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MWU Writers in Residence
2023年9月27日 18:44
厚底ピザ作 しのぶが初めておばあちゃんの家に一人で長期滞在したのは、小学三年生のときだった。 父と母の離婚調停が思いの外長引き、母方の祖母が一人で住まう田舎へと預けられたのである。一口に田舎と言っても、コンビニが近くになく、やや都心部へのアクセスが悪い集合住宅地や、誰もが田舎と聞いて想像するような野畑や山の連なるのどかな土地などさまざまあるが、しのぶの祖母の邸宅は、まさに後者であった。 一帯
2023年9月28日 09:59
小紫作 ことの発端はアルバイト先で、「○○人とつく流行っている言葉知らない?」と聞かれたことだったと思う。三十も年上のおじさまというには品がありすぎる、いつも髪の毛が漆みたいに黒黒と人工的な光沢を放つ先輩だった。私はリサイクルショップに持ち込まれた古着の鑑定をするため、ルーペを蟻を観察する自由研究中の小学生男子のように一心に見ているときだったから「はあ」という気の抜けた声しか出なかった。「