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偉大な企業に共通する真実とは?:『ビジョナリーカンパニー』

偉大な企業に共通する特徴は何があると思いますか?
カリスマ的指導者?奇抜なアイディア?

どちらも違うとぶった斬るのは、下に紹介する本です。1994年に出版されたのですが、今なお経営学の名著と言われています。とても分厚い研究書なのですが、5分で読めるように要点と考察をまとめました。

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ビジョナリー・カンパニー 〜時代を超える生存の原則〜
ジェームズ・C・コリンズ / ジェリー・I・ポラス
[訳]山岡洋一
日経BP出版センター 1995.09
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ビジョナリー・カンパニーとは?

「ビジョナリーカンパニー」と聞いて、どのような企業を思い浮かべるでしょうか?

カリスマ的指導者、伝統を重んじる文化、業界トップ、真似できない商品やサービス、世間から賞賛させる活動をしている企業など、なんだかすごそうな企業を思い浮かべるでしょうか?
そもそも聞き馴染みのない単語なので、イメージが湧かないという方もいると思います。

この本では、卓越した企業の中でも突出している企業を「ビジョナリーカンパニー」と名付け、大量の資料分析と6年に渡る調査をもとに、ビジョナリーカンパニーに共通する特徴とビジョナリーカンパニーになるための諸条件を紹介しています。

ビジョナリーカンパニーの選び方
⒈ フォーチュン誌の企業ランキング
⒉ 有力企業のCEOへのアンケート
ビジョナリーカンパニーに選ばれた企業
P&G、アメリカン・エキスプレス、ジョンソン&ジョンソン、シティコープ(シティバング)、フォード、IBM、ソニー、ヒューレット・パッカード、ボーイング、ウォルト・ディズニー、ウォルマート、GE、フィリップス・モリス、メルク、3M、ノードストローム、マリオット、モトローラ
比較対象となった企業の特徴
⒈ 設立時期が似ている。
⒉ 設立当初の商品が似ている。
⒉ CEOのアンケート回答結果、ビジョナリーカンパニーだという回答が少ない。
⒊ ビジョナリーカンパニーと競合となるような優良企業である。


ビジョナリーカンパニーに共通する特徴

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ビジョナリーカンパニーの成り立ちと、その後の長い歴史を研究することで発見された特徴は以下のとおりです。

⒈ 創業者は「時を告げる人」ではなく「時計を設計する人」だった。
⒉ 長年変わらず、最も優先された基本理念が存在していた。
⒊ 基本理念以外は進歩のために変化し続けた。
⒋ 2と3が共存していた。

経営者には「時を告げる経営者」と「時計を設計する経営者」がいるといいます。時を告げる経営者とは、カリスマ指導者のことです。一方的に社員にミッションを与え、短期間で業績を上げる経営者などがそれに当てはまります。時計を設計する経営者とは、たとえ経営者が交代したとしても変わらず組織を前進させる仕組みをつくろうという考えを持った経営者のことを指します。

そしてこの本では、ビジョナリーカンパニーの創業者を含めた経営者は、後者の考え方の持ち主が多いことを指摘しています。

変わらず組織を前進させるものとは、「基本理念」と「進歩を促す(ことを大事にする考え方)」だといいます。変化しないものと変化を促すもの。一見、相反するようにも聞こえる2つですが、ビジョナリーカンパニーではこの2つが共存しています。

どのように共存しているのでしょうか?

ビジョナリーカンパニーを支える仕組み

この共存を、中国の陽と陰の考え方に例えています。白と黒が混ざり合って灰色になるのはなく、白は白、黒は黒のまま共存している様を引用しているのです。

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基本理念が大事だとか、変化し続けなければならないと聞いたら、2021年を生きるビジネスマンの多くは「当たり前じゃん!」と叫びたくなります。ただ、その当たり前が機能するような仕組みを作り上げている企業はどれほど存在するでしょうか?

