書評 バベル九朔 万城目 学
バベル九朔という老朽化したビルの管理人で小説家志望の若者が
カラス女に追い詰められて、不思議空間にやってきた。そこは塔であり、彼のビルそっくりであるが、上に上に延々と続いていて、そこに入っている店舗は祖父の時代からの廃業した店ばかり。
不思議少女に、へっぽこ探偵、そして、死んだはずの祖父。不思議なカラス女。
その摩訶不思議な空間は何のために存在しているのか?。
若者の可能性を信じて、安い家賃で店舗を貸していた祖父
しかし、その実態は・・・
人の行いというのは無駄ばかりなり
それを実感した
ここでは「言葉」が意味がある。
こころに浮かべ、言葉にしたことだけが真実になる。それがバベルのルール。
こうしたいと言うと、そうなる。夢が実現する。
いつも一次審査で落選してた彼が作家デビュー
もちろん、異空間の中でだが・・・
バビルの塔というと、
かつて人間が天にも届かんばかりの塔を築き上げたのを見て、調子にのりやがってと怒った神が、それまで世にひとつしか存在しなかった言葉を奪った。
この物語の塔は、逆に「言葉」を言うと、それが真実になるのだ。
現実とは逆
現実では叶わない夢ね叶う
さて、この異空間のビルですが、廃業した店舗で埋め尽くされている。
どうも祖父は、わざと、そういう店を開かせていたようである。
そう、この空間は人の無駄。絶望を養分にしているのだ。
それって、他人にとっては
ある人の希望、成功よりも
ある人の絶望のほうが栄養というか楽しいってことなのかな。
だとしたら、とても悲しいのだが
そういう皮肉がこの物語の裏モチーフに思えた。
とにかく、複雑で何かわかりにくい万城目ワールド
おもしろいけど、ようわからん作品でした。
テレビドラマ化もされているらしい。
2021 12 22
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