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企業はオウンドメディアやnoteの効果をどのように測定するべきか?


1年ほど前から、IKEUCHI ORGANICでは、noteとオウンドメディア「イケウチな人たち。」を始めました。

noteは主に商品の裏側だったり、経営層はもちろん社員の声や、社内イベントのレポートなどIKEUCHI ORGANICを主体とした情報を公開しています。

そしてこちらがオウンドメディア「イケウチな人たち。」。noteとは異なり、IKEUCHI ORGANICが主体ではなく、取引先のクライアントや、お客様が主役となり、私たちが大切にしている人たちと、これからの豊かさについて考えるメディアです。

2つのメディアを1年以上運用していて、わかったことは、noteまたはオウンドメディアは間違いなく経営に広範囲に渡って好影響を及ぼします。

しかしながら、よく聞かれるのが、オウンドメディアを作るにあたり、定量的な成果を求められるので上層部を説得できないという声です。

弊社の場合は経営層二人が、SNSやWEBを通した活動にとても理解度があったので比較的スムーズに意思決定がされました。この点は正直言ってラッキーだったと思います。

ただし、限られた経営資源の中で立ち上げる必要があり、新規で予算を確保できた訳ではありません。既存のリソースを再配分して実現をさせました。

詳細はnote感謝祭でお話ししていますので、よろしければこちらをご覧ください。

今回のnoteでは、1年経ってどんな変化が生まれたのかについて書いてみたいと思います。

どの指標をゴールにすべきか?

メディアだと一番わかりやすいのは、メディアとしてのPVだと思います。ECを実施してる会社であれば、リンク経由の売上、または本サイトへの流入効果でしょうか。

しかし、そもそもメディア単体としての収益を求めることは事業会社として必要なのでしょうか?(もちろん広告事業としての役割を持たせるのであれば話は別です)

企業としてのオウンドメディアと、PV,広告を価値指標として置くWEBメディアとは役割が異なるので、同じ指標で測ってはいけません。

または、メディア経由で売上を◯◯にする、という目標を立ててしまうと、いかに商品を買ってもらうかという視点でコンテンツが作られてしまうことになり、ユーザー視点がないコンテンツが生まれてしまいます。結果として、読んだ人が何も感じないコンテンツが出来上がってしまうのです。

何よりも大切なのはユーザーにとってどんなコンテンツであれば喜んで読みたいと思っていただけるか?という視点だと思っていますし、弊社でいえばタオルを通してどんなライフスタイルを提案したいか?が根底にあります。

私たちはまずはじめに、オウンドメディアとnoteを始めるにあたり、自分たちは何のために存在しているのか?どんな世界を作っていきたいのか?を考えていきました。

弊社の場合は、「最大限の安全と最小限の環境負荷」を理念に掲げた、モノづくりをする会社です。オーガニックコットン100%の素材で作るタオルをもっと多くのお客様に、長く大切に使ってもらうこと。そして使う人が増えた結果として、環境負荷の軽減と、生産者さんの幸せに繋がることをゴールとしています。

そう考えると、メディアとしてのゴールは、メディア単体のPVやCVRでなくなることは明らかです。しかしながら、売上目標や事業への貢献をないがしろにして良いかというと、そうではありません。

目標を達成するためには、定量的にどれくらい影響が出ているか定点観測する必要があります。後述しますが弊社の場合はイケウチな人たちの場合は法人問い合わせ数や、波及効果までプランニングして毎月ウォッチするようにしています。

ただ一つだけ注意すべき点は、目標を細分化しすぎて管理するのではなく、中長期で結果を追い求める姿勢を保つこと。そしてnoteやオウンドメディアの効果は一つの事業だけの貢献ではなく会社全体に影響を及ぼす可能性があり、決してひとつの指標だけで判断してはいけないことです。

次に記載するのは、1年経ってどのような領域に影響があったのかを記載したいと思います。

オウンドメディア、noteを開始してどんな変化が生まれたか?

①採用面での効果

一番最初に目に見えた形で効果が現れたのは、採用面でした。ちょうど人を募集するタイミングだったこともあり、これまでは求人媒体出すことが当たり前になっていましたが、イケウチな人たちやnoteをみて、入社希望の方から数人から問い合わせが入りました。大手企業や人気企業からしたら、その程度かと思われるかもしれませんが、ほぼ無名の中小企業にとってはとても大きな変化です。

②店舗への集客効果

これも早いタイミングで効果として出ました。特に東京の店舗はイケウチな人たちやnoteを読んで、という方が毎週必ずと言っていいほど来店があります。2019年度はテレビやラジオなどメディア記事よりも、SNS経由の方が多くなった事は特筆すべき事と言って良いでしょう。

③法人問い合わせの増加

オウンドメディアで一番わかりやすい成果指標は、弊社の場合は、法人問い合わせです。今までは見積もりを出してください、とおそらく他のタオル会社にも見積もりを出しているだろう案件がそこそこあったのですが、それが激減しました。代わりにメディアを見ての問い合わせや、ファンの方から法人の紹介をいただくようになりました。

