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『きみの町で』を読んで

国語の教科書に『カレーライス』という
お話があると子どもが言ってきた。
授業でやる前からうちで音読をして
こんなことは初めてだった。
教科書には「重松清 作」とある。
あ、あの有名な。でも私はこの人の作品は
読んだことがない。というか、私と子ども
二人とも活字を読むのが得意ではない。

教科書の中にはこの作品が収録された
短編集の紹介があった。
子どもはその本を学校の図書館で
借りてきた。
夏休みの宿題の中にはプリント類の他に
理科実験と“本を3冊読むこと”がある。

子どもはこの『はじめての文学』と
私が選んだ『きまぐれロボット』を読み
3冊目に『きみの町で』を選んだ。
これはお父さんと一緒に市立図書館で
借りてきた。

私も最初の二作は読んだ。
今ちょうど『きみの町で』を読み終わった
ところだ。

時折思うことがある。
“めんどくさいこと、多いな”、って。
社会のルールは知らないだけで
たくさんある。
破ると罰則や罰金が課せられない、
その場その場のルールもたくさんある。
私が住む地域では声が大きくてうるさいと
「元気が良くて何よりですね」と言う
慣習がある。

自由でいたいならば頑張らなくてはならない。
何も頑張らずに何も獲得せずに生きてきたら
わりと不自由で、でも周りの人に助けられて
何とか生きている部分がとても大きい。

偶然、私が読んだ重松清の作品にはこの
日常の「何か、ちょっと」がたくさん
出てくる。
と同時に命のきらめきのようなものも
描かれている。

とても悲しい出来事も書かれていた。
とても自然に、直接胸にささって
びっくりした。
無駄のない言葉なのに鮮やかに
心理も情景も語られている。
彼の紡ぐ言葉は自然農法で栽培された
食物のように、力強く、それでいて
なじみが良くて、心に残る。

今も心が動いて涙目のままだ。
子どもがこの本を選んできたとは。
趣味が同じなのは遺伝かな、と思う。


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