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感想 うつくしが丘の不幸の家 町田 そのこ 引っ越して来た夫婦に、ここは不幸の家ですと伝える近所の人。そこに住んでいた歴代の人たちの物語。少しも不幸なんかじゃなかった。読後感最高な良作です。

これはある家の話しです。そこは近隣住民に不幸の家と呼ばれている家です。
部屋の落書きに、女の墓場なんて不穏な文字が書かれていたり、庭に不気味な琵琶の大木があったり、頻繁に人の入れ替わりがあり、直前に出た家族は一家離散。

物語は、そこに引っ越して来た夫婦から始まります。
奥さんは、そんな噂さに落胆します。

しかし、隣りのお婆さんは言います。

「あなたはしあわせがどうこう言うけれど、しあわせなんて人からもらったり人から汚されたりするものじゃないわよ。自分で作り上げたものを壊すのも汚すのも、いつだって自分にしかできないの。他人に左右されて駄目にしちゃうなんて、もったいないわ」


これは名言です。
確かにその通り、自分の幸せは自分のものです。他者なんて関係ないです。
幸せは自分からなりに行くもので、不幸はあちらからやってくるものという言葉がありますが、幸せになりたいなら、こちらからなるように仕向けなきゃいけません。

この物語は、この家に住んだ人たちの物語です。
過去に遡る形式で物語は進行していく短編の形になっています。

どの話しも暖かく読後感は最高です。
みんな幸せになるために必死で生きています。

好きな話しは、 ままごとの家 です。
夫が浮気してて、子供 姉 は家出し 子供 弟 は高校生で女の子を妊娠させます。
夫は主婦である自分を無視し、勝手に話しを決めてしまう。息子を大学に進学させ、恋人とその子の世話は祖母になる自分にまかせるというのです。
家出していた娘と二人、その相手の女の子に会いに行くと、その子は怒り狂っています。
恋人の態度には、子の父となる自覚がない、そんな人とは別れると言うのです。
父や母に丸投げして、自分は大学に進学するというのだから、彼女にしてみてはそう思うのは当然です。

恋人の主張がとてもいい。

親になるってそういうことじゃないって私は思うんです。自分の勝手で背負ったものは自分が責任もって背負って歩くべきです。




この話しの着地が心地いい。息子も夫もちゃんと心を入れ替えてくれます。

息子は彼女と結ばれ子が生まれると家を出ていき、娘は夢に向かって進んでいます。
夫婦はこじんまりした家に引っ越しましたが幸せです。
それを近所の人には、家庭に問題があり家を売却して一家離散となるわけです。


読後感のいい作品でした。
町田作品は心地よいです。


2024 2 27
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