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『服を着るならこんなふうに』にみる短歌の学び

私の好きな漫画のひとつに、縞野やえ(企画協力:MB)の『服を着るならこんなふうに』がある。

この漫画は、おしゃれを忌避していた主人公の男性・佐藤祐介が、おしゃれに詳しい妹・佐藤環や友人・樋口リカらのアドバイスを取り入れて、ファッションの楽しさを知っていく、というもの。

漫画の中に出てくるアイテムは実在のもので、「ハイブランドならばなんでも良い」みたいな安易な話は決してせず、おしゃれ初心者にもわかりやすくファッションのリテラシーを解いていく。面白い上に実用性の高い漫画である。

さて、この漫画(現在は第12巻まで出ている)、第8巻まで来ると主人公・佐藤祐介もファッションのリテラシーをかなり身につけている(一気におしゃれになるわけではなく、持続的な試行錯誤を繰り返す中で身についていく、というのもリアリティがあって良い)。そんな第8巻に収録されている第63話と第64話を読んで思ったことがある。

これ、短歌にも通じる話だ!

それこそ、木下龍也の『天才による凡人のための短歌教室』に書かれている教えと、ほぼ同じような話が出てくる。

「実際には正解のアイテムなんて無いんですよ」

縞野やえ・MB『服を着るならこんなふうに』第8巻 p.132

「自分の好みが未完成の時は何度も練習しないとコーディネイトに慣れないんですよ」

縞野やえ・MB『服を着るならこんなふうに』第8巻 p.136

「トレンドや流行を服のリテラシーとして踏まえた上で更にそれをどう表現するかその人のファッションに個性が宿るんです」

縞野やえ・MB『服を着るならこんなふうに』第8巻 p.139

「個性は探すというよりたくさんの中から浮き上がってくるものかもしれませんね」

縞野やえ・MB『服を着るならこんなふうに』第8巻 p.139

「あっ でも自由とデタラメは違うものなんです!」
「リテラシーの無い状態は自由ではなく無法地帯 秩序を踏まえた上に自由があるんです」

縞野やえ・MB『服を着るならこんなふうに』第8巻 p.140

「オシャレはミックス」

縞野やえ・MB『服を着るならこんなふうに』第8巻 p.141

どうだろうか。用語こそファッションに関する言葉は使われているが、ここで話されていることの本質は、短歌を学んでいく中で、木下龍也が教えてくれたものと同じだと言っていい。

この漫画の著者や企画協力者と歌人の木下龍也の思考が似ている、というよりも、クリエイティビティの基本を押さえると、同じところに行き着く、ということなのかもしれない。

私もおしゃれには疎い方なので、この漫画を結構参考にしている。オススメの漫画です。



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