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感想 人生ってなんだ 鴻上尚史  有名劇作家の書くエッセイは奥深い

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作者が劇作家だから、目線はクリエーター目線
役者とは違う立ち位置なのが面白い。

人は、人生に迷うと自分探しをするのですが
それはどうか?と鴻上さんは言っている。
それよりも大切なことは自分を作ること
一つでも引き出しを増やすこと
漫画や映画みたいに幸運が向こうからやってくるみたいなことは、ほとんどないとのことです。

引き出しにも、箱にも何か入れてないと出てこない


幸せとは何か・・・
そのことをじっくり考える。

そして、したいと思ったことを迷わず実行する。

その時間、それが豊かな時間なのだそうです。

「言葉はいつも思いに足りない」

これも印象に残った。
人を愛するという感情一つとっても、まともに言語化できない。
それが真実なのです。

だから面白いとも言えます。


ネットで自己表現している人がいる。

これはつまり、「私にも言うことがある」ということです。
私は言うことがある存在であるということです。

人は、自分に価値があると思っている。
私は何か言うべきことがある人物だと思っている。

「何を言うか」ではなく、「何かを言っている」ということが「何者か」になった証拠なのです。

黒子のバスケの脅迫犯人を例に出して説明しているが
これ、あの元総理暗殺の愚劣な殺人鬼にも置き換えることは可能なように思えた。

あいつの言っていることは、僕には支離滅裂で
あんな根拠の薄い動機で人なんか殺すなんて発狂しているとしか思えない。

この鴻上さんの論に当てはめると何となくあの行動の裏を説明できる
変な宗教にはまった親の敵討ちというのは、たぶん、何者かになるための言い訳であり
本当は、自分を輝かしたかった。この歴史の中に爪痕を残したかった。
だから、元総理を白昼堂々と殺害したのだと思う。
有名になるため。それが動機だと思う。

だって、元総理を殺しても母親が寄付した金は戻っては来ないし
こいつの人生は終わるだけなのだから。

あいつは「何者」かになりたかったのだと思う。
自分という卑小な存在に耐えられなかった。
自分が無価値であるということを認めたくなかった。

これは自分探しをしている若者にありがちな思考だ。

やつは、元総理を殺すことで、何者かになれると思ったのだと僕は感じる。
有名になりたかったのだ。
名前を永遠に残したかったのだ。

そして、事実、そうなった。
彼を英雄だと崇める人間まで出てきている。
それはネットで無意味なことを叫んでいる無数の人々と同じで
自分は何かを言う。主張することができる人間なんだ。
その何かを主張することによって、何者かになれると信じている
もしくは勘違いしている人間なんだと思う。

事実、彼を英雄視している人が出てきたのが恐ろしい。
僕が子供の時代、オウム真理教の上祐というおっさんと結婚したいという若い女性がいて問題になったのを思い出した。
彼らにとっては、相手が犯罪者とか関係なくて、有名で目立つ存在だから、自分もそんな人と結婚し自分も何者かになろうとしていたのかと思ってしまう。

この「何者かになろう」とすること。
これは金持ちがさらに金持ちになりたいと努力するとか
ボクサーのチャンプが、さらに上の階級のチャンプになりたいとかとは別の話しだ。

努力し上にいきみんなに認められる
これは自分作りをし努力した結果である

自分とは関係なく
自分作りとか無視し
他人の褌で目立ちたいという浅ましい考えが、この殺人犯の考えだ。

なにか、よくわからんがむかつく。
そして、鴻上さんの言う「自分作りが大切だ」
この言葉の真っ当さが身に染みる。

2022 8 30



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