Magazine Study vol.12

【今号の目次】
1.特別企画 対談「EBMと作業療法①」
2.9月12日のらいすた概要
3.9月12日のらいすたQ&A
4.その他のQ&A
5.今号の研究論文リスト
6.時事ニュース
7.研究アイデアをシェアしちゃいます!
8.私のオススメ本
9.まがすたでしか言えない〇〇
10.近況報告
11.次回のLive Sudy
12.質問送り先案内
13.署名

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1.特別企画 対談「EBMと作業療法①」
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1)エビデンスとEBMの混同
寺岡:ベイズ統計モデルが作業療法のエビデンスを構築する戦略として重要ということは同意です。そこで気になるのが、ちょっと話題が飛びますけど、エビデンスとEBMの混同です。
https://note.mu/mutsu13t/n/n7984738e2141

京極:あー。はいはい。

寺岡:エビデンスとEBMは本来異なるものです。エビデンスは確度の高い事実で基本は研究論文で、EBMはエビデンス、患者の価値観、状況、臨床経験を踏まえて臨床判断することです。だけども、最近の作業療法士の議論を見ていると、エビデンス=EBMというように誤解している人が散見されるように感じます。

京極:その通りですね。それはEBMが1991年に提唱されたころからある誤解の一例でして、ぼくは既に「終わった問題」だと認識していましたが、まだそういう誤解が一部で生まれているようだということにため息がでました、笑。でもこれ、作業療法に限らず他の領域でもいまだに一部で起こっているようで、ある程度一般性を持った構造上の問題なんだろうと思います。

寺岡:そうなんですね。EBMを提唱した最初の論文を読んでも、エビデンス=EBMなんてまったく書いてないですし、EBMは個人差を考慮しながら最良の実践を行う方法であることがよくわかります。
http://www.acpjc.org/Content/114/2/issue/ACPJC-1991-114-2-A16.htm

京極:まったく同意です。

寺岡:ありがとうございます。Guyattのこの論文を読むと、EBMは患者に根ざした疑問を作成し、それに関連した文献を検索してから批判的吟味を行い、さまざまな情報の総合判断によって最適な臨床判断を目指すことがよくわかります。

京極:そうだよね。GuyattはEBMの提唱者だけども、実はその下地は1981年頃からMcMaster大学のSackettが率いる臨床疫学グループが作っていて、Canadian Medical Association Journal上で研究論文を批判的吟味する方法を助言する一連の論文を発表しているんですよね。

寺岡:へー。そうだったんですね。

京極:GuyattはSackettから学んでいて、Sackettが創りあげた臨床疫学を活用する文脈のなかからEBMが誕生したというわけです。だから、EBMは最初、臨床疫学の活用で解ける問題に適したかたちで方法論が整備され、その後、質的研究など他の研究論文を活かせる方向で拡張していくというプロセスをたどったと理解できるわけです。

寺岡:そういう背景があったんですね。Guyattは2015年5月13日に亡くなっていますから、ご本人はEBMの誤解を解く機会はないわけで、後に続く人たちがきちんと理解しながら、それを発展させていく必要がありますね。

2)患者個人の治療効果に関する決定的なエビデンスとは?

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