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感想 日蝕、一月物語 平野啓一郎 両作品とも文体に特徴あり、一月物語は神話風で面白かった。


日蝕と一月物語という中編が二作品あります。
平野さんの初期の作品です。


日蝕

キリスト教の僧侶が、錬金術師に会いに行き、そこで彼の研究に接する。
彼を夜中に尾行するところが面白い。
森の中、美しい両性具有のホムンクルスがいた。
そのホムンクルスが、魔女として殺されるまでを描いた作品。
その処刑の時に、日蝕になるのが何とも味わい深い。

この小説は難解と思われがちですが、それは文体だけで
扱っているのは中世の宗教による一方的な道徳の浸透の怖さかもしれない。

ホムンクルスは、錬金術師が生み出した新技術ということなのか
宗教は、新しいものを否定する。
魔女狩りというのは、そういうもののような気もしないではない。

両性具有、ホムンクルス、魔女狩り・・・
そこだけ見てると、あまり鋼の錬金術師という漫画と変わりないし
本書より、当然、鋼の錬金術師のほうが面白い。

芥川賞を受賞したのは、たぶん、当時のこの方の年齢と、この中世を表現するにふさわしい復古調というのか、難解な文体にあったように感じます。
とくに、内容はさほどでもなかったという印象を受けました。

一月物語 は面白かった。
奈良を旅する若い男が、山中の庵に保護される。
蛇に噛まれ動けなくなり、山で暮らしている僧と、僧曰く、らい病の年老いた女が住人とのこと。

彼は、頻繁に若い娘の夢を見て、いつしか、その娘に恋をする。

彼は、夢の中の女への感情を自問自答します。
俺は、彼女を愛しているのかと。

その葛藤から出た言葉が印象に残った。

言葉を与えられねば認められない感情がある。


それこそが、夢に出てくる女に対する彼の想いであり
愛という言葉を与えることで、それは愛だと自覚されるのである。

この後、年寄りの女という人が、その高子という夢の女だとわかり
追い出されるようにして彼は下山。
しかし、彼は旅の中途で病をぶり返す寝込む。

その時、宿の女将が不思議な話しをする。
それが山の女高子の話しだった。

まるで神話のような話しで
話しによると、彼女の母は蛇に孕まされたようなのだ。
神が蛇の姿を借りて降臨・・・・。
彼女に見つめられると死ぬというのだ。

彼は再び、山の庵に・・・・

平野さんの初期の作品は三島のように美文が多い。
例えば、山の中を表す表現。

夜が満ち始めていた。山中では、闇は底に、底に、と溜まってゆく。それが何時しか踝を呑み、膝を呑み、気がつけば胸にまで迫っている。それでも、闇の潮は引かない。



その闇の世界で見る夢に、美しい女性が現れる。
この闇と美女のコントラストが良い。




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