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しりとりエッセイ(雑文)  リ   リスとら

>>> リ   リスとら


僕も、たいがいいい加減な人間だが、さらに上をいく奴がいる
彼はいい加減な上に、負けず嫌いだ。

その人は元カノの親友の恋人だった
10歳くらい上で、見た目はかっこよく
京都では一番良い大学を出ていた。

が・・・
変な人だった。

彼は何故かリストラを知らなかったらしい。
それはエリートの彼には無縁だったからなのか
それとも理系馬鹿なのか?

先輩がリストラされた話しをしていると
知ったかぶりの彼が話しに割り込んできた
「まじか!」と彼は叫ぶと、「俺も見てみたい」と言い出した。
「それ、見てみたい。今から見に行こうぜ」
先輩をか。
リストラされたしょげた顔をか。
それはあまりにも残酷である。
悪趣味だ。
「そういう戦いがあるのは知っていたが、実際に見たことはなかったんだ」と彼は言った。
戦い?
それって、もしかして リスとトラの戦い?
それ、何の話しやねん。わけがわからん。
リストラではないなと思った。
リストラ。つまり解雇である。
「かいこだぞ」と言うと、彼は「うん、うん。わかっているよ、わざとボケたんだよ」と頷く
「カイコな、カイコ・・・」
発音が違う。
違うカイコになっている。
何か蚕の話しになってる。
モスラが出てきたあたりから、もう、それは解雇ではなくなり蚕になり
リストラからは、かなり離れていたのだ。
解雇でなく、話しが乖離しているのだ。
戦いという時点でおかしい。
たぶん「リストラ」という怪獣がいて、その話しをしているのだ。
その怪獣とカイコ。つまり蚕。そこからモスラが出てきて、戦いになっているのだ。
いい加減にもほどがあるぞ。
僕たちは必至に軌道修正しようとしたが、彼は戦いに固着した。
「たぶん、あなたは意味を間違っている」と指摘した。
すると、彼は急に保険の話しをし始めた。
もしかして、介護保険の事かい?

完全に勘違いしていて、もう、それは別の話しとなっていた。
だから、完全否定してやった。
リストラとは解雇のことだ
戦いもモスラも関係ない。
介護保険の話しでもないと言ってやった。

わかっているさ。
「君たちは、ずっと開高健の話しをしていたんだろ」
「誰や、それ?」
「作家だが・・・」と彼は言った。
「全く違う。リストラは戦いではない。解雇である。クビのこと。蚕ではないよ、介護保険も関係ないよ。ましてや開高健なんて、1ミリもかすってないんだ」


すると負けん気の強い彼はこう言ったのだ。

知ってたよ。
だから、わざと話しが盛り上がるように
君たちをからかったんだよ

強引に話しをまとめてしまったのだった。
わけがわからんが、こういうのも才能と言うのだろう。

2020 9/18


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