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琉ラボ 1st Anniversary 参加の記録

 (本当は昔からそうなんだけど)今はキャリアの選択肢がたくさんある。私自身は現在、キャリア開発にまつわる教員をしているため、学生にはできるだけ多くの選択肢を見てほしいし、見てもらう機会を作りたい。そして、学生のうちにできることをたくさん経験してもらいたい。

 実は今、文部科学省はアントレプレナーシップ(起業家精神)教育を推奨している。キャリア界隈の言葉で言い換えると、キャリア自律とかそんな感じだろうか。もうとっくに、組織が何とかしてくれる時代は終わったのである。


 今年2月に高知に帰省して、株式会社アルファドライブ高知のみなさんとご一緒する機会が増えた。そのつながりで、本家・アルファドライブのCEOである麻生要一さんともお知り合いになることができた。ご自身もたくさん起業されているし、起業したい人たちを支えてもいる方だ。

 私自身、これまで会社員、フリーランス、非常勤などいろいろな働き方を経験してきた。しかし、アントレプレナー(起業家)にはなったことがない。そんな私ではあるが、弊学でもキャリア開発の一環としてアントレプレナー教育を取り入れたい、という話をしたところ、琉球大学で実施している「琉ラボ」と、7月末にその1周年記念イベントがあることを教えていただいた。


 沖縄へは何度も足を運んでいるが、琉球大学に行くのは初めてだった。雨の降る中、てだこ浦西駅からタクシーに乗ってたどり着いたところ、すでにイベントは始まっていた。最初のプログラムは学生の活動紹介と起業家認定式。

認定者に贈られたバッヂがかわいい。

 ただ起業するだけでなく、自身の研究領域と社会課題解決にかかわる起業をされている方々ばかりだった。学生といっても年代はさまざまで、学士からストレートで修士課程へ進んだ方もいれば、社会人大学院生もいた。驚いたのは、琉球大学の教員も数名、起業していたこと。これはただただ、羨ましかった(弊学は副業禁止……)。琉大発の起業家の皆さんはこちら。どんなことをされているのか、ぜひ見てほしい。


 そしていよいよ麻生さんのターン。麻生さんのお話をQ&A形式でまとめてみる。

Q. スタートアップとは?
A. 革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を生み出しながら急成長を遂げる新興企業のこと。

Q. スタートアップの現場で、求められるこれからの人材とは?
A. スタートアップにはステージが存在する。ステージごとに求められる人材は異なる。

 研究とスタートアップは似ている、というお話が印象的だった。私は起業はしたことがないが、研究はしているので、イメージしやすかったのだ。

 研究は、自分の探求したいテーマに問いを立て、自分なりの答えを見つける動きだ。答えなど誰も見たことがないし、データを取って分析しても、思い通りの結果が出るとは限らない(ただし、思わぬ結果が出た方が面白いことの方が多い)。だから、なるべく「何か」の結果が出るように、先行研究を読み漁り、仮説の精度を上げて行くのだ。

 麻生さんのお話により、大学における学びと起業というのは、とても相性が良いということが鮮明に理解できた。また起業というチャレンジは、大学時代に経験しておくことが良いように思う。

 たとえば、先日見事に上場を果たしたタイミーの小川嶺さん。過去に私の指導教員の研究室で一度お会いしたのだが、そのときはまだ大学生で、タイミーを立ち上げたばかりだった。聞けば、ビジネスコンテストで優勝した企画をひっさげて一度起業したものの、うまくいかずに廃業。タイミーはその次のチャレンジだったとのこと。

 これは私がフリーランスになったときの心情だが、「所属がある」ということは思いのほか心を強くする。ぶっちゃけ、所属(心の安定)がほしくて、博士課程への進学を決意したくらいだ(それで教員になっちゃうのだから、人生は本当にどうなるかわからない)。
 たとえ起業して失敗したとしても、「大学生」という肩書は良い意味での言い訳に使える。自分の思う存分、振り返る時間や再起に向かって諸々のことを整えていく時間を持つことができる。大学生はまだ失うものが少ない。だからどんどん、チャレンジしてほしい。なんだったら、私が起業したいくらいなんだが……。


 つづいては、パネル・セッション。

 ここで印象的だったのは、琉球大学の西田学長の琉ラボに対する熱量だった。最初にこの場所についての思いを語られたのだが、もっともっと、語りたいことがあったご様子。
 この日の会場となった『STARTUP LAB RYUDAI[琉ラボ]』は、以前は縦長の授業用の教室だった。そこを大改修して、人が集うための場づくりをしたのだそうだ。他学部からも「こんな場所を作りたい」と相談が来るようになり、現在、工学部が「琉ラボTECH」を作りたいと具体的に考えているようだった。

入口を入ってすぐに「琉ラボ」のボード。
これは沖縄の古民家の入口にあるヒンプンをイメージしたとのこと。
入口を入って左側はカウンターキッチンがある。
入口を入って右側はテーブル席とカウチ席。
麻生さんの絵も飾ってある。

 話が弾むような、アイデアが湧いてくるような場所をつくることの大切さを、私はPoints of Youから教わった。Points of Youの場合、殺風景な会議室では絶対にワークショップを行わない。美しいしつらえの内装やインテリア、自然に触れやすい場所を選ぶ。これは、五感を刺激し、その人なりの感性を最大限に引き出すための工夫だと私は思う。


 そして最後はワールドカフェ。机をとっぱらい、えんたくんを使って参加者同士の距離を縮めていく。テーマは「あなたにとって楽しくチャレンジできる共創の場とは?」。

 3ラウンドを終え、私たちのチームはこんな感じに仕上がった。後から話を聞くと、西田学長がワールドカフェで話されている内容に興味を持って、最後までいらっしゃったとのこと。琉ラボスタッフの皆さんも、「楽しそうだったから自分も入りたかった~!」とおっしゃっていた。いや、本当に楽しかった!!!


 個人的に、話を聞くにとどまらず、まずは行ってみる、体験してみる、ということを大切にしている。今回も、琉球大学まで足を運んで良かった。実は会場には、弊学の医学部の先生方もいらしており、麻生さんにお誘いいただいて一緒に懇親会まで参加させていただいた。そこで、医学部の先生方ともこれからの弊学のアントレプレナーシップ教育についてお話ができたことも、とてもよかった。

 麻生さん、そして琉ラボの皆さん、素晴らしい機会をありがとうございました。弊学でも取り入れられるよう、一歩ずつやってみます。


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