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2024年8月の読書日記

読んだ本の数:24
読んだページ数:9372

今月も面白い本をたくさん読みました。
その中より五冊のおすすめ本をpickupしたいと思います。

ナイルに死す〔新訳版〕 エルキュール・ポアロ (クリスティー文庫)
・・・アガサクリスティーの作品でも秀逸なる珠玉のミステリー小説でした。
読み応えあり。

本心 ・・・安楽死の問題。平野さんらしい切り口が良い。

かたばみ (角川書店単行本) ・・・ 戦争小説。今の時代の戦争小説という感じがしました。

ユービック ・・・壮大な世界観のSF作品。傑作です。

いつか月夜 (角川春樹事務所) ・・・ 彼らは夜に散歩する。その時間は宝石の時間。


以下、その他の感想


本心 (文春文庫 ひ 19-4)感想
事故死した母は、かつて自由死。つまり安楽死を望んでいた。母の本心を知るべく彼女を仮想空間で復活させ、母の親友という若い女が震災で困っていたので引き取るという話し。著者の思想的な背景とかが色濃く出ていたりするので辟易するのだが、格差社会を正面からとらえた秀作だということはわかる。ちょっとイライラさせられるのですが、こういう結末しかないのかなと感じてしまう。それにしても思考がネガティブすぎる。
読了日:08月02日 著者:平野 啓一郎

夜と跳ぶ感想
スポ魂小説でスケボーというのは珍しい。スポーツカメラマンのおっさんと東京オリンピックの金メダリストのコラボ。彼は不法に建物ですべる。おっさんは専属カメラマンとなりフィルマー、彼の滑りを撮影することになるという物語。面白かったのは次のオリンピックには出ないこと。路上ですべる跳ぶことを選択したのは、このスポーツが点数や優劣を競うものではなく、どういう場所をどのように攻略したかが大切だからだ。ストリートで始まったスポーツだからストリートにこだわる。この情熱は心地よかった。
読了日:08月03日 著者:額賀 澪

少女マクベス感想
ときどき出てくるマクベス的というかシェークスピア的な言葉が心地よかった。高校の演劇の監督をしていた生徒が死んだ。その真相を探る物語。魔女を好演した三人の女優を疑うというラインで物語は進行するが最後にびっくりするようなオチがあった。リズムが悪いのが本書の欠点だと感じた。せっかく調子よく読んでいたら、いきなり、その人物の物語がはじまる。それ魔女三人分と犯人の分。この真ん中に短編をぶち込んだような構成が本書の強みであり欠点でもある。リズムが狂って読みにくいんですよ。最後にスッと伏線回収するところは気持ち良い
読了日:08月04日 著者:降田 天

Q感想
ロク、ハチ、キュウ。血の繋がっていない姉弟。二人の姉は美形の弟のため子供の時に彼の母と浮気相手の暴力男を殺害する。なんだこれ、雰囲気はあるしパワフルだが筋が通っていない。Qのため、二人の姉は自己犠牲する。どうしてと感じる。ロクは好きでもない男と結婚し彼を巻き込むし、距離をとっていたハチですら最後は生命がけでQを守る。愛という言葉でしか表現できない状況。面白いが最後まで意味不明だつた。
読了日:08月05日 著者:呉 勝浩

復讐の泥沼 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
『レモンと殺人鬼』の著者が放つ新境地。主な登場人物全員クズ。後味が最悪でした。主人公は恋人を見捨てた医師たちに復讐しようとするのですが、その医師が目の前で銃殺され、妻は自殺し、薬師というもう一人の敵を追いかけるという展開。この薬師のほうからの視線もあり、こっちの目線では主人公の女のクズぶり異異常ぶりが後半になると加速度的に際立つ。クズとクズのbattle。というのかbattleにすらなっていない。彼女の圧勝というか、無意識に悪女であるというのが怖い。
読了日:08月07日 著者:くわがきあゆ

透明な迷宮 (新潮文庫)感想
表題作はインパクトがある。ブダペストで初対面の女と監禁されセックスを強要される、日本に帰国しその女と会ったのだが、最後に恋人は妹だった・・・というオチは谷崎のような変態世界を描きたかったのか。この作品よりも、父の遺品から拳銃が出てきた話しのほうが好みだ。まじめな教師の父が、どうして、そんなものを持っていたのか。それを船の甲板から海中に投げるあのスリリングな描写は良かった。火に欲情する男の話しは三島の金閣寺の影響を受けているように思えたが、三島のような深さも激しさもなかった。
読了日:08月08日 著者:平野 啓一郎

