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感想 成瀬は信じた道をいく 宮島 未奈 成瀬は天下を取りにいくの続編。面白い。三巻も出して欲しい。この破天荒な行動が楽しすぎた。

滋賀に対する愛が強かった。
本屋大賞を受賞した成瀬は天下を取りにいくの続編。

短編形式は前回と同じでした。
成瀬が主人公ではないのですが、成瀬と出会うことで主人公が変わる瞬間があり、そこが成瀬の物語の魅力です。

前作と比較すると多少はPowerダウンするのだが、これはこれで楽しいです。

好みはクレーマーの女性と、そこのバイトの成瀬の二人で万引き犯人を追い詰める話し。
クレーマーという欲求不満な存在が、店のためになる人間に変化するのが心地よい。

小学生のファンの少女との繋がりの話しは、学校の課題で成瀬を取り上げたいとのことだったが・・・、盛り上がっているのは自分だけだったということを知り葛藤を覚えるが、成瀬と関わるうちに他人は他人という感覚を受け入れる。みんな違っていいじゃんという意識が芽生える瞬間がいい。

「何かになるではなく、何をやるかが重要だということ」


成瀬らしさが良く出ていると感じた。

観光大使の話しも面白かった。
それになることが目的だった彼女が、もう一人の観光大使の成瀬と出会い自分とは何かに直面し、自分らしく生きることができるようになるのがいい。

私の自宅の電話番号だ。コンビーフはうまいと覚えてくれ。


携帯電話を持たない成瀬が、滋賀の観光大使のコンテスト会場で知り合った女の子に電話番号を知らせるシーン。
どんな番号なのか気になって仕方ないが紙面ではネタバレしないのが不満。

この番号に相方の女子が電話するシーンがある。


絶体絶命の危機に成瀬のこの話しを記憶していたのだ。
この瞬間の彼女の成瀬への気持ちは何か震えるような感覚なのだと感じた。

それにしても気になる。何番なんだ。

インパクトがあったのは京大受験の物語。
校内でテントをはり、そこで一泊するという男の子を家に連れて帰る話し。

YouTubeのネタにという発想もすごいが、それを可哀想と感じて家に泊める感覚も成瀬らしい。初対面の男子だぞ、それもユーチューブバー。うさん臭すぎる。

この成瀬らしいが、本書の魅力である。
破天荒なのに、気がつくとみんな成瀬が好きになってしまうのです。

それは読者も同じです。

2024 6 12



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