李花①

 高校二年になってすぐのことだった。その日は少し体調が優れなくて、三限目の途中に、先生に言って保健室で休むことにした。
 頭痛がひどかった。こういう日は少し、昔のことを思い出してしまう。自分が犯した過ちとその反省。思い出していくと、必然的に「これからどのように生きるのか」という問いが浮かび上がってくる。今日この日、私はちゃんと決め直す。私は私、浅川理知として、その名と運命に相応しい態度、判断、行動で、最後の日まで生き抜くのだ。
 少し微笑む。ともあれ、調子が悪い時は素直に休むに限る。心も体も使えるリソースは有限だ。壊してしまったら、元も子もない。自分らしく生きるにしても、その「自分」というものを無理に動かしてしまっては、その「自分」とやらを見失ってしまうことだろう。うん。私は冷静だ。ゆっくり歩こう。

 誰もいない廊下を歩く。教室を通り過ぎるたび、違う声が聞こえてくる。生徒たちは静かで、教師たちの声は大きい。まるで軍隊みたいだな、とふと思った。
 保健室に近づいていくと、そのドアのすぐそばで壁にもたれかかりながら体育座りをしている生徒がいた。顔をひざにうずめて、じっとして動かない。どうしたんだろう、と思って私は近づいて、声をかける。
「大丈夫ですか?」
 その子は臆病な小動物のようにびくっと体を震わせた後「大丈夫です」と反射的に答えた。その後ゆっくりと顔をこちらに向けた。その顔は……自然な微笑みだった。瞼が赤く腫れていて、ずいぶん泣いたのは誰の目にも明らかなのに、口元は緩んでおらず、左右対称に持ち上がっていた。
 鏡の前で笑う練習、をしている人特有の笑顔だ。私自身がそういうことをするから分かる。自然な微笑みを、自分の意思で浮かべるのはそう簡単なことではなくて、毎日笑顔が歪んでいないか鏡を見てチェックするのだ。いつもいつでも、見る人が不快にならないような。
「私、浅川理知って言います。二年生です」
 私は隣に座りながら、自己紹介をする。お尻が少し冷たかった。
「一年生です。稲葉李花って言います」
 やはり一年生か、と思った。体の大きさは私とそれほど変わらず、女子としては少し大き目だった。
「保健室、鍵閉まってて」
「あぁ。だからここで座ってたんだ」
「どうしようかなって、途方に暮れてました」
「お尻冷たくない?」
「言われてみればそうですね」
 そう言って彼女は自分から立ち上がった。私も立ち上がる。会話が奇妙なほどスムーズに繋がっていたし、言葉からは緊張やストレスは感じられなかった。とても不思議な印象だった。
「浅川さんは、どうしてここに?」
「体調が優れなくてね」
「大丈夫なんですか?」
「まぁ、大事を取って休んだだけだし、大したことないよ。とりあえず職員室に行く?」
「任せてもいいですか? 私全然、分からないというか、余裕ぶってますけど、実は結構しんどくて」
 そう言って、また彼女は笑った。柔らかく、見る人を和ませる自然な笑顔。
「強がるの、癖になってるの?」
「えぇまぁ、はい」
「私もだよ。一度そういう風なので慣れちゃうと、なかなか大変だよね」
「大変です」

 職員室に行って、手すきの先生に尋ねると、保健室の先生は今日は出張しているとのこと。私たちが職員室を出ようとすると、その先生は保健室を開けようか、と親切にも尋ねてくれたので、私たちはその申し出に甘えることにした。鍵を置いていくから、出るときは鍵を閉めて職員室に返しに来てくれ、と。
 自主性と自由を重んじる校風と言えど、少し防犯意識に欠けているような気もするが、まぁそういう高校なのだ。
「ここの生徒はみんな、教師の方々から信用されているんですね」
 教師の方々、という言い方が少し気になった。昔自分が先生に反感を持っていた時は、自分の頭の中で彼らについて何かを思う時は「教師」という言葉を用いていたからだ。実際に呼ぶときは目立たないために「先生」というけれど、内心では「教師」と呼んでいた、というわけだ。
