ワーケーションについて考える
昨夜は越境ラボ@Zoomでした。越境ラボとは、法政大学大学院 政策創造研究科 石山恒貴教授(私の指導教員です)が主催する学びの場で、1-3ヶ月に1回、開催されています。毎回テーマが決まっていて、こんな感じで進行されます。今回は約50名の参加者でした。
今回は初Zoomということもあり、OST形式はなしでランダムにブレークアウトルームに移動しました。
1) 今日のテーマ:ワーケーション
今日のテーマは「ワーケーション」でした。まだまだ世の中に出てきたばかりの、しかしホットなキーワード「ワーケーション」。今日の解説は石山先生でした。ワーケーションの分類はこちら(提示資料ではなく、私がメモしたものを起こし直したものです)。
紹介された事例は以下のとおり。「いつでもどこでも仕事ができる」のは光明なのか単なる仕事中毒なのか?という問いも投げかけられました。
2) 解説中に出たチャットでの疑問
Zoomが面白いのは、解説中に参加者がチャットで疑問をつぶやけること。こんな疑問が出ていました。
3) ブレークアウトルームでの話題
ブレークアウトルームは約40分間、4名(+私と一緒に参加していた夫の5名)でのディスカッション。Zoomらしく、奈良、静岡、広島、埼玉を結んだメンバーとなりました。話題としては大きく3つ。1つ目はバイオリズムに合わせて暮らすこと。2つ目はワクワクする場所について。3つ目は、仕事とプライベートの往還についてです。
最初に出たのは、バイオリズム・ベースで暮らすことについて。1日のバイオリズムという意味では、私の例で言うと、朝が集中できるので「ワーク」に最適なのですが、午後は集中力が切れやすいので「バケーション」に切り替える、という感じです。他にも、季節的なバイオリズムというのもあります。農業の例で言えば、収穫の時期は田舎で作業を手伝うとか、私の例で言えば、季節による仕事の繁忙期と閑散期などがそれにあたるのかなと思います。
また、ワーケーションには日常と非日常というキーワードがありますが、やはり、ワクワクする場所にいることも大切なのでは、という話題になりました。私は海や川などの水辺が好きなのですが、人によっては雪山だったり、神保町に住んですぐにお気に入りのカレー屋さんに行けることだったり、ワクワクする場所はさまざまでした。いずれにしても、そういうワクワクする場所の近くで仕事をして、疲れたり、頭がいっぱいになったり、行き詰まったりしたらすぐに「バケーション」に切り替えられるというのも、ワーケーションの魅力なのかもしれません。面白かったのは、そうなると楽しみ方や”自分の楽しいこと”を知っていないとワーケーションは難しいのでは?という意見です。楽しみ方を知っている人にとっては、それが「バケーション」というよりは生活の一部のようになじんだものになる、しかもワクワクもしている、という状態なのではないかという考察です。こうしたディスカッションを振り返っても、私たちのグループはワーケーションの主体を個人と見立てていたことがわかります。
昔から、お風呂に入っているときにひらめくという話をよく聞きます。楽しいアクティビティをしているとき、リラックスしている時など、緊張がほぐれた状態になることで新しいアイデアが生まれやすいのかもしれません。1日の中で交感神経と副交感神経を行ったり来たりする時間があっても良いのではないか、つまり、1日の中で仕事とプライベートが行ったり来たりする時間があっても良いのではないか、そんな話にもなりました。
4) ブレークアウトルーム+チャットのシェア
あっという間にブレークアウトルームの討議時間は終わり、全体の場に戻りました。ここからは8グループのシェアの時間です。グレーアウトされた引用部分が、シェア+チャットで出てきた意見です。グループごとのまとめではなく、私が説明しやすいように全意見をカテゴリ分けして紹介していきます。
まずは、考えやすいところから見てみましょう。
「ワーケーションって何だろう?」を考えるにあたり、具体例は役に立ちます。文豪の例は、まさしくワーケーションっぽいですね。神山町では、川に足を浸しながらWi-Fi環境を使ってPC作業ができると聞いたことがあります。自然環境+仕事ができるICT環境が整っているというのは、東京で働く人にとってベストなワーケーション環境なのかもしれません。
ですが、「ワーケーションって都会に住む人のものなの?」という疑問も湧いてきます。地方に住む人には「ワーケーション」はないのか!?と。
都会/地方の視点で言えば、「ワーケーション」という概念は、東京近辺の大都会から生まれた発想なのだろうと思います。地方はどちらかというと、少なくとも現段階では「都会から来る人を受け入れる側」としての戦略に着眼していることが多そうです。
一方で、メリットを享受する対象として、組織/地方/個人(もしかしたら大都会も何らかのメリットがある?)という視点では、さまざまに意見が出たようです。まずは組織の視点から。
組織の立場からすると、こういう意見や疑問は当然出るのだろうなと思います。個人的には、そろそろ組織が社員のメリットを軸に動くような社会になっても良いのでは、と思ってしまいますが、まだまだ「それって会社にとってどう良いの?」から議論がスタートしがちですね。
