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2021年よく聴いた音楽【年間ベストアルバム】

 今回は、年間ベストアルバムということで、純粋に2021年よく聴いた作品を20枚、振り返りながら紹介していきたいと思います。

20.Teenage Fanclub『Endless Arcade』

 メンバーチェンジを経て、10作目をリリースしたグラスゴーのベテラン。冒頭の"Home"は、往年の名曲"The Concept"を彷彿とするような、一曲目からいきなりアウトロ長めな、穏やかで美メロの名曲。"I'm More Inclined"も、バンド史上でも屈指の名曲ではないかと思います。彼らの音楽を、無条件で生涯聴き続けるという方は多いはず。メンバーは変わっても、その音楽性は不変。当然、ファンからの信頼も揺らぐことはありません。

19.The Antlers『Green To Gold』

 NYブルックリンを拠点に活動するインディーロックバンドの6作目。本人達が「日曜日の朝の音楽を作ろうと思った」と語っている通り、穏やかで多幸感に満ちた楽曲たちが揃っています。シンプルなアレンジと、眩しいほどに光り輝くような音像。朝のゆっくりとした時間のお供として優秀な一枚です。

18.Tendre『Imagine』

 マルチプレイヤー河原太朗のソロプロジェクト、Tendreのメジャーデビュー作。グルーヴィでファンキーな、Tendre節炸裂の必殺ナンバー"Paradise"で従来の魅力を示しつつ、穏やかで優しい音像が新境地な"Maxwell"で新たな一面も開拓しています。多様なジャンルの音楽を吸収し、独自のスタイルへと落とし込む技術は流石の一言。相変わらずの洗練具合です。

17.Last Days Of April『Even the Good Days Are Bad』

 前作・前々作では、瑞々しいグッドメロディがすっかり翳ってしまっていた北欧のEMOレジェンドですが、本作で復活を印象づけました。やはり全盛期ほどの瑞々しさ、アレンジの奥深さとまではいかないものの、普遍的なグッドメロディという最大の持ち味は戻ってきており、良い意味で円熟味の増した佳作といったところでしょうか。EMOファンとしては是非ともチョイスしておきたい一枚です。

16.Julien Baker『Little Oblibion』

 USインディーを代表する女性SSW、ジュリアン・ベイカーによる通算3作目。冒頭の楽曲"Hardline"から、壮大なスケール感、凄まじく大きな存在感を放っています。圧倒的な歌唱力・表現力はもはや唯一無二。ギター、ピアノ、ベース、ドラムの他、シンセ、バンジョー、マンドリンなど、ありとあらゆる楽器をほぼ一人で演奏したというマルチプレイヤーっぷりも、作品全体に奥行きと味わい深さを与えてくれています。


15.Hovvdy『True Love』

 テキサスのインディーポップデュオ、Hovvdyの4作目。デビュー時には、まどろむようなドリームポップを展開していた彼らですが、リリースを重ねる度に、輪郭のはっきりとしたフォーキーなサウンドへとシフトしてきています。光と影の淡いコントラストを思わせる、ノスタルジックな雰囲気が印象的。これからも長く愛聴するであろう、センチメンタルなメロディと美しいハーモニー。

14.Kings Of Convenience『Peace Or Love』

 ノルウェーのアコースティックポップデュオによる、12年ぶりの通算4作目。美しいギターの音色と美しいハーモニー。穏やかで何気ないメロディのように思えて、実は掴みどころが無くて奥深い、よく練られたメロディ。捻りの効いた展開でリスナーを飽きさせません。週末の午後のティータイムに聴きたい一枚。

13.Weezer『OK Human』

 言わずと知れた大人気バンド、Weezerの13作目。今年は2枚のフルアルバムをリリース。もう1枚の「Van Weezer」が、彼らのルーツであるヘヴィメタル、ハードロックをWeezer流に解釈したギターリフ満載の内容なのに対し、本作ではコンピューターやエレキギターを一切使わず、ピアノやオーケストラを中心に構成するという、ある意味でコンセプチュアルなアルバム。エレキギターが無くても、ソングライティングの良さだけで十分勝負できるということを証明した一枚。オーケストラがしっかりハマった#7 Screensが特にお気に入りです。

12.Måneskin 『Teatro d'lra - Vol. Ⅰ』

 イタリア発、今年全世界的なブレイクを果たした大型ロックバンドの2作目。The White StripesやArctic Monkeysら、UKガレージロックからの影響を感じさせつつ、Queenを彷彿とさせるような圧倒的スケール感と歌唱力も持ち合わせています。ド派手なビジュアルもあってスター性抜群な彼ら。小粒化が否めないロックシーンにおいて、こういった存在の登場は本当に貴重ですね。是非このまま絶対的な存在へと駆け上がっていってほしいと思います。

11.Official髭男dism『Editorial』

 たまには、耳馴染みのいい日本語の曲をカジュアルに聴きたい、という時に今年よく活躍したのが髭男。決して侮っていたわけではありませんが、初めてしっかり聴いて正直驚きました。複雑で高度なメロディに対して、よくもこんな耳にスッと入ってくる最適な歌詞を当てはめられるなと。それでいてよく練られた面白い歌詞だとも感じました。それを最も象徴してるのが"ペンディングマシーン"という曲。また、人並み外れた歌唱力で、「ここでこっちの方向に行けるんだ」と、良い意味で予想を裏切ってくれるメロディも魅力です。

10.Courtney Barnett『Things Take Time, Take Time』

 オーストラリアの女性SSWによる3作目。日常の何気ない風景を切り取ったような終始リラックスした雰囲気で、捻りの効いたグッドメロディが心地いい。特にアルバム後半にかけてポップでキャッチーになっていく展開がgood。特有の気怠くクールな歌声と、オルタナティブロックテイストな音像で、他の有象無象の女性SSWとは一線を画してきた彼女。週末に肩の力を抜いて楽しみたい一枚。

