見出し画像

書評  書記バートルビー/漂流船 メルヴィル この書記はダメダメ男なのである。これで世の中を渡っていけるわけがないのだ。

画像1

書記バートルビーは、これまでに読んだことのない作品だった。
仕事が忙しくなったので、書記を一人追加募集した。
バートルビーという男で、最初はきちんと働いていた。
だが、いきなり「わたしはしない方がいいと思います」と断ってきます。
これは遊びではない。仕事なのである。なのに、それを拒絶するのだ。
働かないのである。
上司で語り手である私は、びっくりしてしまう。
仕事が忙しくて雇ったのだ。なのに「わたしはしない方がいいと思います」と何もしないのだ。
つまり、仕事をボイコットしたのだ。

書記の仕事は、書写だから退屈でやりがいがない。だけど賃金を貰っているのだから働くのは当然なのである。上司の私は困り果ててしまう。
さらに、休日に事務所に行くとバートルビーがいた。どうも住んでいるようなのだ。それも無断で゛だ。だから出て行って欲しいと頼むのだが、バートルビーは「そうしないほうがいいと思います」と言うことを聞かない。これは建物の不法侵入だ。でも、優しい私は説得しようとする。だが、バートルビーは聞く耳を持たない。当然、バートルビーは解雇だ。働かない。事務所に勝手に住む。当然、そうなるがバートルビーは、私を無視する。私の要求に答えない。
私は、事務所を引っ越しして彼から逃げるが、次に借りた人から、まだ、バートルビーが事務所に居座っていると聞かされる。私は親切にも自分の部屋に彼をしばらく引き取ろうとするがバートルビーは拒絶する。
バートルビーは、すべての物事に対してnoと言う。
警察に逮捕され、刑務所に行くが食事を食べない。
「そうしないほうがいいと思います」と拒絶し、最後は餓死してしまう。

さて、この男は何のなのか?。
どうして、死ぬまで頑なにnoを突き通したのか?。
この短編の舞台はウォール街。それは資本主義を象徴しているということなのだろうか。
拝金主義に対してのnoであるともとれないことはないが、それだと、そういう会社の募集に応募することがおかしくなってくる。この上司は理不尽な人物ではない。どちらかと言うと親切な人だった。
私が、私が、私がと読んでいるうちに、バートルビーを雇っているのは自分であるような錯覚に陥る。

何を彼は拒んでいるのか?。
単に、理解できない価値観を有している変人なのか?。
世代間ギャップなのか?。
何の説明もないままに、すべてを拒絶し死んでいく。この不気味さに首まで浸っていると、何かよくわからないザワザワした感覚を感じる。でも、これが何かはよくわからない。

もう一遍の中編「漂流船」は奴隷差別みたいな話しなのかな。
今いち、ピンとこなかった。


2020 4/24


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?