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 (スターツ出版文庫)感想
戦争時代にタイムリークした中学生、特攻隊の隊員に初恋という話しだが、モチーフはいいし、人間の描き方も悪くはないが、何かが圧倒的に欠落していて違和感を感じる。たぶん、時代の空気とかが反映されていないのだと思う。会話の言葉とか、その時代の空気とか、細部が何か変なんだ。戦時中がうまく描かれていない。まるで現代に少し戦争っぽい色を加えた感じしかしない。これじゃ反戦のモチーフが伝わらない。もっと細部にこだわらないとダメだ。
読了日:08月09日 著者:汐見夏衛

シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗 (ハヤカワ文庫JA)感想
『バスカヴェル家の犬』(バスカヴェルけのいぬ、The Hound of the Baskervilles)は、アーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの長編小説なのだが・・・、これは・・・リスペクトした作品ということなのかな。ホームズもワトソンも女。犯人も女というのがポイント。前回の急展開に比べるとミステリー要素が強いコメディミステリーだが出来としては普通という感想です。
読了日:08月09日 著者:高殿 円

生き方感想
さすが稲盛さんという内容ですが、かなり宗教色が強いし、現在で考えるとその考えは通用するのか疑問です。あの時代の日本の思想を背景に構築された哲学なのかなと感じますが、語られているのは正しいと思いました。ただ、少し理想的すぎるかもとも思う。
読了日:08月10日 著者:稲盛和夫

五郎治殿御始末 (新潮文庫)感想
幕末から維新のはじめにかけての激動期の武家のあり様を描いた短編集でした。浅田さんらしい人情味あふれる作品群です。椿寺までは、お店の店主と丁稚の旅の物語。その結末にグっときます。柘榴坂のかたき討ちは秀作で桜田門外の変で殺害された井伊直弼の仇討ちの話しだが、その結末に時代の変化を感じて清々しい。表題作もすぐれていて廃藩置県で武士の在所である藩が潰れ死出の旅に出る祖父と孫の運命を変える旧知の商人との交流がすばらしい。どの作品も秀作でした。
読了日:08月11日 著者:浅田 次郎

ユ-ビック (ハヤカワ文庫 SF 314)感想
中盤までは複雑で物語の輪郭を掴むのに苦心した。見えてくると、かなり面白い作品であるとわかった。超能力者の闘いと思いきや、時間退行。この世界が面白い。どんどん世界が時間退行していくのだ。それに対抗する薬がユービックだった。この物語の冒頭に、半生者が出てくる。死んでいるのに、ときどき話せる存在の者たちだ。さて、主人公たちは彼らは生きているのか、それとも死者なのか。生者なのか、半生者なのか。パットが犯人と思っていたが違った。そこからが面白かった。こんな壮大な世界観のSFはないと思った。すごく面白かった。
読了日:08月12日 著者:フィリップ・K・ディック

くたばれPTA(新潮文庫)感想
今じゃ出版できないような作品が多かった。面白い作品と意味不明な作品が極端。筒井さんの本は手に入れるのに苦心する。この本もたまたま手に入れた。最初の秘密兵器が好きだった。高校野球で女の選手というのがいい。そして、最後は今は性転換し女になり私の妻になりますというオチがすごい。
読了日:08月14日 著者:筒井 康隆

かたばみ感想
戦中、戦後を描いた物語だが、それほど戦争色が強いわけではなく、どちらかというと家族の絆を描いた物語だと思う。それにしても出ている人たちが心地よい。優しさに満ち溢れている家族なのだ。物語は全体的に暖かい雰囲気に包まれていて、安心して読み進めることができます。これまでの戦争文学のような言葉から血が噴き出しているような感じではないところに今の戦争観があるかのように思えます。
読了日:08月16日 著者:木内 昇

伝染(うつ)る「怖い話」 (宝島社文庫)感想
単なる怖い話しを集めた本ではなく、ちゃんとテーマに沿って深堀りしているのが本書の特徴。学校の怪談と226事件をくっつけるのは少し強引だが面白い。繰り返し、形を変え語られていたというのは発見だった。
読了日:08月17日 著者:

死との約束 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
これは傑作、灰色の頭脳の持ち主ポワロの推理がさく裂。犯人はまったく予測できなかった。この計算された展開はミステリーの手本というしかない。面白かった。元刑務所の看守だった年老いた資産家の婦人には、二人の息子と二人の娘がいて、彼女は威圧的で家族を支配していた。そんな彼女が殺害されるのだが・・・。
読了日:08月18日 著者:アガサ・クリスティー

モノ感想
有川さんの阪急電車に似ている印象を受けました。違うのは乗客ではなく東京モノレールで働く人たちを描いた四つの短編ということです。鉄道というと運転手と施設整備と駅員という感じだと思っていたら、いきなり総務の人の話しになり、テレビドラマに東京モノレールがという話しに、次の若い運転手の話しの奈良のおばさんのキャラが良かった。三つ目の女性駅員の話しは共感できる。最後の施設整備の中年のおっさんの恋が一番好みの話しでした。鉄道を色んな側面から描いていているのが良かった。
読了日:08月19日 著者:小野寺 史宜