また、関わる仕事や仕事のやり方によって、ワーケーションができるかどうかもあるでしょう。
日本はメンバーシップ型の働き方が多いので、職域開発はさまざまな文脈で議題となっています。仕事を切り分け、自分の仕事の責任範囲が明確であれば、離れていても成果を出せる仕事はもっとあると思います。企業と契約して働くフリーランスの働き方が良い例です。
ほかにも、企業でワーケーションを取り入れるアイデアなども出されていました。こうしたアイデアは、これだけで時間を取ってブレストしたくなりますね。
さらにはこんな意見も…。
ぜひ、ポジティブな側面からの検証をお願いしたいものです。間違っても、オンライン会議における目線と業績の関係など、調べないでください…。
でも、結局のところ…
ワーケーションに限らず、多くの組織は従業員を信頼しなさすぎだと思います。リモートワークひとつとっても、部下が働いてなかったらとか、そんなことが先行して議論されるようでは、働いている方もつまらないでしょう。ベースは信頼1000%、なんて従業員を安心させる企業のあり方なのでしょう。
ワーケーションには個人の視点が重要なのでは、という意見も多数ありました。この意見を契機に、個人の文脈について紹介していきたいと思います。
少なくとも、私は会社員時代は、楽しいこともありましたし、勉強もたくさんさせていただきましたが、全体としては苦しかったです。今回の越境ラボで参加者の語りの中に、企業で働いていて「消耗する感じ」という言葉が出てきたのですが、私もまさに、そうした感覚を持ちながら働いていました。
個人的にも、企業・組織の論理でワーケーションを語ろうとすると、無理が出そうな気がします。なので、ワーケーションが個人にもたらすものは何なのか、をまずは考えてみたいところです。
今、リモートワークに移行した方たちは、もしかしたらすでに「マンネリやしがらみの解放」を体験しているかもしれません。とても細かいことですが、例えば会議のとき、資料を準備して、早めに会議室に行って電気をつけて、下座に座って上司を待つ…とか、上司が退室するのを待って、会議室の電気を消して、ちょっと時間が押してしまったら後に会議室を使う人に謝って…とか、少なくともそうした行動は不要となりました。こうした細かい積み重ねのストレスから解放される良さが、リモートにはあります。こんな意見も出ていました。
良いことばかりではありません。個人に求められるものもあります。
ON/OFFがうまくできないのって、私は教育(学校教育だけでなく、企業内教育や日本にはびこる同調圧力なども含めて広義の教育)の問題だと思っています。なので、今できなくてもこれからいくらでもできるようになりますから、まずはやってみたらと言いたいところです。多くのことは、やってみることで学ぶことができます。
ここまでの意見を参考にしながら、改めて「ワーケーションの定義」にまつわる意見に触れてみたいと思います。まとめてみるとやはり、個人が主体と捉えているように感じます。
また、「ワーケーション」を定義する際の混乱ポイントとしては、「バケーション」の捉え方が人それぞれに違いすぎる、ということなのかもしれません。越境ラボ終了後のZoom懇親会でも、ワーケーションの文脈における「バケーション」(ON/OFFを切り替えられるようなワクワクする場所)であれば、昼間から飲める居酒屋の雰囲気がそばにあることで十分だ、という話が出ていました。
でも、きっと多くの人が「ワーケーション」に期待をしているはず。
初めてのオンライン越境ラボ。しかもコロナ禍。さらにテーマが「ワーケーション」。今だからこそ共有できる意見もありました。
ここから日本でどう「ワーケーション」が発展していくのか、楽しみです。
5) ワーケーションがしたい!
最後に、私の感想です。フリーランスになって2年半。地元・高知に仕事をつくり、2-3ヶ月に1回ペースで帰省しています。私にとってはワクワクする大好きな場所だし、これはこれでワーケーションなのかもしれませんが、正直、短いスパンで行ったり来たりするのはしんどいです。ぜひ、長期でワーケーションがしたい。
コロナ禍で、すでに私たち夫婦は3週間のフル・リモートワークを経験しました。2月下旬であれば「その会議、オンラインで…」とは言いづらかったのが、環境の後押しがあり、この3週間で堂々と「オンラインに変更してください」と言えるようになりました。そして問題なくオンラインで何とかなっています。大学で非常勤講師もしていますが、これまでリモートワークなどあり得ないと考えられていた学校でさえ、今はそれを余儀なくされています。あとは渡航さえ許せば、もう、私を阻むものはありません。
ワーケーションの定義はどうであれ、私は夏の水辺で「仕事とリラックスの往還」を満喫したい!涼しい朝のうちに仕事をして、疲れたら泳ぎ、木陰で本を読み、オンライン会議があればビーチや川辺から参加する生活。新婚旅行で訪れたクロアチアのフヴァル島をイメージしていますが、それでは日本との時差がありすぎる…。ということで、寒さ・花粉の厳しい日本の2月・3月を、時差1時間のオーストラリアで暮らすようなイメージで、ぜひともやってみたいし、afterコロナならできるんじゃないかなと思います。
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