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感想 幻夏 太田愛 子供の時に発生した少年の失踪と、今、目の前で起きている少女誘拐事件が繋がっている。冤罪がモチーフの骨太ミステリーです。


「自白強要による冤罪」がモチーフです。
昔はよくあったみたいですね。

著者の処女作犯罪者で活躍した、あの三人が、また、難事件に立ち向かいます。
あの二人が探偵事務所をしています。そこに、ある女性が息子の行方を捜してくれと依頼してくるのですが、その事件は23年も前に発生した少年の失踪事件だった。
その少年が、刑事のあの人の親友。

その事件が、今、まさに発生している少女誘拐事件とリンクしていて
過去の事件では、少年の失踪した日、刑務所から出ていた少年の父も死んでいた
その父は冤罪で八年も刑務所に入れられていて
その冤罪が発表される直前に死んだのだった。

そして、今の事件の被害者は、当時の裁判にかかわった有力者の孫娘で
犯人として逮捕されたのも、同じ立場の人の子
この事件の警察の責任者も当時の冤罪に関わった人

ミステリーとして読むと、少し物足りなさがある
それよりも犯人の動機が面白かった

モチーフは冤罪
捜査、起訴、公判、判決という流れの中において
いくら無実を訴えても声は届かない。
検察が起訴すると有罪率は99%と言われている
つまり、自信のある場合しか起訴しない

しかし、中には強引な自白を強要しての起訴も昔はあったのです

子供たちの楽しそうな日常が、この過去の事件が消してしまいます
冤罪になると、それは、もう、この世の終わりみたいになり家族は全国を逃げ回るしかない

なぉ、なぉ、あいつらは何だってできるんだ。一度疑われたらやってようがいまいが、どうあっても犯人にさせられてしまうんだ。


という冤罪で逮捕された父の言葉が印象に残った。
この人は八年も無実の罪で刑務所に入っていた。
そして、冤罪だと発表される前に死んでしまった。

すると、彼の名は匿名のまま、冤罪であったと警察は報告した。
だから、23年たっても、周囲の者は声を低めて、あの子たちの父親は人を殺していると・・・

23年後に発生した誘拐事件の犯人とされた男も冤罪だが
それを信じてくれる者はいなかった

声の小さい者たちは蔑ろにされ
声の大きい者たちだけが相手にされる

そういう世界が、今だに続いている
少なくとも、この物語の中ではそうで

こういう現象は、日本の司法制度に問題があると著者は言いたいようだ


2024 4 8



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