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影に隠れがちなEMO名盤を紹介します その2

 今回は、久々にEMO関連の記事を書いていきたいと思います。

 以前投稿したこちらの記事↓の第2弾です。

 EMOの入り口付近では出会わない、中級者向けなアルバムをセレクトしています。

 今回も、90年代から00年代以降のアルバムまで、幅広く紹介していきたいと思います。

 それでは早速いきます。

①Christie Front Drive
"Stereo" (1997年)

 一般的な知名度は低いですが、90's EMOのファンからは根強い人気を誇るバンド。彼らが残したフルアルバムは本作たった1枚だけですがそのインパクトは絶大です。系統としてはMineralやPenfoldに近いかと。彼らとの共通点は、"静"と"動"のコントラストや、ここぞの場面で内に秘めた感情を爆発させる楽曲展開、繊細なアルペジオなど。ただ一つ明確な違いを挙げるとするならば、MineralやPenfoldを"影"とした場合、Christie Front Driveは"光"の音楽と呼びたい。歪んだギターの音色からは、そんな眩ゆいばかりの煌めきを連想させられます。アルバムの構成としても、"Interlude"と名付けられた4つの短いインスト曲が散りばめられていることがアクセントとなっていて、全体を通しで聴いても飽きないメリハリの効いた仕上がりとなっています。

お気に入りトラック:Radio



②Far
"Water & Solutions" (1998年)

 当時シーンを牽引していた中心人物の一人、ジョナー・マトランガ擁するハードコアパンク/EMOバンド、Far。感情が迸るようなジョナーの歌唱、ヘビィかつラウドなバンド演奏、どこを切り取っても、その気性は荒々しくて激しいです。ただ、ギターの音色は荒々しくもどこか瑞々しくて、メロディラインについても荒削りな中に時折顔を覗かせるキャッチーさにハッとさせられる瞬間があります。この荒々しさと繊細さの同居にこそ、私は"エモ"を感じます。ジョナーは98年にFarを解散した後も、自身のソロ活動の他、Texas Is The Reasonのメンバーと共に新バンドNew End Originalを立ち上げるなど、精力的な活動を続け、2019年にはソロとして来日公演も行っています。ソロライブでも演奏されることの多い本作。特に#4"Mother Mary"は代表曲として挙げられることも多い90'sEMOの名曲です。

お気に入りトラック:Wear It So Well



③Sense Field
"Tonight and Forever" (2001年)

 このバンドの代表作と言えば、一般的には本作の前作となる3rdアルバム"Building"を挙げる声が多いと思うのですが、個人的にはこの4thを推したいんですよね。EMOの歴史において2001年という年は、Weezerの"Green Album"やJEWの"Bleed American"など、後のマイケミやFOBなどのEMOポップ(ポップ・パンク)へと繋がっていく契機となったアルバムが多くリリースされた年なんですけど、実は本作もその一つと言える隠れた重要作なんじゃないかと。元々ハードコアパンクをやっていたバンドがここまでメロディックでキャッチーな方向に振り切れた例はなかなか無いと思いますし、そのキャリアがあってこその泥臭さみたいなものが根底にある気がして、かなり好きなアルバムです。ジョン・バンチによる歌唱の表現力も本作で格段に上がっていると感じます。

お気に入りトラック:Weight of the World



④Umbrellas
"Illuminare" (2006年)

 このバンドは本当に知名度低いと思います。「影に隠れがち」どころか、影の中でもだいぶ隅っこの方にいるバンドです。音楽性的には直球なEMOというよりも、EMO要素も包括したインディーロックといったところですが、The Militia Groupという、多くのEMOバンドを輩出したレーベルに所属していたこともあり、今回取り上げることにしました。非常にメロウでドリーミーなサウンドと、決してキャッチーではないものの癖になるメロディライン、そして時折隙を突くかのように顔を出すポップセンス。わずか2枚のアルバムと1枚のEPしかリリースしないまま音沙汰が無くなってしまった彼らですが、この2ndアルバムに収録されている"Dignified Exit Society"という曲が特に素晴らしいんです。掴みどころの無い独特の歌詞世界。The Lyndsay Diariesというバンドでもボーカルを務めるScott Windsorによる伸びやかでジェンダーレスな歌声。雨の日や夜の時間帯、一人で過ごす時間に合いそうな癒しのアルバム。

お気に入りトラック:Dignified Exit Society



⑤We Shot The Moon
"Fear and Love" (2007年)

 00年代初頭、ピアノエモブームを巻き起こした仕掛人といえば、Something CorporateやJack's Manequinのフロントマン、Andrew McMahonが知られていますが、もう一人の立役者が、Waking Ashlandのフロントマン、Jonathan Jonesです。そのジョナサンが2007年にWaking Ashlandを解散し新たに立ち上げたのがWe Shot The Moonというバンドなのです。前置きが長くなりましたが、そのデビュー作である本作はピアノエモ、ビューティフルエモの傑作と呼べる仕上がりで、気を衒う事のない、ストレートでピュアなグッドメロディをこれでもかと言わんばかりに詰め込んだ作品と言えるでしょう。全曲素晴らしいですが、特に推したいのは#3"Sway Your Head"。難しいことを考えずにシンプルにグッドメロディを楽しみたいという気分の時には最適な、あまりにもピュア過ぎる一枚。

お気に入りトラック:Sway Your Head



⑥The Coastguards
"I Refuse" (2015年)

 元Oceanlaneのフロントマン武居創とドラマーの嶌田政司を中心に、千葉県柏市にて2011年に結成されたハードコアパンク/EMOバンド、The Coastguards。ドラマーの嶌田が作曲を手掛けたハードかつタイトな楽曲と、ボーカルの武居による流麗なメロディラインと美しい歌声が絶妙な融合を見せ、唯一無二のスタイルが確立されています。武居の存在が無ければ、EMO要素が色濃く反映されることなく、ゴリゴリなハードコアパンクとなっていたでしょう。そこに武居のメロディと声が加わることで独自の個性を獲得することに成功しています。かなり知名度低いバンドかと思いますが、これ聴いたら癖になるっていう人絶対多いと思うんですよね。アルバムはこの1枚しか出していないのですが、是非とも多くのEMOファンの方に聴いてもらいたいバンドです。

お気に入りトラック:All I Want



 いかがだったでしょうか。今回は結構マニアックなところも突いてみました。EMOの世界を広げていくきっかけとなれば幸いです。

 最後まで読んで頂きありがとうございました。

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