「そうだね。でも私だっていうのもあると思う」
「有名なんですか? あ、まぁ美人ですもんね」
「いや、勉強が得意なだけだよ」
「美人で秀才。教師の間でも評判、というわけですね」
 嫌味な感じではなく、楽し気に、少しからかい混じりのようだった。私は肩をすくめた。
「時々いますよね。いやまぁ、本人の前でそういうことを言うのあれかもしれませんけど」
「稲葉さんはそういうタイプじゃないの?」
「そういう風になれなかったタイプです」
「詳しく聞いてもいい?」
「まず私は、そんなに美人じゃないです。肌荒れてますし。次に勉強ですが、やった分だけ伸びるタイプですが、人並みにもそれに時間をかけることはできません。体力がないんです」
「でもコミュニケーションは得意、と」
「まぁ、はい」
「八方美人っていうタイプでもなさそうだよね」
「苦手な人は避けますね、普通に」
 会話が止まったタイミングで、保健室についた。
「頭痛、大丈夫ですか?」
「喋ってたら少し楽になった。ありがとうね。四限目まであと十五分くらいあるね」
「私ちょっと横になります。しんどいので」
「なんか無理させちゃってごめんね」
「いえ、美人で秀才で心優しい先輩とお近づきになれて嬉しかったので、無問題です」
「それは皮肉?」
「いえ本音ですよ」
 彼女はカーテンを開けたまま、ベッドの上に横たわって、布団にくるまった。私は背もたれのある長椅子に座って、目をつぶって、静かに佇むことにした。
「浅川さん?」
「何?」
「浅川さんは、私を見て『自分と少し似ているタイプだな』って思いました?」
「思ったよ。その微笑み方、印象的だからね」
「私も同じこと思いました。この人、鏡見ながら練習するタイプの人だなって。でも、喋ってて思いました。浅川さんは、私なんかよりそういうのがずっと得意なタイプの方なんだなぁって」
「どういう意味?」
「疲れちゃうんです、強がるの」
「私は疲れないように見える?」
「体力が違うな、と思いました。体鍛えてますよね?」
「まぁ、うん」
「私もまた体鍛えようかなぁって思いました」
 少し言葉がゆっくりになっていて、眠りが近づいているのだな、と思った。
「助かりました。とても」
「それはよかった」
 五分ほど沈黙が続くと、すー、すー、とかわいらしい寝息が聞こえ始めた。私は立ち上がって、カーテンを締めに行った。一瞬だけ寝顔が見えた。見るのは失礼だと思って、すぐ顔をそむけたが、その目から涙がこぼれていたような気がして、もう一度見ると、やはり、涙がぼろぼろとこぼれていた。夢を見て泣いている、というより、起きている間堪えていた涙が眠った瞬間に堰を切ったように流れ出した、という感じだった。
 なんだか急に愛おしくなって、カーテンを静かに締めたが、私はその内側に。スツールの上に座って、彼女の頭をゆっくり撫でることにした。
 人の苦しみは、分からない。この子はなぜこんなにつらそうなのか、私には分からない。想像することすら、ままならない。
 人はそれぞれ違う苦しみを抱えて生きているのだ。そう思うと、私は私自身の苦しみを大切にしようという気持ちになる。しっかりひとりで耐え抜いてやろう、という気持ちになる。
 人生は苦痛だ。苦痛だからこそ、私たちはそこで生きているという実感を得られる。苦痛なき人生はあっという間だ。苦痛が私たちに、長く貴重な時を感じさせてくれるのだ。
「浅川さん?」
「あ? あーえっと……」
 私はゆっくりと、彼女の頭に置いた手を引っ込める。
「もうちょっと撫でてくださいよ」
 私は、彼女の頭頂部から額にかけて、手を動かす。髪が乱れない程度に、優しく、ゆっくりと。
「えー。いつから起きてたの?」
「今起きました。最初の時も思ったんですが、浅川さんって大胆ですよね」
「そうかな。怖いもの知らずだって言われることは多い気がするけど」
