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感想 琥珀の夏  辻村 深月 著者は、子供の葛藤や苦悩を描くのが上手だなと感じた。宗教二世という悲劇は見過ごせないことである。

主人公の法子は弁護士だ。
昔、夏になると林間学校に通っていた。そこは後に、宗教が経営母体だったとわかる。
その施設跡で白骨死体が見つかった。
法子は、昔の知り合いである宗教二世の親友の弁護をすることになる。

私が殺しました。
昔の親友はそう言っているというのだ。

辻村さんは子供の世界の葛藤や苦悩を描くのが上手い。
だから惹きつけられる。

法子が夏の合宿で体験する子供の時の経験が本書の核となるが、その記述が生き生きしている。
美夏という宗教二世の少女との交流が実に爽やかに描かれている。


かわいそうだけど選べない。ミライの学校の中だけしか知らないから。そこで一緒だつた相手と結婚し、そこの中だけの社会を再生産してしまう。自分の力で生きようと思っても、すでにそれが奪われているからです。



子供は社会で育てるという理想は悪くない。
母子が孤立し、保育園にも入れず、追い込まれてく母親は多数います。
産休を取ると、会社での居場所を失うことも少なくない。
でも、誰も頼れない。だから子を産まない。
これが少子化の原因と言われている。
だから、昔のように町全体で育てるという思想は悪くない。

しかし、母子を引き裂くというのは絶対に違うと思う。
美夏の両親に会いたい、両親と暮らしたいという子供の時の願望は痛切だった。

子は母の愛で育ち、親もまた、子への愛で幸福を味わうのだと思います。

宗教二世の葛藤は理解できます。

法子がミライの学校の弁護を引き受けるか迷っていた時、昔の友達がそれはやめてと懇願してきたのが印象的だつた。

もし、法子が合宿に参加していたと報道されたら、彼女を誘った友達が宗教二世だとばれるかもしれないからだ。そうなると今の幸せな生活が崩壊する。だから、二十年ぶりに連絡してきたのだ。

子供の時代のことだけでなく、二世は大人になつてからも、身元バレしないかと困惑するのです。
こういう宗教は正しいようでいて、何かが違う感じがする。
しわ寄せが来るのは幼い子供たちなのだと感じた。




2024 9 29




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