ばいばい、アース全巻セット感想
世界観の造形は素晴らしいし、キャラも秀逸です。物語の躍動感もある。兎の賢者と愚者の存在や、存在を忘れた師匠。兄弟子のガフ。戦う仲間たち。魔に魅入られた剣士たち。数々の異世界生物や種族たち。作りこみが素晴らしいが、何故か途中で飽きてしまった。これは著者との相性の悪さからなのか、それともライトノベルとの相性の悪さなのか、それはわかりませんが、ちょっとしんどかった。
読了日:08月21日 著者:冲方丁

深淵のテレパス感想
モチーフは楽しかったが、前半のとっつきにくさが少し問題があり、それは物語の力というのか読ませる技術というのか何かがしっくりきてなくてダレていた気がする。後半の石村が・・・というところあたりからの早急でパワフルな展開は好み、あれがなかつたら本作は駄作だったと思う。
読了日:08月22日 著者:上條 一輝

JR上野駅公園口 (河出文庫)感想
上野公園に住むホームレスについて描いた話し。暗すぎ、ネガティブすぎ。主義主張はわからないでもないが、公園に住むというのはどうかと思う。個人的には、法律で禁止して欲しい。天皇が悪いとか表現したいのかもしれないが、それは八つ当たりのような気がしないでもない。彼らを撲滅したいのは行政です。それに、この主人公は孫と住んでたのに勝手に家出してホームレスになったので自己責任のような気がしないではない。ただ、頑張ってきた人間がこんなさみしい人生の終焉を送るのは空しいし、同じ日本人として悲しい。
読了日:08月24日 著者:柳美里

ナイルに死す〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 15)感想
あの娘は愛しすぎている。愛は盲目なりと言う言葉があるが、なるほどと思った。アガサさんの作品の中でも、この作品は優れた作品の一つだと思う。面白かった。エジプトのナイルの船の旅の中で起きた連続殺人をポアロが解決する話しだが、かなり複雑ではあるが、そのモチーフや犯人の心情、そして、ラストを考えると、ただの殺人事件ではないとわかる。だからこそ、この作品はとても楽しくて満足できる作品だったと思うのです。
読了日:08月25日 著者:アガサ・クリスティー

いつか月夜感想
散歩がモチーフなのだが、主人公の男子と、職場の中年女性と同居する中学生の女子。最初はこの三人の散歩が、元カノが加わりゲイの家主まで加わるというバラエティ豊かな展開。途中で出てくる深夜営業の猫の何とかという洋菓子店が実在するのか、それとも物の怪のしわざなのか、あの一度しか行けなかった店がやたらと気になった。みんな事情はある自分らしく自分として生きていかないといけない。寺地さんはいつも重い話しが多くしんどいのですが、本作は少し軽くて好みです。
読了日:08月26日 著者:寺地 はるな

火喰鳥を、喰う (角川ホラー文庫)感想
横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作です。ホラーとしては、さほど怖くはないのですが、SFとしてはかなり面白い。戦争中南方で死んだ大叔父。その日記が見つかった。すると次々に変なことが起こり現実が侵食される。その日記にこもった大叔父の生に対する執着が現実を変化させているのだ。次々に変化していく現実はパラレルワールドのようであり、主人公と復活した大叔父の対決みたいな構図なのかな。発想が面白いSF物語でした。
読了日:08月28日 著者:原 浩

逆ソクラテス (集英社文庫)感想
敵は、先入観。なるほどそうきたか。短編集、主人公は子供たち。いそけんという教師がやたらと出てくるが著者の先生だった人がモデルらしい。逆ワシントンの正直者は救われるという話し。気持ちはいいし、理想的だが、現実はそうでないから、この物語は心地よい。好きなのは、アンスポーツマンライクのオチだ。あれは心地よい。表題作の逆ソクラテスも好きだ。先入観により先生や生徒の一部がある生徒をバカにしていて、その印象を変えようとする物語。なんかいいんですよね、爽やかで。今までの伊坂さんとはちょっと違う物語たちでした。
読了日:08月30日 著者:伊坂 幸太郎

ヘビメタ中年! (小学館文庫 あ 19-7)感想
「ブラッククロウ」というヘビメタバンドを結成している中年のおっさんたち。彼らの情熱がビシビシ伝わってくる。ボーカルの医師、自動車会社の店長、魚屋、恋する愛犬家。最後の話しは今いちだったが、荒木さんらしい面白さがある作品でした。
読了日:08月31日 著者:荒木 源

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