「インナー問題」を考える 〜ファッションの最高の脇役を目指して〜
前回、前々回と、アンダーウェアブランドMUUGI(ムーギ)の立ち上げにあたり譲れなかった3つのコンセプトがうまれた背景についてお話ししています。
MUUGIの3つのコンセプトについてはこちら↓
ここまでお伝えしてきた2つの要件は、それぞれ一言でいえば「肌へのやさしさ」、「体へのやさしさ」を求めたものでした。
3つ目の要件は、「1枚で着ても、インナーとして着ても。スタイリングの良き脇役となるデザイン」。
こちらは文脈が全く変わり、ファッションです。
また個人的な話になりますが、私はファッションにかなりのお金をかけてきた人間です。中高が私服だったこともあり、ファッションは若い頃の自分の表現としてとても大切なものでした。中学校時代から自分で服を作ることもはじめ、大人になって多少はお金が自由に使えるようになると、その大部分を洋服に費やしてきました。洋服屋さんにたくさん通い、仲の良いスタッフの方といろいろな話をしました。
あるとき、試着しながらスタッフの方と話していたときのこと。
「この服、素敵ですけど、インナー難しいですよねぇ。どうしたらいいんですかね?」
「そうなんですよね、、、ベアトップとか着る感じですかね?それか見せブラとか?良いものをご提案できればいいんですけど・・・なかなかなくて。」
「インナー問題ってほんと難しいですよね」
それからひとしきりインナー問題について盛り上がりました。
下着には色々な要素の課題があります。素材、締め付け、体型補正、デザイン, etc。人によって、体型の悩みポイントも好むデザインも異なるのは当然ですが、それにしても解がない。。
「お客さんも皆さん下着ジプシーみたいですよ、何か良いの見つけたら教えてくださいね。」
素敵な洋服を販売しているお店の方や、ファッション好きな方たちのなかにも、下着ジプシー状態の人はたくさんいるのはなぜなのでしょうか。
高級で上質な下着・ランジェリーはたくさん売っています。でも、高級下着といったときに、それはランジェリー自身が個性を放って強く主張するような、「主役」となっているものが多いのではないか、と思いました。そういう下着も素敵だし、必要とされているのは確かです。でも、日々の暮らしでは洋服を着て生きている。服を「主役」と考え、服を着たときのことを中心に考えたインナーがもっとあってもいいのではないか、と思いました。かといって、素材やデザインを妥協したものも物足りない。脇役であるけれど、品質的にもファッション的にも妥協しない上質なインナーがほしい。
わたしがひとりのファッション好きとして欲しかったアンダーウェア。それは、「最高の脇役」として、ファッションの縁の下の力持ちになれるようなものでした。
そのためには、それ自体が美しく、スタイリッシュなデザインであることが大前提です。そして、服のスタイリングを下手に邪魔しないような配慮、具体的には響きにくい仕様や、装飾を抑えたミニマルなデザインにすること。服を着たときに体のラインがきれいに出るように、自然に整えてくれること。そして、これまでインナー選びが難しくて手を伸ばしづらかった服のスタイリングの一助になること。
会社員時代に、毎朝時間が無い中でコーディネートを考えるのが本当に大変でした。服を決めてから下着を決めないと、変に下着が響いたり透けたり胸元から見えたり脇から見えたり。あー違うと思ったら服と下着を脱いでやり直しです。服ごとにちょうど合う下着があっても、掛け算が無限大で覚えきれないし洗濯中だったりもするし。最悪の場合、下着キープで服を変えることになります。本当に大慌て。
毎朝毎朝悩む中で、このインナーはここがもっとこうなら出ないのに、とか、この服にはもっとこういうインナーがあれば相性がいいのに、など色々な掛け算シミュレーションがうまれていきました。それらをベースに、シンプルな構成で出来る限り幅広いファッションをカバーできるインナーのかたち、仕様はどのようなものかを時間をかけて考えていきました。
「ファッションの最高の脇役」でありたいという想いは、毎日のスタイリングに悩んでいた時間から生まれたのです。
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