友情の方が恋よりも尊い

 友達以上恋人以下、みたいな言葉って昔からずっとあるし、恋人を友達よりも優先するのが当たり前、みたいな文化があるけど、私はこれに反対したい。

 友情の方が、恋情よりも優れた感情であり、人は常にそちらを優先すべきだ、と私は思う。

 ちなみにこの考え方は私のオリジナルではなく、恋愛に比較的縁のない哲学者たちが多く支持していた意見でもある。友情はギブアンドテイクの関係でも、依存の関係でも、鎖の関係でもない。互いに離れていながら、互いのことを考え、相手が助けを必要としている時に誰よりも早く駆け付ける、ということなのだ。
 
 恋愛は相手に魅力を感じているときにしか成立しない。対して友情は、相手が弱っているときほど強くはたらく。相手が何か間違いを犯したり、自分を裏切ったりしたときほど、強く輝く。友情とは、双方向的な感情ではないからこそ、美しいのだ。

 恋愛は、実のところ動物にも多く存在する意外と原始的な感情、関係である。基本的にそれは一対一であり、数が増えれば増えるほどどろどろと濁っていく。
 恋愛の世界では、自分勝手であることや、他者を犠牲にすることが常に正当化されている。「愛してしまったから」と言えば、どんなことをしても許されると思い込んでいる部分がある。しかしそれは、冷静な目で見れば、単に本能に流されているだけだ。恋愛に特権を与えること自体には反対しないが、しかし必要以上のそれを尊いものだと考えることには反対だ。恋愛は、友情ほど優れたものではない。

 恋愛は馬鹿や愚かものでもできる。しかし真の意味での友情は、優れた人間の中でしか成立しない。
 友情の先に恋愛がある、などと考えるのはその精神が劣ったものである証拠だし、性的な感情を抑えつけたうえで成立する男女間の友情を想像できない人間も、同様である。

 また別の言い方をすれば、友情と恋情は同時に成立することがあり、恋情の方が一時的には強く働くが、しかしそれが冷めたとしても、友情は変わらずそこに残る、と私は思う。恋が終わったからといって相手への興味がなくなるのは、それは相手に対して友情を抱いていなかった証拠であるし、そういう相手を好んでしまったという証拠でもある。これは男性よりも女性によくみられることであると思うけれど、私はそういう点では、女性の精神は男性に比して劣りがちである、と思う。
 「女性は友情というものを理解できない」と言った有名な哲学者が何人かいる。実際、全ての女性が友情を知らないということはないと思うが、大半の女性は友情を恋よりも劣ったものとみているし、そう見ている限りは、それは、友情のふりをした単なる利害関係の延長を本当の意味での友情と履き違えているのである。

 性的な関係がなくなっても、互いに深く愛し合っている夫婦というものがある。愛というのは、恋よりも友情に近いものだと私は考えている。

(あ、そうだ。不思議なことに、漫画とかの世界では意外とそれがはっきりと表れている気がする。主人公とヒロインがいちゃいちゃしたり助け合ったりしてる姿よりも、主人公の親友が彼を助けるために駆け付ける姿の方に、私たちは感動するし、人間としての尊さを感じる。少女漫画ですら、そういう傾向がある。漫画描きの多くは、結構その辺を理解しているのではないか、と思うのだ)

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