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サイケアルバム探訪④ Ladies W.C./Ladies W.C.

アルバムについて

1969年発売されたというベネズエラの4人組バンドによる唯一作。
かなりマイナーなバンドで、当然情報も少ないので私が敬愛する「サイケデリック漂流記」というブログから一部情報を参考にさせてもらった。
なんでも、バンドの中心人物はアメリカから南米に渡ってきたStephen Scottという人物らしく、実際今作の作風には南米的なエッセンスは薄く、かなりアメリカのガレージサイケに近い内容になっている。

毎度毎度、このような当時アルバムを1枚だけ出して解散したようなマイナーなバンドをいくつも発掘してきたShadoks Musicは凄いと言わざるを得ない。

曲ごとの感想

01. People

ドラムがドカドカと叩き、ギターがジャーンと鳴らされて曲が始まる…この上なく王道でかっこいい1曲目。リフは王道かつキャッチーだし、Bメロの緩急のつけ方やワウギターのアレンジなどにお洒落さもあり、この手のバンドにしてはかなりわくわくさせられるスタート。

02. I Can't See Straight

アップテンポでとても軽快な曲。けたたましく鳴るハーモニカがブルースロックらしさもありかっこいい。ファズのギターによるフレーズも良い。アルバム前半らしくテンションが高くて好きな曲。

03. To Walk On Water

前曲が終わるとともに海にダイブするようなSEが入って始まる。
さっきまでの元気さはどこへやら、静かに聴かせるバラード曲。哀愁感じるハーモニカがこれまた良い。正に海を漂っているようなメロウなナンバーだ。

04. Heaven's Coming Up

これまたイントロからハーモニカが特徴的。
2曲目よりも更にブルース色の濃いナンバーとなっており、歌部分はほとんどなくスローテンポでしっかりとそれぞれの楽器の演奏を聴かせてくれる。あまりの泥臭さに、アメリカのバンドだと言われても信じてしまうレベルだ。

05. And Everywhere I See The Shadow Of That Life

音が歪んだ赤ん坊の泣き声と共に始まる。
今度は非常にポップな曲で、綺麗目なギターの音が爽やかだと思うと間奏ではファズを聴かせたハードなソロが押し寄せてくる。
最後には何故かオーケストラ演奏のコラージュが入って終わる。

06. Searching For A Meeting Place

ワウを使ったリフが印象的な曲。音こそ小さいが後ろで鳴っているファズが常にソロのような演奏をとっているのが面白い。あとは何気にベースのフレーズが好きな曲でもある。

07. Put That In Your Pipe And Smoke It

今作の中ではテンポが速めで疾走感がある曲。曲のうちほとんどが歌がなく、メンバーの演奏を楽しめるわけだが演奏力の高さと迫力に圧倒されるばかり。

08. The Time Of Hope Is Gone

バラード曲。マイナー調で渋みのある雰囲気。
アウトロで入る語りにちょっぴりサイケを感じる。

09. W.C. Blues

かなり王道な3コードによるブルースのセッションナンバー。
自信のバンド名を冠する所からも、ライブではご挨拶代わりにこれを1曲目に演奏していたりしていたのだろうか。

10. I'm Gonna Be

速いテンポでアルバムを締めくくるナンバー。
「I'm Gonna Be~」とタイトルをリフレインするのが印象的だが、こちらもどちらかというと演奏がメインの曲のように感じる。
どちらも速めのテンポということもあり、7曲目の「Put That In Your Pipe And Smoke It」と印象がダブる。

演奏が終わると観客の歓声が聞こえ、そこからは今までアルバムの繋ぎに登場したサウンドコラージュがエンドロールが如く再登場して最後にトイレの流す音で終わる…と無理やりコンセプト感出しているのが面白い。

まとめ

ベネズエラ発のバンドということだが、そこまでワールドミュージックが入り混じったどぎつい感じはなく、普通にアメリカのブルースやガレージ系のロックとしてつるっと聴けてしまう聴きやすさがあった。
また、メンバー各人の演奏技術も非常に高く、特に「I Can't See Straight」に始まるアップテンポな曲や、「W.C. Blues」などで見られる即興的な演奏ではそれが顕著に感じられる。どの曲でもドラムはフィルを入れまくるしファズはテクニカルだしでかなり臨場感がある。
この手のアルバム1枚で終わった当時のサイケバンドはアマチュア上がりで演奏が下手だったりする場合も多いが(サイケの場合はこの下手さも良さになるので悪口ではない)、ここまで本格的で、演奏力があると普通に迫力があって聴きごたえがある。

また、この時期のバンドらしく曲の合間にSEを入れるなどサイケ風の演出も時代の流行りを感じるし、とりあえず入れたような強引さがあって面白い。
とはいえ、合間にSEがはさまるおかげでユニークでもあるし、シームレスに曲が繋がっているようで曲自体が短いこともあってこれまた聴きやすい。
10曲と曲数も少ないのでかなりコンパクトに聴ける。

サイケ感はやや薄いものの、かなり完成度が高いのでもっと評価されてほしいアルバムだが、微妙に入手難易度が高い事とサブスクにないせいで薦めにくいのが難点…。ガレージサイケの中でもかなり上位に入るのでは個人的に思う。

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