見出し画像

本の感想

・感想・
この本は、政治的理由で拘束され、拷問を経験したあるいは現在も経験中であるという女性たちの証言で構成された本。

イラン・イスラム共和国が法の正義をいかに完膚なきまでに粉砕しようとしているか、いかに女性に拷問しているかが、日本から見ていればとても考えられない非現実的なことが書かれている。

白い拷問の苦痛。囚人は独房の照明を操作されて昼夜の感覚を失い、睡眠パターンを妨げられる。感じるものは痛み、音も何もない。不衛生きわまりないトイレがある。感覚を奪われて、心が不安定になり、健康を蝕んでいく。
神経疾患、心臓発作までも引き起こす。

感覚を奪い去るこの拷問は「複雑な幻覚を引き起こし、知能レベル、認知機能を低下させ、プロパガンダを圧倒的に信じやすくさせる」恐ろしいものだ。刑務所を出てもダメージが残り、人の残酷さや全ての物事を信じられなくする。特に女性を屈服させるための拷問。

この本に出てくる13人の女性の獄中生活は想像すらできない酷い扱いが読んでいて、心が苦しくなるのと改めて私が住んでいる国「日本」がどれだけ恵まれているかを再認識させてくれるものだった。

自然光が入ってこない、新鮮な空気も吸えず、ひどい異臭を放ち他人の汚物がこびりついたトイレや精神がおかしくなっている人との共同生活。自身は勝手に罪を課せられ、やってもいないことを認めろと尋問官に脅される日々。

まともな食事もなければ体を清潔に保つお風呂にも充分に入れない。私なら三日ともたず頭の痒みとかベタベタ感に心がしんどくなるなと感じた。それでもこの本に書かれている女性たちは、毎日を乗り越えるために工夫をこらしていて驚いた。尋問官の思い通りにさせまいと絶対に折れることなのない芯を強く持ち、広くない独房の中で病気にならないよう運動をしたり(腹へんねーのかなとも思った)、今まで覚えてきた歌や中には与えられた本を1日に何百ページもやみ、とにかく時の遅い空間の中で必死に人間として生きる努力を怠らない強さに私は感銘した。

本としては似通った拷問の内容がつづくので聞き覚えのある話だなと、申し訳なく感じる部分が少しもったいないと感じた。
男性は精神的に地位や財産を失うとすぐ折れてしまう傾向があるとこの本では言っていて、女性は反面、肉体的にも精神的にも日々様々な痛みと共に生きているのでとても精神面が強くできている。一片の理由としては説得力のある本だなと感じた。

プライバシーガン無視が本当につらい、情報の遮断で嘘か誠かも分からない脅しに左右される地獄、独房に入れられた時の年齢や必ずしも健康状態がいい人ばかりでもなくタイミングも最悪なパターンが非常に多かったので独房だけが辛いでもないのが信じられなかった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?