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「あら、気が合うわね」といわれた日には

足音が近づいている。
電話を切ったタイミングで足音の主は
私を追い越した。
小雨が降っている。
大きく開いた何処かで見たことのある柄。
“あら、私と同じ傘だわ”

手頃な価格帯でわりと出回っている会社の
製品なので以前も持っている人を見かけた
ことはある。
しかしこういったかたちは初めてだった。
思えば彼女はずっと同じ傘をさした
私の後ろ姿を見ながらもくもくと歩いて
きたのか。
何も思わなかったかもしれないが
ちょっと嫌な気分になった可能性もある。

*

同じものを持っている人を見た時、
「おそろいね」なんてまず思わない。
第一声はきまって「かぶった!」だ。
そしてすぐに気まずくなる。

何故人と同じものを選択した際に
気まずくなるのか。

1.真似をされたと思われる気がするから
2.人のものを奪ったような気持ちになるから

真似をしたわけでも、奪ったわけでもない。
偶然同じものを持った状態になってしまった
だけなのに、不思議で仕方ない。

中学生の頃に「スーパーラヴァーズ」という
ブランドが大流行した。
おしゃれ女子として一目おかれていた彼女は
自分と色違いのバッグを持ってきた子を見て、
「あいつまじムカつく!もうこのバッグ
二度と使わない」といった内容の発言をして
いたことを思い出す。
単に色違いのバッグを持ってきた子が好き
ではなかったかもしれないが、その時は
自分がオリジナルではなくなったことも
気に入らなかったのかもしれない。


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