現在は法人売上全体を爆上げするまでは至っていませんが(問い合わせをいただいてから、商品化するまではどうしても時間がかかってしまうこともあります)ノベルティやホテル、レストラン等での引き合いは何倍にも増えています。

ちなみにKPIは法人問い合わせ数、売上は中期計画の中にどれだけ寄与するか計画を立てていて、その目標を元に経営陣にも説明しています。

④会社へのブランディングへの寄与

採用活動にも似ていますが、noteやオウンドメディアで会社の中身や世界観がきちんと伝わると、中長期的にブランディングにも貢献します。意外だったのは、旅行会社から、イケウチな人たちをみて工場見学ツアーを組みたいと問い合わせが来たり、法人問い合わせでも、noteをみてこんな会社に自社商品を使ってもらいたい等。

中にはイケウチな人たちの記事を読み、会社を辞めて、どんな会社なのか自分の眼でみてみたいと今治まで来てくれた方も。こういった問い合わせは毎月何十とある訳ではありませんが、今治本社に直接声が届きます。

それまではオウンドメディア、noteって何?という所から、ある社員の方はこれが今やっている事の効果なんですね、と一定の理解を示してくれるようになりました。webメディアはどうしても東京や大阪といった大都市圏中心になりますが、今治本社まで直接声が届くようになり、結果としてインナーブランディングにも繋がり出してきました。

⑤会社としての認知度UP

IKEUCHI ORGANICの会社としての認知度はアンケートをとると、大体2~3%程度ですが、特定のコミュニティやweb関連でイベント登壇をすると、30%くらいの方に知ってもらえるようになりました。

象徴的だったのは、昨年末に開催したnote感謝祭でしょう。通常はIKEUCHI ORGANICを知っているか質問すると、この時は100人近くの参加者の中で80〜90%の方が知っていると手を挙げてくれました。noteを開始したときは、おそらく10%もいなかったのではないでしょうか。この時は本当に驚きつつ、1年間noteやオウンドメディアを継続した結果が出てきたなあと感激しました。

⑥商品売上への寄与

noteやオウンドメディア経由での直接的な売上効果は期待していませんでしたが、「イケウチとオーガニックの20年間」という記事でオーガニック120を紹介した所、明らかに反応が変わり、月によっては通常時の2倍売れた時もありました。もともとIKEUCHI ORGANICのオーガニックコットン100%のファーストモデルでしたが、noteというプラットフォームでどんな商品かの位置づけを明確にした結果、お客様が何を買ったら良いか迷わなくなったのだと思います。

経営陣は、noteやオウンドメディアに何を期待しているのか?

正直申し上げて、オウンドメディアやnoteを始めた結果、一年で全てが劇的に変わったと言えるとカッコ良いのですが、全てがうまくいっている訳ではなく、むしろ想定した通りの結果にならなかった事の方が多いです。

社内で成功していると思っている人の方が少数かもしれませんし、これから軌道修正する点もたくさんあります。

ですが、経営陣からは一度たりとも直接的な効果を問われたことはありません。むしろ、どんどん今の動きを進めて欲しいと後押ししてくれます。この辺りはnote感謝祭で代表のイケウチにも聴講してもらい、noteをどのように捉えているか?インタビューがアーカイブに残っていますのでぜひご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=ul7IGfRhDu4

本当にこれだけオウンドメディアやnoteに舵を切ってやることができているのは、経営陣に感謝しかないのですが、それだけ経営陣の視座が圧倒的に高いからとも言えると思います。

コミュニティ運営やオウンドメディアに理解ある経営者は、数値をゴールとして求めているわけではなく、もっと先の目線で、企業として文化をどう作り、世の中に貢献していくのか?を求めているのだと感じています。以下はnote感謝祭で聴講した代表池内のコメントです。

「noteというものは、よくわからない。わからないことに色々言うつもりはない。それよりも1ユーザーとして楽しんでいる感じ。ぼくらの考えを次の世代も受け継いでやってくれているな、と見ています」

オウンドメディアやnoteの価値を理解してもらうには?

ここがオウンドメディアを運営するにあたり、一番難しい点かもしれません。数字で結果を見せるのは、中長期で考えればいい。でもメディアとしてきちんと育っているかを見せないと、経営陣からは理解されなくなる日が来ると思っています。

弊社の経営陣が甘いかというと当然ながらそうではなく、先日も、とある取り組みをストップする方針が出ました。これは私なりに考えると、事業の未来像や、お客様とどう関係を築いているか?を経営陣がイメージできなかったからでは?と考えています。

では、どのようにしたら経営陣がオウンドメディアやnoteを理解するようになるか?

