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Googleが提唱した消費者の行動モデル「AISARE」:『デジタルマーケティング見るだけノート』

今まで知らなかったモノやサービスを知り、少しでも興味を持ったとしましょう。

次にあなたはどんな行動をしますか?

あなたが購入に至るまでにどのような道のりを辿るのかを突き止めるために、多くの学者や企業はさまざまな行動モデルを提唱してきました。

デジタルマーケティングノート
[監修]山浦直宏
宝島社 2020.07
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消費者行動モデルとは?

奇抜なアイディアで優れた商品を作ったとしても、必要としている人に届かなければ、消費者に「これ欲しい!」と思ってもらわなければ、欲しいと思っても簡単に購入できる販売ルートが整備されていなければ、消費者に商品を購入してもらうことはできません。

消費者行動モデルとは、消費者が商品を知ってから、実際に購入するまでの過程を枠組み化したものです。

消費者の行動には、規則性があるという前提です。

この枠組みを知ることで、何をすれば消費者に商品を購入してもらえるのかという戦略を立てる上で役に立ちます。

消費者の行動モデルは時代とともに変遷し、どんどん新しいモデルが提唱されてきました。

新聞やチラシが広告手段だった時代と、テレビCMなどのマス広告がメインだった時代と、テクノロジーが発達し誰しもが歩きながらスマホをスクロールしている今では、消費者の行動はかなり変容しているのです。


旧来の消費者行動モデルの例

【引用】THERMOS公式サイト(1910年代の広告)

1898年、アメリカでは「AID」という行動モデルが提唱されます。
1900年、最後に「Action」が加わり「AIDA」が提唱されます。
1924年、「Memory」が仲間入りし「AIDMA」が提唱されます。


【AID】→【AIDA】→【AIDMA】
A・・・Attention(注意)    [認知段階]「これ、なんだろう?」
 I ・・・Interest(興味・関心)[感情段階]「おもしろそうだな」
D・・・Desire(欲求)      [感情段階]「ほしくなってきた」
              +
M・・・Memory(記憶)     [感情段階]「買おうかな、どうしようかな」
A・・・Action(行動)      [行動段階]「買うぞ!買ったぞ!」
【旧来の消費者行動モデルの特徴】
消費者行動を、認知段階→感情段階→行動段階の大きく3段階に分かれていると考えた。

消費者はまず、広告を見ることで商品を知ります(Attention)。そして、広告をみた消費者は商品に興味を持ち(Interest)、欲しいと思うようになります(Desire)。最後に、商品を買うという行動を起こします(Action)。

ところが、お金がない、買う時間がない、在庫がない、購入する場所が近くにはないなどの制約があると、欲しいと思ってもすぐに購入できません(ネットがない時代は物理的な制約の影響は大きかったのでしょう)。

その場合、広告を見て、興味をもったり欲しいと思った感情を記憶だけにとどめておくという段階が追加されます。

これらの消費者行動モデルは、以降100年の間、基本的枠組みとして広告や販売戦略で使われます。


デジタル時代の消費者の行動モデルの例

テレビCMや新聞など一方的に提供される広告を受け取るだけの時代から、消費者の行動は大きく変容してきました。

興味のある商品は購入する前に検索します。使ってよかったと思える商品は、SNSで発信することもあるでしょう。消費者は押しの強い広告よりも、他の消費者のクチコミを信用します。

ネットが普及しテクノロジーが発達した今、消費者は「検索する」「シェアする」といった行動をとるようになりました。

このような状況をうけ、2004年、電通は「AISAS」という消費者行動モデルを提唱します。


【AISAS】
A・・・Attention(注意)    [認知段階]「これ、なんだろう?」
 I ・・・Interest(興味・関心)[感情段階]「おもしろそうだな」
S・・・Search(検索)     [行動段階]「調べてみよう!」
A・・・Action(行動)      [行動段階]「買うぞ!買ったぞ!」
S・・・Share(共有)    [行動段階]「これいい!みんなにも教えよう!」

旧来の行動モデルは、個人的な心理の変遷から購買という行動に至っているというコンセプトであるのに対して、AISASは、消費者が気になる商品について積極的に情報収集し(検索)、商品が気に入れば共有するといった(共有)、消費者の主体的な行動がコンセプトが盛り込まれています。

その他、商品を検索した後、比較(Comparision)、検討(Examination)するというコンセプトが「AISCEAS」や、商品を購入しようと店舗に訪れる前から消費者はすでに購入する意思を決めているというコンセプトの「ZMOT(Zero Moment of Truth)」といった行動モデルが次々を提唱されています。

