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感想 五郎治殿御始末 浅田 次郎 幕末から維新のはじめにかけての激動期の武家のあり様を描いた短編集でした。浅田さんらしい人情味あふれる作品群です。

幕末から明治にかけて武家の立場は激変した。
武士の有り様を内面から描いた短編集が本書です。

表題作は、廃藩置県により武家の存在場所である藩を失った桑名藩の位の高い年寄りの武家とその孫が家財を売り払い金を寄付などをし清算し死出の旅路に出るのだが、そこで旧知の商人に出会い自害を止められるという話し。

死ぬことが武家の有り様という価値観が、生きることの大切さに気づく変化は、まさしく価値の逆転と言えるでしょう。

椿寺までという短編が、本書の中では一番好きです。
丁稚と旦那の二人旅、どうして、この丁稚を連れて来たのかというのが大切でラストにその理由がわかる。
これは二人のある決別を意味している旅なのかと思います。

柘榴坂のかたき討ちは名作です。
桜田門外の変で死んだ井伊直弼のかたき討ちを維新後も13年にわたって続けている男がやっとのことで仇の一人と再会する。その車屋とのやり取りと心情の変化が潔く魅力的です。

武家という価値観が時代の変化により激変する。
その葛藤の描き方が興味深い作品たちでした。

2024 8 11
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