それはお客様の喜んだ顔を直接見る場を作ったり、お客様の層が広がっている事を自分自身で感じてもらうしかありません。

例えば、昨年末に開催されたnote感謝祭では、代表の池内に、今までのIKEUCHI ORGANICとはまた別のファンが生まれてきていますと伝えて、イベントにも参加してもらいました(経営陣やキーマンに対して、イベントに参加してくださいと言って来てくれる関係を日頃から築けているか?も重要なポイントです。)

イベント当日に、参加者の90%がIKEUCHI ORGANICを知っていて、30%ほどの方がタオルを持っていると答えるのを見ると、普段からたくさん講演をして肌感覚で自社の知名度を理解している経営陣は驚くわけです。

優れた経営者ほど、顧客志向が強く、現場の声を直接聴くことを重視しています(前職のAmazonでも顧客中心主義が本当に徹底している会社ですが、ジェフ・ベゾスは直接自分のメールアドレスを公開しています。実際に日本でも同様に公開しており、本当にTOPは顧客からのメールを読んでいます)

代表の池内ももちろん、お客様からの問い合わせはすべて読んでいます。一番は代表の池内も、社長の阿部もお客様と直接コミュニケーションをすることが本当に好きなのです。もしタオルを使ってよかった点、気になった点や洗濯についてわからない点があれば、TwitterやFacebookアカウントでぜひ問い合わせをされてみてください。喜んで回答するはずです。

オウンドメディアやnoteを運営するに当たり経営陣の説得が必要な場合は、そもそも説得するのに時間をかけるのではなく、お客様と経営陣やキーマンがどれだけ普段からお客様と接する場を作れているかがポイントになるのかもしれません。

最後に オウンドメディアの想定外の効果

結局のところ、オウンドメディアやnoteをどのような指標で測定すべきか?は答えは一つではないですし、このnoteを読んでも目標がふわっとしているなあと思われたのかもしれません。

ですが、PVはもちろん、売上は最終的なゴールではなく、過程でしかありません。ブランドの哲学やミッションを伝えていく事、お客様との関係が繋がる事を通してお客様の生活を豊かにすることが根底の想いとしてあります。

最後に、会社の直接的な効果とはあまり関係なくなってしまいますが、オウンドメディア「イケウチな人たち。」では、もう1つ想定外の効果がありました。

メディアに出てくれた方々と、関係がより強固になりそこからまた新たな関係性が生まれてお客様同士が繋がったり、法人でも様々な分野の面白い人たちとつながるようになったのです。社員と同じくらい、IKEUCHI ORGANICのプロダクトに愛があり、社外広報として自ら進んで発信をしてくれるのです。

この辺りの詳細については、2月26日の「イケウチな人たち。」1周年記念イベントで、登壇者の皆様にお話してもらおうと思います。タオルのことを料理と同じくらい熱量を込める代々木上原のフレンチsioの鳥羽シェフ、タオルのことを考えてミーレの洗濯機まで購入する美容師オーナー中村さん、470円の銭湯で4,600円のタオルを販売する銭湯・小杉湯の平松さん、塩谷さん。

大分席も埋まってきましたが、まだ受け付けておりますのでご興味ある方はぜひご参加ください。

note感謝祭では、オウンドメディアやnoteのことを最所あさみさんがモデレーターで、私と編集部の鳥井さん、井手さんと一緒に登壇したのですが、最所さんのコメントが、何よりもモノづくりの会社として、オウンドメディアやnoteの意義を語ってくれているような気がしていますので最後に紹介させていただきます。

ものづくりの会社として一番理想的なのは作り手である本人たちがそのよさや商品への愛を発信してそれが受け手の心を打つことであり、オウンドメディアはそこに至るまでのサポートでしかないのだ、と私は理解しました。

こちらも参考までに。

※3/10 追記:思いのほか、多くの反響をいただき驚いております。また、個別に質問をいただく機会も出てきたのですが、多くの方が上司、経営層にオウンドメディアの意義をどう説得すれば良いのか?と言うものでした。以下に参考になりそうなリンク・書籍を紹介します。

2.3の書籍はオウンドメディアとは別の切り口ですが、いずれもファンとどのような関係を築くか、目に見えづらい指標をどのように捉えて推進していくか書かれているので、オウンドメディアとも共通する話です。きっと参考になると思います。

1.web制作会社のベイジ さんのオウンドメディアです。

2.佐藤尚之さん「ファンベース」

なぜオウンドメディアを作ろうと思ったか?は、僕自身がさとなおさんのファンベースを学んだからに他なりません。ファンにどう喜んでもらうか?を考えたときに行き着いたのがオウンドメディアでした。オウンドメディアが会社から理解されない、と言う方はおそらく「ファン」とどのように向き合うか?という共通認識が抜けている可能性があるのでは?と思っています。


3.小島 英揮さん「コミュニティマーケティング」

こちらはオウンドメディアではなく、コミュニティマーケティングの視点ですが、可視化しづらい指標、成果に対してどのように向き合い、ファンを増やしていったか?についてかなり具体的に書かれています。この本を読むと、目に見える成果、指標を追うことがいかに危険か、ご理解いただけると思います。そして前職のアマゾンはKPI至上主義といっても過言ではないくらい数値に厳しい会社だったので、余計に凄さがわかります。アマゾンでできて、他の大企業でできない事はないはずです…






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