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ハーフじゃないのよ

中学校の時に名前順で隣の席にちょいヤンキーの女の子がいた。その女の子とは全く仲も良くなく話す機会もなかったが、ある日授業中に「自分ってオランダとのハーフ?」と言われた。当時は今に比べて女の人と話すことに対して苦手意識あり、異性との会話がほとんどなかったので超絶に動揺しつつも、それを隠そうと「い、いや、違う……けど…」とちょっと女の子に慣れてますよ感を出したがその女の子は「ああ、そうなん」と言って会話が終わってしまった。10年くらい経った今でも、あの時の彼女が何を思ってそんなことを言ってきたのかわからない。別に僕はハーフの方みたいな綺麗な顔立ちもしていないし、オランダ人のような風もふかしてなかったと思う。この時のことを思い出すと本当に自分は会話が下手だと痛感する。ハーフじゃないにしてもそのあと気の利いた返しもできたはずだ。よし、10年前のオレとは違うのだ。今のオレでシュミレーションしてみよう。

「自分ってオランダとのハーフ?」「……いや、違うけど。そう言う風に見える?」「ううん、別に」「ああ、そう」おい!終わったじゃねかよ!全く成長してねえな!オレは!こうやって時が経った今冷静に考えていても、いい会話の広げ方がわからない。これが、渋谷をうろついているGUで一番細いスキニーを履いているイケイケな兄ちゃんだったらうまいことするのだろうか。

「自分ってオランダとのハーフなん?」「そんなことより、今からオレの家おいでよー!」「ううん、いかん。」「…………。」まあ、彼女の感じだったらこうなるだろうな。こうなってきたら僕が足りないのではなくて質問をしてきた彼女に問題があるのではないか。連絡先も何も知らないけど、会話ができるのかどうかを体験したい。

全く異性として好きでもなかった彼女のことをこんなに覚えているのは何故なんだろうか。多分、僕が成長するきっかけを与えてくれているのだろう。よし、とりあえずナンパでもしてみようかな。無理に決まっているだろう、ナンパなんて僕からすればハーフと聞かれた時以上に動揺してしまうに決まっているのだから。

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