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前期、大学でのオンライン授業を終えて

 昨年より都内の私立大学で非常勤講師をしています。内容はキャリア開発、対象は2年生・3年生です。コロナ禍で始まった2020年度前期の大学。教える側も試行錯誤のスタートでした。

 大学からのガイドラインとしては、ただ資料を配布して課題を出すだけでなく、最低でもパワーポイントに講義音声を入れるなど、学ぶ側の気持ちに配慮した授業設計を行うこと。それをベースに主幹の教授とかかわる非常勤講師で知恵を絞りました。

 キャリア開発の授業は、必須科目に近いくらいほとんどの生徒が履修します。そのため、2年生は5クラス、3年生は6クラスに分かれて授業を行う予定でした。すなわち、教える側が複数人います。その良さを活かせないかと、Zoomで授業をして録画したものをYouTubeで限定配信することを提案しました。私自身、さすがにYouTubeに動画をアップしたことはありませんでしたが、Zoomにはすでに慣れていたので、やってみたい気持ちが強くありました。先生方と何度もZoomで集まり、使い方を試したり、どのように録画されるのかチェックしたり、YouTubeにアップしてみて見え方を確認したり、リンクの共有方法を確認したり、短い準備期間でさまざまなことに挑みました。最終的に、主幹教授が収録日の設定と担当ローテーションを組んでくださり、4月末に授業がスタートしました。

 実際に授業が始まってみると、新しい発見がたくさんありました。まず、単純に出席率が上がりました。オンラインに対応できる環境を全生徒が持っているのかどうかわからないままのスタートでした。そのため、バックアップのパワーポイントも準備して臨みました。Microsoft Officeの環境がない生徒はいましたが、PDFも準備していたので、印刷して手書きで課題を仕上げ、写真を撮ってLMS(Leartning Management System)にアップすることでもOKとしていました。

 続いて、生徒一人ひとりの自己信頼が高まりました。オンラインになったことで、教室でワークができない代わりに、教える側が実例として同じワークを実施して、内容を発表しました。これにより、教える側一人ひとりの個性や価値観の違いを生徒に見てもらうことができました。生徒たちのリフレクションシートを読むと、「一人ひとり、違っていていい」ことが伝わったとわかりました。また、同じワークをその回の課題として実施してもらうのですが、多くの生徒が「自分らしさ」を見つめてくれたと感じられる成果物を提出してくれました。昨年は教室でリアルに授業を行いましたが、同級生の目があると集中できなかったり、うまく自己開示ができなかったりということがあり、ワークを成立させることそのものに苦労していました。それが今年は前期の終盤には、決して少なくない人数の生徒が「教室で生徒同士でワークをしたかった」とリフレクションシートに書いてくれるようになりました。誰かと一緒に自分の意見を分かち合いたい、という感情は、自己信頼が高まっていなければ沸き起こらないものだと思います。

 また、リフレクションシートや提出課題の内容そのもののクオリティが高くなりました。対面授業だと、最後の5分くらいで手書きでリフレクションシートを書いてもらうようなことが多かったため、適当に書いて提出する生徒も少なくありませんでした。しかし、自分の好きなタイミングで動画を見て、一人でじっくり自分に向き合いながら課題を実施し、それにもとづいて授業の感想を書くため、一つひとつが読み応えのある成果物として提出されました。振り返りの要素を多く含む授業だからこそ、オンラインという形式が意外と良かったのかもしれません。

 リフレクションシートや課題へのコメントは、正直大変でした。途中、確認だけで手一杯でまったくコメントを返せない回もありました。ですが、これも”慣れ”と”覚悟”の問題だと気づき、後半は全員に対して短くてもコメントを返せるようにしました。最後の授業のリフレクションシートに、こんなふうに感想を書いてくれた学生もいて、すごく嬉しかったです。

私の場合は谷口先生からのコメントもいただきながらこの授業に取り組めたことを本当に価値のあるものだと思います。単位取得以上に大きなものを学べたと思っています。

 リフレクションシートを読む限りでは、全体的に生徒からの評価も高かったように感じています。

私はこの授業が前期で1番好きでした。

 こんなふうに言っていただけるのは嬉しいですね。

様々な先生方の価値観や考え方、モチベーションの上げ方などを聞くことができて非常にためになったし、自分のことを理解するための取り組みも授業内にたくさんあって、自分の価値観や良いところ、悪いところも少し知ることができました。受講してよかったなと思います。

 自分をさらけだした甲斐があります(笑)。途中、「私は谷口先生に近い考え方だった」とか「私は谷口先生とは考え方は違うけど」といった感想をたくさんいただき、「違い」から自分らしさを知る機会につながったのかなと思うと嬉しかったです。

自分の人生をデザインするのは自分だし、全て自分次第だなということを改めて感じました。

 そう、それ!大事なところそこ!ってところをキャッチしてもらえて嬉しいです。私たちは授業を通じて「小さな一歩」の大切さを伝え続けてきましたが、リフレクションシートにたくさんの「私は夏休みにこれをやってみる」という宣言をもらえたのも嬉しかったです。

 先日、すべての成績を主幹教授に提出し終わりました。8月には後期の打ち合わせを行いますが、後期は私たちも一歩進んでZoomを使ったリアルタイム授業にも挑戦していくことになると思います。特に3年生は、就職活動に向けて面接対策などに不安を持っているようでしたので、そこはリアルタイムに取り組んでいきたい意向です。

 お互いに「初めて」だらけの前期に続き、後期もチャレンジは続きます。


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