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雑談的対話が、ダイバーシティな組織をつくる

新型コロナウイルスは、これまでの”常識”を根本から覆すような変化を生み出していると感じます。例えば働き方の変化。私の夫も、すっかりリモートワークの毎日が定着してきています。そんな状況下において、今日はポスト・コロナ時代の変革に役立ちそうな気づきをまとめてみました。


私はIRODORI career(いろどりキャリア)という任意団体で活動しています。この団体では、従来型の家族観に縛られず、自分たちらしい家族のあり方を考え実践する大人を増やしたい、というねらいで活動しています。つまり、「子育て世代のキャリアや働き方」がテーマです。

IRODORI careerは先日、某企業からの依頼を受け、子育て世代の従業員に向けた対話ワークショップを開催しました。そのアンケート・コメントの分析結果は私に、二枚目の名刺に参加する社会人を彷彿させました。

二枚目の名刺は、さまざまなバックグラウンドを持つ社会人が集まってチームとなり、3ヶ月のプロジェクトを通じてNPO団体を支援するプロジェクト(サポート・プロジェクト:SPJ)を提供しています。SPJでは通常、週に1回・2時間程度のミーティングを通じて、3ヶ月間でNPO団体の役に立つ成果物を出します。ミーティング以外の時間もSlackなどを使いながらコミュニケーションを取り、各自で作業を進めたりもします。


まとめてみると、こんな類似点となります。

子育て世代の実情

  • 時間がない

    • 限られた時間をフル活用して働く

    • 決められた時間に必ず退社する

  • 責任感がある(プレッシャーを感じている)

    • 短い時間でも成果を出せるよう努力する

    • 休むことを気に病んでいる

    • 同僚に迷惑をかけてはいけないと思っている

  • 自らのバックグラウンドを周囲に伝える時間がない

    • 配偶者との家事分担度合い、親世代の子育て関与度合い、子どもの持病や性格など

二枚目の名刺SPJメンバーの実情

  • 時間がない

    • 週1回、2時間のミーティングに集中して働く

    • SPJ参加のために本業を早く切り上げる

  • 責任感がある(プレッシャーを感じている)

    • 3ヶ月で何らかの成果を出したい

    • 本業が遅くなり、ミーティングに遅刻したり参加できなかったりすることを気に病んでいる

    • 他のメンバーにも本業があり忙しいことがわかっているので、自分が受けた仕事は自分でやらねばと思っている

  • 自らのバックグラウンドをSPJメンバーに伝える時間がない

    • 本業の詳細、本業の繁忙期、家族の事情など


いずれも、チーム内の遠慮を払拭すれば、一人ひとりがイキイキと働けるのではないでしょうか。しかし、なかなかそうはならないのが現状です。これは「お互いのバックグラウンドを知る機会を持ちづらい」ことに起因しています。


アンケートにはありませんでしたが、ワークショップの中で何名かの方が「この時間で何かが解決するわけじゃないけど、なんだかすごく元気になった」とおっしゃっていたのが印象的でした。

ここにもヒントがあります。企業は通常、「何かが解決するわけじゃないとわかっている時間」をつくることに慣れていません。ともすれば「ただの雑談」として軽視されがちなこの時間を明示的に確保することは重要です。

しかし、本当に雑談で終わってはもったいないです。大切なのは「対話的雑談」です。テーマがあり、深く対話ができるような仕掛けをつくるからこそ、メンバー同士の信頼が深まり業務がスムーズになり、そこで働く人が気兼ねなく、なんなら楽しく働けるようになるのです。

SPJでも、この時間を意図して取るのと取らないのとでは、大きく異なります。うまくいっているチームはそうしたコミュニケーションの機会を上手に取っていることが多いと思います。


会社に集まって働けば成果が出るというものでもないことを、効果・効率だけを求めた働き方では成果は出ないことを、企業はとっくに知っているはずです。

でも、それ以外のやり方がわからないし、前例のないことはリスキーに感じて手が出せない。自社が”前例”になることなんてとんでもない、というメンタリティで多くの企業がここまできたのだと思います。


分析結果が指し示す解決策は、「ゆるく自分のことを話す時間をチームで作ろうよ」です。少し深い層でお互いを知り合うコミュニケーションを増やせば、多様性を楽しむことができ、お互いの得意を活かせる組織になると思います。


新型コロナウイルスは世界規模でさまざまな転換点となっています。でも、この状況が収束したらもとの世界に戻るのはもったいない(し、同じようには戻れないとも思います)。今感じている変化をバネに必要なパラダイムシフトを起こせるよう、意図して組織をつくっていくことが求められるのではないでしょうか。


参考資料

某企業で実施したワークショップのアンケートより、自由記述コメントを抜粋してKHコーダーで分析し、共起ネットワークを作成しました。以下は、そこでつなぎ合わされた単語から考察したものです。実際のアンケート・コメントではありませんのでご了承ください。

<参加した感想>
子育ての悩みを聞いてもらう時間や機会が少ないために、会社がこうした場を提供することは有効。
各家庭の両立のアイデアを共有することは、子育て世代にとって有用な情報共有となり、仕事の役に立つ。
・ともに働くメンバーの業務内容や立場を知る機会となり、相互理解のもとに業務を進めるきっかけとなる。
・子育ては女性の仕事であるという固定観念が根強い。

<日頃、仕事と育児の両立で悩んでいること>
・子どもの行事や体調不良などで会社を休むことに対する罪悪感と、メンバーの負担に対する遠慮が見える。
担当業務に対する責任感と、必ず時間内に仕事を終えて帰宅しなければならないプレッシャーを感じながら働いている。
・自宅勤務やフレックスなど柔軟な働き方ができるだけでなく、周囲の理解もあると働きやすい。

<ワークショップに参加した気づき>
・子育てに対する状況や考え方は人それぞれだとわかったことで気持ちが少し楽になり、さらにカードが両立のためのヒントを与えてくれた。
・同じ会社で働く子育て世代と、子どもや子育ての話ができたことで、場に一体感や仲間意識が生まれ、働くモチベーションにつながった
・夫婦で話し合うこと、ママ友と良い関係を築くこと、自分なりのバランスを周囲に理解してもらうことが、両立にとって重要である。

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