「人に頭を撫でてもらったのなんて……一年ぶり? 二年ぶり? くらいですね。すごく落ち着きます」
「よかった」
「浅川さんって、何やっても人から嫌がられたりしなさそうですよね」
「そんなことないよ」
「嫌がられたりしたことあります?」
「あるよ。真正面から教師の間違いを指摘したときとか」
 そう答えると、彼女ははっはっは、と大げさに声を出して笑い声をあげた。
「あと、すでに彼女がいる男子からは大げさに避けられるね」
「あー。その人はあれですね。いい男なんですね」
「かもね」
「浅川さんは、今付き合ってる人とかいるんですか?」
「いや。高校の間は、そういうのやめておくことにしてる。自分の心を保てなくなりそうだから」
「それは正解かもしれませんね。よく聞きますもん。高嶺の花というか、凛とした感じの子が、彼氏ができたのをきっかけに、いつの間にかどこにでもいそうな普通の子になっちゃった、みたいな話」
「そうなの?」
「いや、適当に言いました。勘です」
「まぁ、何よりも忙しくてあんまり余裕がないっていうのも理由の一つなんだよね」
「忙し過ぎますよね、この学校。私このままだと落第しますもん」
「まだ一カ月くらいだよね?」
「半分も授業出れてません」
 声のトーンは明るいまま。
「まぁ別に、中退したって適当に高認取って大学行けば問題はないと思うんですけどね」
 その声からは、感情が読み取れなかった。
「現実味がないんですよ。最近ずっと。生きているというより、生かされている、という感じがするんです。浅川さんは分かりますか? この感覚。自分の将来が、どこにも繋がっていない、という絶望感。もう何をやっても、うまく行く気がしないんです」
「こんないい高校に入れたのに?」
「嬉しくなかったんですよ。周囲が祝ってくれる言葉すら、どこか馬鹿げたコメディみたいに響いたんですよ。何というか、そうですね……『地獄行きおめでとう!』と言われているような気分だったんです。実際、ここは地獄ですし……」
 私は、地獄というほど苦しくはなかった。勉強することは嫌いじゃなかったし、仲のいい友達もできたから、楽しさと苦しさはほどほどに釣り合っていたような気がしている。行きたくないときは休めばいいし、学校の授業について行くのは苦じゃないし。
「じゃあなんで、ここを受験したの?」
「なんででしょう。多分、親とか先生とかに流されたからだと思います。せっかくだから、一番いいところ行けって。無理ですよ。私なんて……」
 ただ弱音を吐いているだけのようには見えなかった。言葉は流暢なのに体は震えていて、涙もずっと流れるがままだった。
「四限目も、休むの?」
「こんな状態で行けるように見えます? 正気を保つので精一杯なんですよ」
 そろそろ三限目の時間が終わる。四限目からは戻るつもりだったが、彼女を放っておくことはできないと思った。
「私、四限目も休むって先生に言ってくる。稲葉さんの分も、伝えてきた方がいい?」
「いえ。もう私、休んでる時の方が多いんで、いちいち言われても困るだけになっちゃうと思います」
「分かった。すぐ戻ってくるからね。あ、あと何か飲みたいものある? 自販機で買ってくるよ」
「お茶を。あと、何か食べ物が欲しいです」
「お弁当持ってきてる?」
「はい。でもかばんは教室です」
「何組?」
「十一組です」
「あ、理数科なんだ。私も」
「そうなんですか」
「取ってくるね」
「何から何まですいません」
「全然いいよ。せっかく仲良くなれたんだから」
「ありがとうございます」

 保健室を出て、自分は何かとこういうタイプの人と縁があるな、と思った。
 とても優秀で、心優しくて、でも他の人には理解できないような大きな痛みを抱えていて。それでも何とか生き抜こうと覚悟していて。
 私はきっとそういう人に惹かれて、そういう人と共に生きていくことを選ぶんだろうな、とふと思った。自然と笑みがこぼれた。なんだか、悩み傷ついている人のために何かをやっている時、私は他のどんな時よりも、自分らしくいられるような気がしたのだ。

