見出し画像

書評 バベル九朔 万城目 学

画像1

バベル九朔という老朽化したビルの管理人で小説家志望の若者が
カラス女に追い詰められて、不思議空間にやってきた。そこは塔であり、彼のビルそっくりであるが、上に上に延々と続いていて、そこに入っている店舗は祖父の時代からの廃業した店ばかり。

不思議少女に、へっぽこ探偵、そして、死んだはずの祖父。不思議なカラス女。
その摩訶不思議な空間は何のために存在しているのか?。
若者の可能性を信じて、安い家賃で店舗を貸していた祖父
しかし、その実態は・・・

人の行いというのは無駄ばかりなり
それを実感した

ここでは「言葉」が意味がある。

こころに浮かべ、言葉にしたことだけが真実になる。それがバベルのルール。

こうしたいと言うと、そうなる。夢が実現する。
いつも一次審査で落選してた彼が作家デビュー
もちろん、異空間の中でだが・・・

バビルの塔というと、

かつて人間が天にも届かんばかりの塔を築き上げたのを見て、調子にのりやがってと怒った神が、それまで世にひとつしか存在しなかった言葉を奪った。

この物語の塔は、逆に「言葉」を言うと、それが真実になるのだ。
現実とは逆
現実では叶わない夢ね叶う

さて、この異空間のビルですが、廃業した店舗で埋め尽くされている。
どうも祖父は、わざと、そういう店を開かせていたようである。

そう、この空間は人の無駄。絶望を養分にしているのだ。

それって、他人にとっては
ある人の希望、成功よりも
ある人の絶望のほうが栄養というか楽しいってことなのかな。

だとしたら、とても悲しいのだが
そういう皮肉がこの物語の裏モチーフに思えた。

とにかく、複雑で何かわかりにくい万城目ワールド
おもしろいけど、ようわからん作品でした。

テレビドラマ化もされているらしい。


2021 12 22




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?