その中で、この本で紹介している行動モデルは、押切孝雄著『グーグル・マーケティング!』(2008年 技術評論社)で提唱された「AISARE」です。


【AISARE】
A・・・Attention(注意)    [認知段階]「これ、なんだろう?」
 I ・・・Interest(興味・関心)[感情段階]「おもしろそうだな」
S・・・Search(検索)     [行動段階]「調べてみよう!」
A・・・Action(行動)      [行動段階]「買うぞ!買ったぞ!」
R・・・Repeat(リピート)   [行動段階]「次もこれにしよう!」
E・・・Evangelist(伝導者) [感情/行動段階]「みんなにも伝えたい!」
※「E」の段階については、筆者の考えです。

少し脱線しますが、「この商品を友人や知人に紹介したいと思いますか?」このようなアンケートに回答したことはあるでしょうか。これは、顧客ロイヤルティ、つまり、顧客のファン度合いを測るための設問であり、その指標をNPS「Net Promotor Score」と言います。

従来は、「あなたはこの商品にどれほど満足しましたか?」という設問で顧客満足度が測定されていました。ただ、最近では、顧客満足度と顧客が長期的にその商品を買い続けることには相関性がないという事実が判明してきたのです。

競合が多いほど、新規顧客を開拓するにはかなりのコストがかかります。開拓したと思いきやいつ離れていくか分からない不安定な顧客にリソースをかけなければいけないのでコスパも良くありません。

そこで、既存顧客にファンになってもらい、継続的に購入をしてもらったり、商品を第三者に紹介してもらおうという考え方が登場したのでしょう。

このような近年の動向の中、先ほど紹介した「AISARE」のような行動モデルが提唱されるのは必然なのかも知れません。商品を購入した顧客が「次もこれにしよう!」、さらに「あの子にも紹介しよう!」という気持ちになるというコンセプトはまさに顧客が商品のファンになっていく過程を表しているからです。

デジタル時代のマーケティングにおいて大事なこと

上記で紹介したような消費者の行動モデルは、新しいから正しい訳ではありません。業界やターゲットとなる顧客層、商品の特徴などによって、活用できる消費者行動モデルは異なります。高齢者がターゲットの場合と10代の若者をターゲットにした商品の広告の打ち出す方法はかなり違いそうであることは容易に想像できます。

さらに、今後のテクノロジーの発達によっても、消費者行動は大きく変わっていくでしょう。ホログラムが発達し、スマホのようにみんながそれを身につけるようになったらどうなるでしょうか。人工知能が発達し、人間がやる仕事が限定され自由に使える時間が増えると、人々はその時間をどのように使うようになるでしょうか。空飛ぶ車やドローンによる人間の移動が可能になったら、人間は何を求めるようになるのでしょうか。物理的に限りなく生きやすい世界になったら、人間は次に何を求めるようになるのでしょうか。

想像するだけでワクワクします。

このように、消費者がおかれている状況や環境が常に変化しているということを認識することも必要でしょう。


まとめ

紹介している本では、消費者行動モデルについて記載しているのは2ページしかありません。今回は本の内容に加え、筆者が調べた内容や考察を付け加えて紹介しています。

1900年代に初めて提唱され100年近く使用された消費者行動モデルは、テクノロジーをはじめとした消費者を取り巻く環境の変化により、近年大きく進化を遂げています。

変化する世の中で、人々にとって価値のあるモノが創られたら、それを届ける方法まで考えなくては、価値が半減してしまいます。いや、半減どころかその価値は存在しないものになってしまうでしょう。

マーケティングを成功させるカギを握るのは、いかにファンを増やすかなのかも知れません。そして、ファンを増やしたことが、いかに商品の売り上げに結びついているのかを分析する指標を正しく設定することが事業を前進させるポイントなのではないかと思います。


読んでの感想

調べる中で、マーケティングに関わるさまざまな単語と初めましての挨拶を交わしました。

仕事をしている中で、KPIをどう立てればいいんだろうと、頭を悩ませたことが、先人の知恵で解決できるかも知れないという希望も見えてきました。

枠組みに囚われることは避けたいですが、思考を整理する上で枠組みを知っていることは大事であることと改めて実感しました。また、個人ではなくチームで何かを成し遂げるための仕組みをつくるには、検証された枠組みの力を借りることも有益だと感じました。

今回もっと知りたいと思った指標は、NPSとLTV(Life Time Value)です。LTVは、1顧客が生涯でどれくらい利益を得られるのかを示す指標だそうです。通常「購入単価×購入頻度×継続期間」で算出されます。

私の関わっているサービスは、教育事業です。受講生には、受講期間中に最高の学習体験を得て卒業して欲しいと思っています。なので、1人の受講生が受講期間中にどれくらいの利益を得たのかを、可視化したいとも思うのです。

ただ、人材や教育業界の対個人向けのサービスの顧客ロイヤルティを測るのは難しいことです。でも、だからこそ是非とも可視化することに挑戦したい数値でもあります。

自分の無知と戦いつつ、自分が提供している価値とは何か、何をもって価値を提供できたとするかを考えていこうと思います。

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