 自分の教室に戻って、友達に四限目も休むことを伝えた。その後、一年生の階に昇り、去年自分が過ごしていた教室に入る。
「すいません。稲葉李花さんのカバンってどれですか?」
「え、えっと。これだと思います」
「ありがとう。それじゃあ」
 てきぱき動く。
「戻ったよ」
「ありがとうございます」
「水筒ある? 注ごうか?」
「いえ、自分でやります」
「うん」
 私はカバンをベッドの上に置いた。稲葉さんは体を起こして、カバンを開けて、必要なものを取り出した。文庫本がちらっと見えた。
「本、好きなんだ」
「まぁ、はい。最近はあんまり読む余裕ありませんけど」
「持ってきてるの、何?」
「えっと、アリストファネスの『女の平和』です。分かります?」
「ギリシャの喜劇詩人だよね。アリストファネス。私、読んだことないな」
「やっぱり浅川さんは秀才なんですね。アリストファネスって、世界史の教科書に載ってます?」
「載ってると思うよ。叙事詩を書いたホメロス、ヘシオドス、悲劇を書いたアイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデス、喜劇を書いたアリストファネス、みたいな感じで」
「どれか読みました?」
「ホメロスのイリアスとオデュッセイアは目を通した。ソフォクレスのオイディプス王も呼んだね。アリストテレスが絶賛してたから」
「ホメロスは読んでませんが、オイディプス王は私も読みました。どうでした?」
「私はあまり好きじゃなかったな。確か……スフィンクスの難題に答えて王になったオイディプス王が、国に異変が起きている原因が自分自身の罪にあることを悟って、破滅する、みたいな話だったよね」
「えぇ。それとは気づかず父親を殺し、母親を犯してしまった。その事実を知って、自分の目をつぶすんです」
「悲劇の本質は、優れた人が厳しい運命に耐えていく姿を眺めて感動することにある、みたいなことをアリストテレスは言っていた」
「アリストテレスの詩学、私あんまり好きじゃありませんでした。彼自身、あんまりそういう創作のセンスはなかったみたいですし」
「そうだね。あれだけたくさんの分野に手を出しておきながら、詩作はやってなかったよね、確か」
「オイディプス王、よくできた話だとは思います。ギリシャの悲劇文化がどういうものかよく分かる作品だとは思います。でも私はあれに感動できませんでしたし、面白いとも思えませんでした。引き込まれはしました。実際にその劇が舞台で行われているのを想像して、あぁこれは確かに優れている、とは思いました。しかし……」
「稲葉さんも気に入らなかったんだね」
「はい。決して悪い話ではないんですし、構成のバランスも演出も工夫されてて、いいと思うんですけどね。でもなんだか……やっぱり『男が書いた作品』って感じです。あ、ふと思ったんですけど、どうして文学作品の中では、女の人ってすぐに自殺するんでしょう? ヒステリーで気を失うこともしょっちゅうですし。なんかそれがよく分からないんですよね」
「それは私も思ったな。シェイクスピアを読んでても思う。『女ってこんな感じでしょ?』という感覚が、現代とは明らかに違うから、それはなんだか読んでて面白いというか、勉強になるなぁと思う」
「時代を感じますよね。実際、どうだったんでしょうね。そういう女性ばかりが目立つから、そういう風に描かれたのか、それともそういう女性を描いた方が男に受けるから、そういう風に描かれたのか。実は本当に、その時代の女性はそこに描かれているように、愚かで不安定な人ばっかりだったのか」
「今やもう確かめようがないね」
「近代ではすでに、男性からも一目置かれるような女性がたびたび出現してました」
「スウェーデンのクリスティーナとか?」
「グスタフ二世の娘の?」
「うん。バロックの女王」
