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感想 光圀伝  冲方 丁 少し長く疲れた。水戸黄門の話しですが、旅には出ません。

水戸黄門こと、徳川光圀の一生を描いたものです。
旅には出ていません。
印籠も出しません。
悪代官も出てこないし、温泉に入る女性も出てきません。

はっきり言って、若い時は鬼畜です。

有名なエピソードなのですが、青年期は、長男を差し置いて、なんで自分が後継者なのかに悩んでて不良になってました。

それで仲間に度胸試しだと言われて、今で言うホームレスを試し切り
殺害します。
ホームレス狩りですよ。最低。

この人の思想の中心は儒教です。
だから、長男の兄を差し置いて自分が水戸家を継承するのは不義であると思っています。

だから、子はいらないという考え。
それで家の女中に手を出して孕ませて
放った言葉が、水に流せ

これはなかったことにしてくれということではなくて、子を殺害しなさいということです。
しかし、臣下は命令に背いた
子は兄が引き取り、女は他の男に嫁ぐことになりました。

さらに、天皇の血筋の近衛家の姫を妻にするのですが、結婚式の直前に
俺の跡継ぎは兄の子です。あなたとの子に水戸家は継承させないと宣言します。

自分の大義があるのはわかるが自分のことしか考えてない。
これは美談みたいに作者は語り、姫もまた、了承し、自分の産んだ子は兄上の養子にしましょうなんて言い出します。

自分の理想のため、たくさんの人を犠牲にしている。
これはクズです。

藩主になってからは仁政をしきます。
聖人君子のようです。

有言実行の男なので、兄の子を養子にもしました。
長男は病死、二人目も兄の子です。

そして、あの隠し子は兄の家の養子となりました。

子供にとって親と離されるのは不幸です。

何故、長男にこだわるのか。
たぶん、朱子学の教えなのでしょう。
しかし、これを見ていて思うのですが、それはおかしい。
優れた人間が後継者になつたほうが、民にとっては幸せだと思うのです。

感動ポイントらしい、この兄の子を・・・という場面。
感動なんかしなかったです。

最後に、子供の時から目をかけていた家老藤井 紋太夫殺害の話しが出るのですが
この時代は、犬将軍と呼ばれていた徳川綱吉の時代であり、黄門さんも、こいつに反発し引退させられるのです。

藤井は、光圀の掲げた大義を貫きたい
そのためには、水戸家から将軍を出したいということになります。

その陰謀を黄門さんは許さない。
自らの手で殺害するのですが、藤井の言葉は真をついている。

生類憐みの令のように糞法律を作る将軍なんてダメだと思っている
黄門さんの薫陶を受けた水戸家の人間が将軍になるべきだし
天下の権力はわたくしするべきでない。だから、天皇に大政奉還しようという思想です。

極端な理屈ですが、天下をわたくしするのはオカシイという点はわかる。
尊王派の黄門さんが彼を殺害した真意は、大乱を避けることなのもわかる。
でも、殺害までしないでいいように思える。

黄門さんの学問の師である朱舜水の言葉が良い。
最後に紹介したい。

一日にしてなるのは紙の城である。百年の歳月をかけるのが石の城である。あなたは一日でしてなるような城を目指すべきではない。




2024 1 24



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