでくれたあなたには権利がある

ここまで読んで頂いたあなたには更なる高みを得る権利がある。そう、みなみルート攻略という圧倒的カタルシスを得る権利が、だ。
このルートにおける闘いの記憶を持ってそちらへ行くことであんなにキレてた女がこんなことになっているのかと感動することができる。なによりも本当にみなみはスペシャリテにかわいい。
ぜひ下の記事からその力の火力を味わって頂きたい。こいよ、"こちら側"に。



過去記事。つかさルートの話。ノンストップで曇らせたっぷり。つかさなのに、つかさだからこそ。


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