「なかなか渋いですね。チョイスが」
「あの時代、女性でありながら優れた政治手腕を発揮しつつ、デカルトなど時代の中心にいた哲学者ともかかわりが深かった。しかも、若い頃は男装をしていて、武芸とかも好きだったっていう逸話まである」
「詳しいんですね」
「私自身、家でじっとしているよりも外で動き回る方が好きだったし、走りづらいスカートも制服以外ではあんまり履かないから。ちょっと親近感あって。最近、彼女が主題の少し古い映画も見て、さ。稲葉さんは、そういう人いる?」
「歴史上で、親近感を感じる人ですか?」
「うん」
「ぱっとは思い浮かびませんね。あんまり、私みたいな人はいな……あぁ、全然違いますけど、近い時代で、今思い浮かんだのは、パスカルですね。ブレーズ・パスカル」
「数学、得意なの?」
「いえ、それは普通です。そうじゃなくて……その憂鬱な感じというか、人生に悩んでるところとか……」
「パンセ、私も持ってるよ」
「一時期あれに影響されて、キリスト教頑張って信じようとしてたことあるんです。無理でしたけど」
「それはなかなか面白い試みだと思うけどね」
「パスカル自身も、キリスト教を完全に信じられるようになるにはいろいろな紆余曲折があったみたいですし……」
「多分だけど、パンセを読んでキリスト教に戻ろうと思った無神論者はほとんどいなさそうだよね」
「『周りの人と同じように信じているふりをしてみたまえ。そうすればいつの間にか信じるようになっているから』と彼は言いましたが……」
「ダメだったんだ」
「まぁそもそも環境が違いますしね。日本の教会は日本の教会ですし」
「カトリックも、四百年前とは在り方も態度もずいぶん変わっちゃったみたいだしね」
「でも、意外でした。こういう話、通じるものなんですね。意外と話してみたら、クラスメイトの人たちも分かってくれたりするんですかね?」
「うーん。どうだろう。ひとりいればいい方だと思うな、私は」
「逆に質問してもいいですか?」
「うん」
「浅川さんは、私みたいな人に、今まで会ったことはあるんですか?」
「稲葉さんみたいな人、か。どの部分に焦点を当てるか、かな。歴史に詳しい人とは、会ったことあるよ。多分、稲葉さんよりも詳しい人。それとは別に、これは私の印象だけど、稲葉さんの苦しみ方に似た苦しみ方をしている人とも会ったことがある。その人は死んでしまったけどね」
「私も、私によく似た人をひとりだけ知っています。その人も死にました。まぁそのおかげで、私は生きて行こうと思ってるんですけどね」
「私も稲葉さんには生きていて欲しいと思うな」
「誰に対してもそう思うんじゃないですか?」
「どうだろう。普通の人は、生きていて欲しいなんて思う必要もなく、勝手に生きていくじゃん。私もそうだし」
「確かに」
「だからさ、生きよう、って強く思って生きていないと、ふっといつの間にか消えてしまうような、そういう儚い人って、なんだかすごく貴重で、素敵な人のような気がするんだよね。私昔から、そういう風に思う部分がある」
「理知さんは逆に、何があっても前を向いて生きていきそうですよね」
「そうだね。私はそういう風に生きるって決めてるし、それ以外の生き方を知らないから」
「かっこいいと思います。もしそれができるなら、私は浅川さんみたいに生きたいって、思います」
「私の生き方は私だけの生き方だよ」
「そうでしょうね」
 彼女は笑って、ベッドから降りた。
「少し元気出てきました。午後からの授業は出ようと思います。そうだ。連絡先聞いてもいいですか?」
「もちろん。喜んで。いつでも連絡してきていいよ。あ、でも私、あんまり携帯みないから、すぐに返事がなくても気にしないでね?」
「私もあんまりスマホ触らないんで、それについてはお互い様ということで」
「うん」

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