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9:俺の人生と「働く男」/ユニコーン


就職活動が困難を極めた俺は
「本当に嫌々ながら」
家電量販店に就職した。
不幸中の幸いだったのは、書籍エリアに配属になったことだ。
元々は、書店や出版社勤めを希望していた。

しかし書籍部門は3人でシフトを回し、四半期毎の棚卸しや配置換え、店内でエリアそのものを引越す時も3人。
なのにビッグタイトルのゲームやハード、商品の発売日となれば徹夜組への対応の応援。

朝2時から徹夜組の整列や整理券配布のため出勤しろと言われたりするのだが、それは
「帰れない」
だろ?
それ以外にも、他部門の繁忙期、たとえば引っ越しで家電、年末年始におもちゃ売り場に応援に行かされる。

本業の書籍部門も、雑誌の入荷や万引きの監視、接客対応をしてると人手不足。
曖昧な目的や目安でしか書いに来てないお客様に対し困惑、おぼろげなタイトルで、この本はありますか?と聞かれて推理、横柄な態度ならブチ切れしそうになり、時にジジィに
「○ね!」
と言いたくもなるが、0円でも笑顔で接客である。
普通の本屋とやってることが変わらないが、本以外のことが多すぎるのが不満だ、と、酒が入ると友人たちに愚痴を垂れる。

シフトも常時サービス残業や休日出勤が当たり前、酷かったのは17連勤。
午後9時に帰宅すると、今日は早いね!と家族に驚かれる。
カノジョができても、就労規則と忙しさで、休み時間にしかやり取りができない。
「アナタといつ連絡つくか会えるかわからない」
という理由で、いつも恋人からサヨナラされる。
結婚してもいいかな、という女の子と付き合えば、いきなり地方に地獄の一人旅を命じられて、リアルに
「大迷惑」
をやってのけた。
遠距離恋愛は続かずに、わかれた。
枕が変わっても同じことをヤったのは向こうだったけどな。

出世や仕事も変化なく30代に突入した相当難儀な身の上。
ユニコーンが大好きだから、失恋した時にはカラオケで
「ヒゲとボイン」
を熱唱、いや絶叫していた。

数年前に念願かなって転職し、書店勤めになった。
もう40代間近。
自分の結婚より、弟が所帯を持ったから、親の介護が心配だ。
嫁は二次元。三次元はもういい。
会社の若い女の子にランチをおごって、おいしそうに食べてくれるだけで良くなった。

それを友人である六月に話すと
「若いと下心アリアリっぽくて、オッサンでねーとできないからいいんじゃね?」
向こうだってそうしか言えないだろう。
慰めることをするような奴でもない。

仕事以外の全てを捨てて生きてないか?

人生がまんまユニコーン、そんな俺。
名字は「服部」じゃないけれど。


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