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16:ダメ男と女子中学生、後編「駆け抜ける風のように」/ZABADAK

友人が10年付き合った若い女の子と別れて、4ヶ月で婚約し1年で結婚したことを憤怒し、人生経験が豊富で、今はセミリタイアしている友人に話すと
「それはねえさんが怒るのは筋違いだよ」
と諌められた。
男性と女性の視点の違いとか、そもそも他人様の結婚だしな…と思えば、理屈上、納得するしかなかった。
友人と女の子の間柄がどんなもの、どんな過程かすら私は知らないのだから、本来なら口出しすらするべきではなかったのかな、と思えた。

また数年経って、とある場所で、今度は一回り以上年下の女性と、これまたYMOやムーンライダーズと、共通のミュージシャンが好きで繋がりを持つこととなった。
かなりニッチなサイトだったため、何故ここにいるのか、と尋ねた。
「自分や色んな女の子を騙しては食い散らかしている男を探している。
何人もでグループを作って色んな場所に潜入し、監視し、発見し次第、奥さんに今までの悪行を話して、家庭を破壊するつもりだ」

友人が脳裏から離れなかったので名前と、偽名を使っているかもしれないとのことなので、外見の特徴を挙げると
「安心してくださいってわけじゃないですが、そのご友人さんではないですよ」
と、向こうもホッとしたような感じの語調で返事が来た。

世の中、似たような経歴のクズ男がいるもんなんですねぇ、と続いたので、友人のクズエピソードとして、女子中学生との10年間を語ったら、途中で
「ちょっと待ってください?」
と割り込まれ、私はスマホの前でキョトンとしていると
「その女の子のハンネって、○○じゃないですか?」
と、ずばりの名前を言ってくる。

こんどはこちらが恐怖を覚える番だ。
「な、何で知ってるの?!」
と尋ねると
「メンタルヘルスのグルチャのメンバーだったんです。楽しい人でした。ブログなんかも面白くて」
そして続く
「けど、2年前にチャットに来なくなりました。みんなメンヘラだから心配して、リアルでオフしたことのあるメンバーが家族に連絡を取ると、自殺したって言われました。みんなで残念だったねと言って」

は、なんだそれ?
30代前半で自死したの?
あいつは結婚して、幸せとも言いがたそうな生活をしていて、時々奥さまの愚痴を私にこぼして、パパ活しようかななどとほざいているのに、元カノは幸不幸以前に、この世にいない?!
しかもなんで自分からよ?!

なんだかもう、一気に頭が重い。気が沈む。
「ごめんなさい、なんか酷いことを言ってしまって…」
いや、あなたが謝る必要はない。語った事実が酷いだけだ。

友人が彼女と結婚すれば、夭逝を回避できたのだろうか、いや、一緒になってもまた別の不幸が絶対待っていた。
彼女がどうして30代で人生を終わらせたのか、彼女が学生の時に書いていたブログでしか知らない私は、全くわからない。
ただ、メンタルヘルスのグルチャにいたということは、何らかの理由で心を病んだのだけは分かる。
それが…もう友人とも呼びたくない存在が関わってなければいいと願う。

2人が最後に貸し借りをしたものの中に、新選組を題材にした演劇
「風を継ぐ者」
のサウンドトラックがあったようだった。

新選組の隊士たちは皆、若くして亡くなった。
演じた劇団のキャラメルボックスは解散した。
音楽を作った吉良知彦も、この世の人ではない。
そしてこれを聴いた若い女の子も、自ら死を選んだ。

ここでテーマソングである
「駆け抜ける風のように」
と、きれいに終わりたいが、私の心には苦くてザラザラしたものばかりしか残らない。


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