9.Andy Shauf『Wilds』

 カナダのSSW、アンディ・シャウフによる7作目。物語仕立ての前作『The Neon Skyline』のアナザーストーリー的な存在として位置づけられる本作は、サウンド面ではより一層ミニマルでフォーキーな内容に。全9曲27分と、実にコンパクトな内容。何と言っても最大の魅力は彼特有の字余りかつ美しいメロディラインかと。そこは本作でも健在っぷりを示しています。個人的には、Elliott Smithを敬愛する全ての音楽ファンの方へ是非ともオススメしたい、現代最高のシンガーソングライターの一人だと思ってます。

8.DYGL『A Daze In A Haze』

 日本の4人組インディーロックバンド、DYGLの3作目。UKのガレージロックやポストパンクといった、彼らのアイデンティティとも言える音楽にとらわれず、新たな音楽性を追求した意欲作。これまで彼らが音楽を制作する上では参照してこなかったという、USのポップパンクからポップスまで、幅広いジャンルを参照したという本作は、ソングライティング面での進化が特に目覚ましいです。とにかくメロディラインの優れた楽曲が揃っています。何も考えずに拳を突き上げられるようなアンセム的存在、"Half Of Me"は間違いなく本作のハイライト。

7.Men I Trust『Untourable Album』

 カナダの3人組ドリームポップバンドによる4作目。全24曲71分の超大作となった前作「Oncle Jazz」と比較すると、本作は全13曲37分と、コンパクトな方向へとシフトしました。ただし、ドリーミーで浮遊感のある独自のサウンドは相変わらずですし、当然の如く名曲を連発しているという点においては何ら変わりありません。女性ボーカルEmmaによる気怠げなウィスパーボイスと、印象的なベースフレーズが魅力の彼ら。曇り空や雨の日に合いそうな、ややダークな世界観が作品全体を支配した一枚。

6.Another Michael『New Music and Big Pop』

 アメリカはフィラデルフィアの3ピースバンドによる傑作1stアルバム。Whitneyを思わせる上質なインディーフォーク/インディーポップを軸に、ほんのりEMOの要素を感じさせるあたりはPinegroveに通ずるところがあると思います。卓越したソングライティングと、ボーカルMichael Dohertyによる魅惑のファルセットボイスが最大の武器。フックの効いたアレンジも絶妙。特に#5 Big Popが本当に素晴らしい。個人的には2021年のインディーロックを代表する屈指の名曲です。

5.Holy Hive『Holy Hive』

 NYブルックリンのインディーロックバンドによる2作目。デビュー作となる前作で、フォークとソウルの要素を融合しつつ、AOR〜シティポップのテイストも取り入れた新たな音楽性を確立した彼ら。本作では、より陶酔感の強い、エキゾチックでサイケなテイストを全面に押し出しています。極上のファルセットボイスと、輪郭のはっきりとしたドラム、管弦楽器によるノスタルジック感は健在。#2 Story Of My Lifeは屈指のキラーチューンですね。特にお気に入りの一曲です。

4.The Killers『Pressure Machine』

 本作で、デビュー作から7作連続でのUKチャート1位を記録したアメリカのロックバンド、The Killers。従来の主役であったシンセサウンドは本作では脇役に回り、代わりにアコースティックギターが前面に出ています。ブルースハープを用いるなど、哀愁を帯びたカントリー風の趣もありますが、そこはバランス良くシンセを挿入しつつ、ドラムが力強く支えることで、ロックバンドとしての存在感をしっかりと放っています。ブランドン・フラワーズの伸びやかな歌声は本当に魅力ですね。

3.カネコアヤノ『よすが』

 今や日本インディーシーンの中枢的存在にまでなったSSW、カネコアヤノによる通算5枚目のフルアルバム。力強くも繊細な歌声に心を揺さぶられます。低音とファルセットのコントラストはあまりにも見事。オルタナティブな要素を感じさせるバンドアレンジですが、あくまでも主役は歌。そこを邪魔することは決してありません。安易な表現にはなりますが、まさしく魂に響く歌だと思います。普段は気に留めることなく過ぎていくような日常が、何となく少しだけ特別に見える。そんな瞬間を与えてくれる作品です。

2.Iceage『Seek Shelter』

 デンマークのカリスマ的ロックバンドによる通算5作目。今年はじめて知ったバンドですが、カッコいいですね。独特の存在感があります。これだけのスケール感を持ち、しっかりロックバンドしつつ、独創性の高さも感じさせるという点ではかなり貴重な存在なのでは無いかと感じました。ハードコア、ポストパンクからの影響を、独自の音楽性に落とし込むスタイルで、圧倒的な存在感を獲得してきたという彼ら。それぞれの個性が際立った全9曲となっており、一枚の作品としての独創性も非常に高いです。

1.Clairo『Sling』

 アメリカ・アトランタの女性SSW、Clairoによる2作目。純粋に、私が今年一番よく聴いた作品です。前作までの、シンセポップを軸とした色彩豊かな音像からは打って変わって、フォーキーで、ミニマルで、温もりを感じられるモノトーンな音像へと変貌を遂げた本作。主役は歌とハーモニー。ピアノとアコギを中心に、管楽器は添える程度。それでここまで聴かせられるのは、メロディの良さがあってこそ。どこを切り取っても秀逸なソングライティングが光る名盤です。


以上の20枚になります。
2022年もたくさん素敵な作品に巡り会えますように。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。

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