その当たり前が機能するように仕組みを作り上げたこと、しかも、一貫性を持った仕組みになっていることがビジョナリーカンパニーたらしめる理由となっているのです。

具体的には、基本理念を維持するために、カルト的(とも思われるほど強力)な文化を浸透させ、その価値観に共感する社員から経営者を育成する仕組みなどが挙げられています。一方で、基本理念以外は変化させることを恐れません。基本理念を守る以外に社員は自主性を尊重され、既存の商品やサービスに固執せずに新たなものを生み出すことを奨励する仕組みなどがあることが多いと言います。

メインメッセージ

この本は、起業を志す人にも、経営者にも、一社員にも、以下の4つの概念を覚え実行することに意味があると伝えています。

⒈ 時を告げる預言者ではなく、時計をつくる設計者になれ。
⒉ 「ORの抑圧」ではなく「ANDの才能」を重視する(*)。
⒊ 基本理念を維持し、進歩を促す。
⒋ 一貫性を追求する。
※「ORの抑圧」とは、変化か安定か、慎重か大胆か、低コストか高品質かといった逆説的な考え方を受け入れず、一見矛盾する考え方は同時に追求できないとする理性的な見方。一方、「ANDの才能」とはさまざまな側面にあるものを同時に追求し自由にものごとを考える能力。


まとめ

今回は、卓越した企業の中でも突出している企業=ビジョナリーカンパニーとはどのような企業か、そしてビジョナリーカンパニーになるための諸条件を紹介しました。

1994年出版当初に比べ、今は企業のミッション・ビジョン・バリューが大事だという価値観がかなり浸透しているように思います。ですが、その基本理念が機能するかどうかは別の話。額に飾るためだけのミッション・ビジョン・バリューなのか、それとも本気で実現したいミッション・ビジョン・バリューなのかを判断するには、それらが機能する仕組みを整えているかどうかを見れば分かるのかも知れません。

そして、その仕組み化と基本理念に忠実だった企業がビジョナリーカンパニー

本を読んだ感想

2021年は50冊の本を読むことを目標にしています。
元旦から読み始めた最初の本が今回の「ビジョナリーカンパニー」でしたが、「カンパニー」だけではなく一個人の人生にも適用できるものが多いと感じました。

その感想を以下に書きました。個人にどのように適用できるか気になる方はぜひ読み進めていただけると嬉しいです。

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この本でいう「基本理念」が価値を発揮する範囲は、会社の内部だけだといいます。多くのビジョナリーカンパニーの理念が、世間からも高く評価されていることは事実ですが、必ずしもそうであるとは限りません。ビジョナリーカンパニーとして選ばれたフィリップ・モリスは世界最大のタバコメーカーで、自分たちの商品に誇りを持ち製造販売しています。でも、その考え方に反対する人もいる訳です。

大事なのは内部の構成社員がいかにその理念に熱狂しているか。そのために、基本理念を軸とした一貫性のある経営がされているか。です。そうでないと「熱狂」することはなく「そんな綺麗事言って…」とか「現場を分かっちゃいない」といった不満だけが助長されます。

これって、法人だけではなく個人にも当てはまるのではないか。

SNSなどの発信ツールがありふれ、十人十色の価値観に触れることが許された昨今、他人の価値観やライフスタイルを見て自分と比べてしまい、自分は間違っているのではないかと自信を無くしてしまうこともあると思います。

ですが、100人100通りある価値観の善し悪しや優劣は何を基準に判断すればいいのでしょうか。よく考えてみれば分かることですが、比較することは何も生み出しません。自分の価値観が価値を発揮するのは自分の中だけで十分であり、外部からの評価は不要です。

自分の中にあるものを大事に守り、育んでいくことで、いつかは共感してくれる仲間が集まるかも知れません。自分の中にあるものを矯正し偽ると、人は本当の自分に気づかないまま通り過ぎてしまいます。または、「偽った自分」に共感した仲間が集まってしまい、さらに自分を苦しめることになるでしょう。これでは、自分を表現し仲間を集める機会を自分から遠ざけていることに変わりありません。

基本理念(価値観)の「正しさ」ではなく、基本理念(価値観)を持ち続けているか、そして、基本理念の実現のために基本理念以外を柔軟に変化させながら進歩していくために、自分を律することができるか。

個人としては、上記のことを心にとめておきたいと思いました。noteでアウトプットすることで自分の価値観を再認識し、大事にしていければと思います。

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