感想 四月になれば彼女は 川村 元気 愛を終わらせない方法はひとつしかない。それは手に入れないことだ。決して自分のものにはならないものしか、永遠に愛することはできない。
川村さんの作品は、かなりの確率で映画化している印象がある。
本書は、佐藤健さんと長澤まさみさん出演で映画化された。
ということで読んでみた。
恋愛小説である。
一昔前までの恋愛観は、結婚し、子供を産み、死ぬまで寄り添うというようなものだったと思うが、本書が示す 愛とは何かという問いへの答えはそういうものではない。
主人公の男性には、弥生という婚約者がいる。その昔、ハルという恋人がいて、そのハルから二人の同居する部屋に海外から手紙が届く。
物語は、現在と過去を並列的に語るものであり、4月に始まり、5月、6月・・・と3月まで続く。
彼の昔の恋人ハルのあの情熱に、弥生は衝撃を受けた。だから家出したのだと思う。
印象に残った言葉を紹介する。
愛は果物と同じだ。手に入れた瞬間から、それは腐りはじめる。同じ形で永久に瞬間冷凍などしてはおれない。一昔前の恋愛小説は、この愛を手に入れる場面までが描かれるものが多かった。その後は結婚し、子供ができ、死ぬまで幸せに暮らすということなのだと思う。
しかし、それは愛がその形のまま同じ熱量で永遠に継続することを前提としている。
本書は、愛は弱くなるということを言っている。
だから夫婦が別れたり不倫したりするのだ。
どうせ色あせるのなら、恋なんて必要ないのではないか、それは一時の激情なのではないか。
恋は錯覚なのではないかと、たぶん、弥生は感じていると思う。
だから、婚約はしても結婚するとなると逃げ出してしまう。
しかし、彼の昔の恋人の手紙を読んで、何かを感じたはずなんだ。あの自分が失っている激しい情熱。それを感じないわけがない。
このセリフも面白い。人が恋をするのは、今、自分は生きているという実感を感じることができるからだというのだ。確かに、恋をしている時は、その時はわからないが、後で振り返るとそういう感覚なのだと思える。
さらに、このセリフ
本書は、愛の永遠は信じていないが、愛そのものを否定しているのではない。
人が人を愛すること、それは必然なのだ。
2024 4 1
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